相続税 2022.01.26

相続放棄した故人の車を廃車にするには?

借金のある家族が亡くなった場合、借金を相続しないために、相続放棄という方法があります。ただし、相続放棄をした人は、故人の財産を処分することができなくなることを知っておきましょう。今回は、相続放棄によって故人の車の廃車手続きができなくなった事例を紹介し、対処方法について説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

借金を残した父の相続を放棄したAさん

50代のAさんは、婚姻歴のない独身男性。兄弟姉妹はいません。母親が7年前に亡くなって以降、Aさんは父親と2人暮らしをしていました。

先日Aさんの父親が病気で逝去。Aさんはついに1人になってしまいました。

Aさんの父親は5年前に事業に失敗。父親は多額の借金を抱え、自宅を売却して返済に充てました。

しかし、亡くなった時点でもまだかなりの借金が残ったまま。Aさんと一緒に住んでいた今の家も借家で、他にめぼしい財産もありません。

父親の唯一の相続人であるAさんは、借金を相続しないよう、家庭裁判所で相続放棄の手続きをしました。どのみち財産もありませんから、借金の督促にあう前に、速やかに相続放棄するのがいちばんと考えたのです。

 

相続放棄したら廃車手続きができない!?

父親がいなくなったのは寂しいものの、借金を背負わずにすんでホッとしたAさん。ふと気になったのが、自宅隣りの駐車場にとめてある父親の車です。

父親の車は古くてボロボロ。Aさんも乗るつもりはありません。駐車場代もかかっているので、Aさんはできるだけ早く車を処分したいと考えました。

廃車の手続きについてよく知らなかったAさんは、知人の行政書士に相談。

すると、「相続放棄をしたのなら、故人の車の廃車手続きはできない」と言われてしまいました。

民法上、相続放棄をした人は、相続人ではなかった扱いになります。

Aさんは相続人ではないので、亡くなった父親の財産を処分することはできないというのです。

 

相続人がいない人には相続財産管理人が必要

Aさんは、父親の唯一の法定相続人。そのAさんが相続放棄をしたので、父親の相続人は1人もいません。

このように、相続人がいないケースで、相続財産の管理や処分をするのが、相続財産管理人と呼ばれる人です。相続財産管理人であれば、亡くなった人の車の廃車手続きもできます。

相続財産管理人には、誰でもがなれるわけではありません。利害関係人が家庭裁判所に申し立てをし、相続財産管理人を選任してもらう必要があります。

 

相続財産管理人を選んでもらうにはお金がかかる

では、Aさんが家庭裁判所に申し立てて相続財産管理人を選んでもらえば、それで解決するのでしょうか?

実は、問題はそれほど単純ではありません。

相続財産管理人の選任手続きには、結構な費用がかかるからです。

相続財産管理人になるのは、主に弁護士などの専門家です。

相続財産管理人の仕事は知識も必要な上に手間もかかるため、相続財産管理人にはそれなりの報酬を払わなければなりません。

相続財産が十分にある場合には、相続財産から報酬を払えるでしょう。しかし、相続人全員が相続放棄をしたようなケースでは、相続財産などないのが普通です。

報酬を払えるほどの相続財産がない場合には、相続財産管理人選任の申し立てをした人が、自腹で報酬分を用意する必要があります。

場合によっては、申立時に100万円程度を予納金として払わなければならないこともあるのです。

 

財産的価値があるかどうかで処分の可否は変わる

Aさんのケースでも、父親の残したのは借金だけで、財産はほぼゼロ。

ボロボロの車の廃車手続きに高額を払うのは、全く割に合いません。このようなケースではどうすればよいのでしょうか?

車に財産的価値がない場合には、相続放棄した家族が廃車にしても、現実に問題になるようなことはないと考えられます。Aさんが父親の車を処分しても、誰も文句を言う人はいないでしょう。

一方、もし財産的価値がある車なら、勝手に処分すると文句を言う人が出てくる可能性があります。

たとえば、Aさんの父親にお金を貸している債権者は、車を売ったお金から少しでも借金を返してもらいたいはずです。勝手なことをするとトラブルになってしまいます。

車に財産的価値がある場合には、原則どおり相続財産管理人を選任してもらい、相続財産管理人に売却等の手続きしてもらうのが安心です。

いずれにしろ、自己判断は禁物ですから、自動車専門の業者に査定してもらい、必要に応じて専門家に相談しましょう。

 

相続放棄前なら廃車にできる?

相続放棄をしたら廃車手続きができなくなるので、相続放棄する前に廃車手続きをしようと考える人もいるかもしれません。

しかし、相続放棄前に相続財産を処分すると、相続を「単純承認」したとみなされ、相続放棄ができなくなってしまいます。

相続放棄前に故人の車の廃車手続きをすると、相続放棄ができなくなってしまう可能性があります。

廃車にするタイミングについては、やはり事前に専門家に相談しておくのがおすすめです。

 

まとめ

相続放棄を考えている場合、たとえボロボロでも亡くなった人の車は勝手に処分しない方が無難です。

相続放棄をする前に専門家や自動車業者に相談し、どのタイミングで車を処分するかを考えておきましょう。

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