相続税 2021.01.27
賃借人が死亡!賃料は誰が払う?
近年、高齢者の一人暮らしが増加傾向にあり、あることが不動産業界でも問題視され始めています。それは孤独死です。
高齢者の一人暮らしは学生や若年層会社員の一人暮らしとは違い、賃貸人にとって様々なリスクが潜んでいます。
そこで本記事では、賃貸人が最も警戒している賃借人の死亡リスクについて詳しく解説したいと思います。
賃借人が死亡するとどうなる?
これまでのワンルーム賃貸経営というと、学生や単身会社員が主流だったため賃借人の死亡リスクというのはあまり想定されていませんでした。ところが高齢化によって、賃借人も徐々に高齢化の傾向にあり、賃借人が死亡するという案件が増え始めてきています。
賃借人が死亡した場合、賃貸借契約は死亡によって当然に終了すると思っている大家さんがよくおられるのですが、実はそうではありません。賃借人が死亡した場合、借家権は相続の対象になるので相続人が引き継ぐことになり、室内にある家財道具などは大家が勝手に処分できません。
賃借人死亡後の賃料はどうなる?
賃借人死亡後の賃料については、賃借人の相続人に請求することが可能です。ただし、この部分がスムーズにいかないことが多々あるため注意しなければなりません。
というのも、高齢で一人暮らしをしている方の多くは、身内と疎遠になっていたり、そもそも身内の居所がわからなかったりというケースが多く、相続人が誰でどこに住んでいるのかわからないことが多いのです。
ですから通常は、連帯保証人に連絡をして明け渡しをするまでの賃料を支払うよう通知をします。連帯保証人としては「たまったもんじゃない」という話になるので、連帯保証人が率先して相続人を見つけるよう動いてくれますが、中にはなかなか応じない連帯保証人もいるので結構苦労します。
いずれにしても、死亡後の賃料については回収が難航することが多いので、死亡が発覚したらすぐに動いて連帯保証人に連絡をとることを心がけましょう。
救世主となる保証会社
先ほどは連帯保証人のケースでお話ししましたが、賃借人が保証会社に加入している場合は流れが大きく変わってきます。保証会社とは賃借人が賃料等を滞納した際に、連帯保証人のように代わりに支払うことを業としている会社のことで、大家としては一定の極度額までは賃料が保証されるという仕組みです。
賃借人が死亡した場合についても、室内の荷物をすべて撤去して大家に明け渡しをするまでの賃料は保証対象なので、相続人がすぐに見つからなかったとしても大家が賃料を取り損ねることはありません。そして何より保証会社が主導となって、相続人の捜索に当たってくれる点が大きなメリットです。
保証会社としては相続人を見つけて賃貸借契約を早期に解除しないと、それまでの賃料を保証させられることになるので、すぐに顧問弁護士などに依頼をして相続人を捜索します。
これらの費用はすべて保証会社がもつので、大家の負担は一切ありません。
また、最終的に相続人が見つかって原状回復工事をする際にも、一定額まで保証がついているケースもあるため保証会社に加入していればかなりのリスク回避が可能です。
遺産相続は待たされることが多い
私が実際に知っている案件では、賃借人の死亡後保証会社が迅速に動いて相続人を見つけたものの、もう何年も連絡をとっていない間柄だったため、相続するかどうかの判断にとても時間がかかりその間保証会社が賃料を保証し続けることになった事例があります。
そもそも高齢の一人暮らしの人が死亡した場合、あまり交流がなかった相続人にとってみれば万が一借金が残っていたらどうしよう、という警戒感も強いため、相続するのかどうかについて熟慮するケースが多いのです。
また仮に相続したとしても、相続人が複数いるケースでは誰が何を相続するのかについての遺産分割協議が難航することが多く、調停や審判になると数年単位の時間がかかることも少なくありません。
このようなリスクを考えると、これからの高齢化社会における賃貸経営では保証会社への加入はもはや必須と考えた方がいいかもしれません。
まとめ
賃借人が死亡した後の賃料は、連帯保証人、保証会社、相続人のいずれかが支払うことになります。重要なことは、死亡によって解除はされないということです。
また、室内で死亡した場合は発見が遅れることも多いので原状回復費用が高額になることも少なくありません。
保証会社に加入していないと、これらの費用負担や見積金額をめぐって連帯保証人や相続人と争いになることも十分考えられます。
ワンルームの賃貸経営をされている方は、今後できるだけ保証会社を利用することをおすすめします。
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