相続税 2021.10.27
遺産相続でトラブルを防止する4つの事前対策
遺産相続では、必ずといっていいほど争いやトラブルが発生します。
その大きな原因として、被相続人、相続人共に事前に対策を行っていなかったことや、相続に関する知識がほとんどなかったことなどが挙げられます。
こちらの記事では、遺産相続でトラブルを防止するための4つの事前対策を、相続の基本的な知識と合わせて解説していきます。
相続でトラブルを防止するためには、4つの事前対策が効果的
1:遺産の分け方を知る
遺産の分け方は、「自分は長男だから一番多くもらえるはず」とか「ずっとお世話をしてきた愛人の私にも財産を貰う権利がある」など、そういうものではありません。
相続人になる人は法律で決まっていて「法定相続人」といいます。
相続人となれるのは、亡くなった人の配偶者(配偶者相続人)、そして下記の通り第一順位~第三順位までが血族相続人です。
・第一順位:子(孫・ひ孫) 子が既に亡くなっている場合は孫、孫も亡くなっている場合はひ孫
・第二順位:父母(祖父母) 父母が既に亡くなっている場合は祖父母
・第三順位:兄弟姉妹(甥・姪) 兄弟姉妹が既に亡くなっている場合は甥・姪
配偶者は必ず相続人となりますが、血族相続人は、順位が上の相続人がいる場合、それよりも下の順位の人は相続人にはなれません。
また、各相続人が相続できる財産の割合も法律で決められており、これを「法定相続分」といいます。法定相続分は、誰が相続人になるかにより変わってきます。
・相続人が配偶者のみの場合:配偶者が全ての財産を相続
・相続人が配偶者と子どもの場合:子どもが一人であれば、配偶者が二分の一、第一順位の子が二分の一を相続
子どもが複数人いる場合は、二分の一を均等に分けます。
例えば子どもが二人いる場合、二分の一を二人でわけるので、子ども一人の相続分は、財産の四分の一となります。
・相続人が配偶者と被相続人の父母である場合:配偶者が三分の二、第二順位の父母が三分の一を相続
父母共に健在の場合、三分の一を父母二人でわけるので、それぞれの相続分は六分の一となります。
・相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合:配偶者が四分の三、第三順位の兄弟姉妹が四分の一を相続
このように、相続人になる人(法定相続人)と、相続できる財産の割合(法定相続分)は法律で定められているので、自分が被相続人となる場合、生前に、誰にどれだけ財産を残せるのかを把握しておきましょう。
相続人になる可能性のある人も、自分は本当に相続人に該当するのかや、法律で決められた取り分は知っておくべきです。(※遺産分割協議で合意すれば、法定相続分以外の分け方も可能です。)
もし、被相続人が遺言書を残した場合、法定相続人に当てはまらない人に財産を残すことや、法定相続分に従わない遺産の分割も可能だということも覚えておきましょう。
2:相続税がかかるか
相続税は、遺産を相続した額に応じてかかる税金のことです。
しかし、相続した全ての人が必ず納めるわけではありません。
相続しても、納税の必要があるケースとそうでないケースがあります。
納税の必要があるのは、相続財産の総額が基礎控除額を超えた場合であり、基礎控除額を超えない場合は納税の必要がありません。
基礎控除額の計算方法
それでは、基礎控除額はどのようにして決まるのか、計算方法を見ていきましょう。
相続税の基礎控除額は、
3,000万円+(600万円×相続人の数)です。
例えば、法定相続人が3人いた場合、3,000万円+(600万円×3人)となり、計算すると基礎控除額は4,800万円となります。
このケースでは、相続財産の総額が4,800万円以下であれば、相続税は納める必要はありません。
財産が多くある家は勿論ですが、うちにはそんな財産なんてないから相続税は払わなくていいはず、と思っていても、想像以上に価値があるものを所有している場合もあるので、相続税がかかるのかどうかや、払うとしてどの程度になるかは、税理士に事前に相談しておくのが良いでしょう。
3:財産目録の作成
財産の総額と内容がわからないことには、遺産を分けることも、相続税や基礎控除額を計算することも出来ません。
そこで、被相続人の全ての財産の詳細を書きだした財産目録を作成しておくのが望ましいです。
財産目録は、被相続人の死後に相続人が作成することも可能ですが、故人の財産を一から調べるというのは大変骨が折れる作業になるため、出来るだけ生前に用意しておくべきでしょう。
財産目録を作成する際は、財産というとプラスの財産だけを思い浮かべるかもしれませんが、借金や負債などのマイナスの財産も明記しなければならないことが重要なポイントです。
プラスの財産は、現金、預貯金、土地、建物、有価証券、債権、自動車、骨董品、宝石、貴金属などです。
一方、マイナスの財産は、借金、住宅ローン、未払いの税金、連帯保証債務などです。
これらに関して、全てを詳細に書きだす必要があります。
財産目録を作成し、どれだけの資産と負債があるかを正確に把握することが、トラブルを防ぐ大きな対策となるでしょう。
4:家族と話し合う
これらの情報を調べたうえで、家族と話し合いながら、出来るだけもめ事が起こらないようなベストな分け方を考えることが重要です。
しかし、死後の遺産相続も争いを生みますが、まだ元気なうちに円満に話し合いたいと思っても、内容が内容だけに、どうしても喧嘩になってしまうケースも多いです。
そういう場合、税理士やファイナンシャルプランナーといったその道の専門家を交えて話し合いをし、アドバイスをもらうのが良いでしょう。
話し合いが難しく、決裂してしまうようなら、最善と思える財産の分け方を遺言書に残すという方法もあります。
また、親の立場から子どもたちへ向けての相続の話はしやすいですが、子の立場からは親へと言い出しにくい話題です。
出来れば、親の立場から、自分の亡くなった後に心配をかけないように子どもたちに話しておきたいものです。
子の立場から相続の話題を出す時は、親の元気がない時は避け、「お金のことはどうするんだ」、とお金を強調するような言い方ではなく、「将来も親族仲良く暮らしていきたいから話しておきたい」という考えが伝わるように話しましょう。
まとめ
何かとトラブルが多い遺産相続ですが、相続に関する基本的な知識を身に付けたうえで、事前に対策をしておくと、大きな争いに発展するのを防ぐことが可能です。
まだ健康なうちに出来るだけのことをして、死後に家族や親族が揉めないようにすることこそ、本当の意味での相続対策なのではないでしょうか。
遺産相続には複雑な部分も多く、家族構成、財産がどのくらいあるのか、負債はあるのか、遺言書を残すかどうかなどでも大きく変わってくるので、税理士やファイナンシャルプランナーに相談するのも良いでしょう。
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