相続税 2020.12.04
同時に死亡。交通事故の相続はどうなる?
遺産を相続する相続人は、相続が発生した際に優先順位が決まっています。
ところが、交通事故などの災難によって家族がほぼ同時に死亡したような場合は、取り扱いがちょっと変わってくることをご存じでしょうか。
そこで今回は、こういったケースにおける相続の順番や死亡の順番がはっきりしない場合の取り扱いについて解説したいと思います。
相続の順番とは?
そもそも相続が発生した際の相続順位は、次のように決まります。
・配偶者相続人
・血族相続人
第一順位:子
第二順位:直系尊属(父母、祖父母)
第三順位:兄弟姉妹
例えば、サザエさんに例えた場合、サザエが死亡した場合の法定相続人は夫のマスオが配偶者相続人となり、必ず相続人になります。血族相続人は第一順位の子であるタラオです。
このように相続には死亡した人との関係において、順番が決まっているのです。
死亡した順番によって大きく変わってくる
ここで重要なことは、同じ家庭でも死亡した順番によって遺産がたどる経路が変わってくるということです。
仮に、先ほどのケースでサザエが死亡してその後にタラオが死亡した場合、タラオに子がいなかったと仮定すると父親のマスオが第二順位として相続人になります。実質的にはサザエの個人資産がタラオを経由して完全にフグタ家のものになるのです。(もともとサザエはイソノ家ではなくフグタ家ですが)
一方、最初にマスオが死亡した場合はマスオの財産はサザエとタラオのものになります。その後、タラオ、サザエの順番で相続が発生したと仮定すると、サザエの相続で相続人になるのは生きていれば波平、フネの直系尊属、亡くなっていたとすると第三順位のカツオ、ワカメです。
つまり、フグタ家のマスオの財産が、タラオとサザエを経由して完全にイソノ家の遺産に取り込まれることになります。
遺産がたどる経路が違うので死亡する順番というのは、遺産相続においては非常に重要なのです。
交通事故で夫婦が死亡すると相続はどうなる?
交通事故が発生すると場合によっては家族が同じタイミングで亡くなるということもあり得ます。
例えば、サザエとタラオが交通事故で即死だった場合、同時に死亡したということになり親子間には相続が発生しないのです。
一方で、サザエとタラオが交通事故に遭ってサザエは即死でしたが、タラオが一命をとりとめて救急車で搬送され、その後残念ながら死亡した場合、同時死亡ではないのでサザエの相続においてタラオとマスオが1/2ずつ相続したことになり、その後タラオが死亡したことになります。
この場合、仮にタラオに子供や配偶者がいた場合、サザエの遺産はマスオではなく、タラオの子つまりマスオからすると孫に相続されることになるのです。
このように、同じ交通事故による相続でも同時死亡かどうかによって遺産がたどる経路が異なります。
死亡の順番がわからない時
飛行機の墜落事故や地震、津波などの災害によって死亡した場合、正確な死亡の順位がわからないことがよくあります。
この場合について相続はどうなるのでしょうか。
同時死亡の推定
民法では死亡の順番がはっきりしないケースにおいて、次のように規定しています。
民法第32条の2
数人の者が死亡した場合において、そのうちの1人が他の者の死亡後になお生存していたことが明らかでないときは、これらの者は、同時に死亡したものと推定する。
具体的にいうと、同一事故や災害で死亡した当事者間では、同時に死亡したと推定することから相続は開始しないということです。
同時死亡の推定は覆ることがある
先ほどのサザエの事例からもわかる通り、死亡の順番というのはその後の遺産のたどる経路に大きな影響を与えるので、親族にとって同時死亡か否かという点は非常に重要です。
中には同時死亡で遺産を多く受け取る人もいれば、同時死亡で遺産が受け取れなくなる人も出てくることから、しばしば争いになることも少なくありません。
同時死亡の推定はあくまで明らかではないときの推定に過ぎず、完全にみなすわけではないので、同時死亡ではないという証拠が出てこればこれを覆すことも可能です。
まとめ
相続の順番は親族全体に大きく影響してくるので、交通事故や災害などで一度に家族を失われた場合は、一度弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
同時死亡扱いでどんどん進めた後に、同時死亡が覆されるとその後の手続きが非常に大変ですので十分注意しましょう。
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