相続税 2020.11.04
弁護士が認知症?遺言書はどこに保管すべき?
相続対策で遺言書を作成する人が数年前に比べると増えているように感じます。
実際、書店やネットでも遺言書作成ツールを購入することも可能です。
ただ、遺言書は作成するだけでは適切な相続対策にならないことをご存じでしょうか。
そこで本記事では、遺言書を作成していたのにトラブルが発生してしまった事例についてご紹介したいと思います。
遺言書作成よりも大切なこと
遺言書は作成することにも大きな意味がありますが、相続の実務では反対に遺言書があるせいでトラブルが発生してしまうケースも少なくありません。
というのも、遺言書には一定の限界があるからです。
例えば「すべての遺産を長男に相続させる」といった遺言書を残したとしても、次男には遺留分という民法で保護されている最低限の取り分があるため、遺留分権を次男が行使すれば争いになってしまうのです。
他にも、遺言書に日付がない、直筆ではないなど、様々な問題から遺言書が本来の役割を果たせていないケースはよくあります。
ルールを知らないまま、自分の思うまま遺言書を作成すると、かえってトラブルを生むことをまずは理解することが大切です。
遺言書は作って終わりじゃない
「私は弁護士に相談して作ったから大丈夫」そう思った方、遺言書はどこに保管されていますか?
例えば弁護士に遺言書の作成を相談した場合、遺言書を弁護士にそのまま保管してもらったという人は多いのではないでしょうか。自宅に保管していると、紛失や隠ぺい、改ざんなどのリスクを負いますが、弁護士に預かってもらえば安心、と考える人が多いからです。
公正証書遺言という公証役場で作成する遺言書であれば原本は役場で保管されますが、自筆証書遺言については弁護士に預託して、将来の遺言執行(遺言書の内容を実行すること)まで含めて依頼をするケースがあります。
確かに弁護士に預ければ安心ですが、100%ではないことを思い知らされた事例があります。
弁護士も人である
法律事務所にもいろいろな法律事務所がありますが、弁護士1人でやっている個人事務所の場合、自分が年を取るとともに弁護士も年をとります。当然のことですが、意外とこのことを考えていない人が多いのです。
例えば、自分より年上の弁護士に遺言書を預けた場合、自分よりも弁護士が先に亡くなる可能性だって十分にあります。
弁護士法人のように大きな事務所であれば、万が一、弁護士が亡くなったとしても他の弁護士が引き継いでくれますが、個人事務所の場合はあと継ぎがいなければそのまま廃業ということも考えられるのです。
弁護士が認知症に
実際に聞いた事例ですが、相続発生後相続人が弁護士に問い合わせたところ、なんと弁護士自身が認知症にかかってしまっており、すでに弁護士業を廃業していたというケースがあります。
保管を依頼したはずの遺言書も、弁護士の家族などに探してもらったらしいのですが結局出てこなかったそうです。
このように、いくら弁護士とはいえ人間なので死亡リスクや認知症リスクというものは必ずあります。
法務局の保管制度
これまで公正証書遺言以外の遺言書は、弁護士に預ける以外安全に保管する方法が限られていました。そんな中、今年の法改正で自筆証書遺言についても、一定の手続きをとることで、法務局で保管してもらえる制度がスタートしました。
公正証書遺言よりも安い手数料で安全に保管してもらえるため、これから遺言書を作成しようと考えている方はぜひ利用してみてはいかがでしょうか。
自分で保管する際の注意点
遺言書を自分の手元で保管したいという方もいるかと思います。
その場合は、次の点について注意しましょう。
・遺言書の保管場所を家族に伝えておく
・遺言書は封筒に入れて封印をする
・遺言書は相続発生後、家庭裁判所で検認の手続きが必要と伝える
※公正証書遺言及び自筆証書遺言の保管制度を利用した場合、検認は不要です。
遺言書の保管場所を家族に伝えると、隠蔽や改ざんの可能性もありますが、場所を細かく特定しないようにしたり、銀行の貸金庫など本人が存命のうちは発見できないような状態にしたりすれば問題ありません。
何も伝えていないと、死後遺言書が発見されないというリスクがありますので注意しましょう。
まとめ
遺言書は遺産相続対策としてとても有効ですが、そこに書く内容や出来上がった遺言書の保管方法について慎重に考えなければなりません。
ただ好き勝手に遺言書を書いただけでは、かえって争いを誘発することになりますので十分注意しましょう。
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