土地・不動産 2018.05.03

土地を等価交換する際の税制優遇措置の適用条件について

土地の等価交換を行う際には、税制上の優遇措置を受けられる場合があります。一定条件を満たすことで、一部の税金の課税を繰り延べられるというものです。
土地の等価交換は収益性を見込んで行われることも多いため、等価交換後、ある程度収益が上がってから納税できることは、所有者にとって大きなメリットになるでしょう。
ここでは、土地の等価交換で利用できる特例制度の適用条件について、詳しく取り上げていきます。

記事ライター:棚田行政書士

土地の等価交換とは

土地の等価交換とは、土地の所有者が、デベロッパーと呼ばれる開発事業者に土地を提供(売却)し、デベロッパーがその土地に建設した建物の一部分を土地の代わりに提供してもらい所有することであり、正式には「土地の等価交換方式」と言います。

土地を所有していて何かに利用したいけれど建物を建てる資金はないオーナーと、建物を建てたいけれど土地が無いというデベロッパーとの間でよく交わされる契約といって良いでしょう。

等価交換とは、同等の価値のあるもの同士を交換することなので、出資した土地の価値の割合に応じた区分所有権を得ることになります。

土地の等価交換のメリット

・借入をしなくて良い

普通、土地を有効活用するためにマンションなどの建物を建てるとなると、多額の費用がかかり、何十年も払い続けなければならないローンを組むことになります。

また、ローンを組んでまでマンションを建築しても、空室の割合が多いなど、経営がうまくいかずに返済できないリスクも伴います。

土地の等価交換であれば、建物はデベロッパーが建築するので、ローンを組まずに、持ち出し0で区分所有権を手に入れることが出来るのは大変大きなメリットではないでしょうか。

・税金の優遇がある

土地の等価交換では、「立体買い替えの特例」を受けることができます。

立体買い替えの特例とは、等価交換で土地の売却をした際にかかる譲渡所得税を、将来の売却時まで繰り延べできる特例です。

等価交換時には支払う必要がなく、支払いまで猶予があるのでその間に譲渡所得税の対策を考えることもできるでしょう。

土地の等価交換のデメリット

・土地を失うことになる

土地の等価交換は、土地の権利の一部(または全部)を手放して建物の区分所有権を得るので、土地全体の所有権は失ってしまいます。

先祖代々守ってきたような思い入れのある土地の場合は十分に検討しなければなりません。

・デベロッパーに左右される

デベロッパーは、いわば開発事業のプロです。

そのため、ディベロッパーに主導権を握られてしまい、言われるがままに交渉が進んでいき、損をしてしまう可能性があるでしょう。

等価交換を行う際は、自分でも調べる、わからないことは納得できるまで聞く、という姿勢が重要です。

 

土地の等価交換で、譲渡所得税が繰り延べられるための条件

土地や建物などの固定資産を売却などによって譲渡した場合には、譲渡所得税が課されます。しかし、一定の条件を満たす固定資産の等価交換に関しては、譲渡所得税の課税が繰り延べられます。

個人が、自分が所有する固定資産を同じ種類の固定資産と等価交換する場合、譲渡はなかったものとみなし、譲渡所得税が繰り延べられるのが「固定資産の交換の特例」制度です。

土地の等価交換をする際にこの特例を受けるための条件は、次の6つのすべてを満たすことです。

条件1. 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、いずれも固定資産であること

不動産業者などが販売を目的として所有していた土地や建物は、固定資産の交換の特例の適用外になるという条件です。自分の土地と不動産業者が販売している土地を等価交換する際には、注意が必要です。

条件2. 交換により譲渡する資産及び取得する資産は、土地と土地、建物と建物と互いに同じ種類の資産であること

同じ種類の固定資産の等価交換が条件なので、土地と建物を等価交換する場合には条件を満たすことはできません。なお、借地権は土地の種類に含まれ、建物に附属する設備及び構築物は建物の種類に含まれるという条件も付いています。

条件3. 交換により譲渡する資産は、1年以上所有していたものであること。

条件4. 交換により取得する資産は、交換の相手が1年以上所有していたものであり、かつ交換のために取得したものでないこと

等価交換を前提として取得された土地との等価交換の場合は、条件を満たすことができません。

条件5. 交換により取得する資産を、譲渡する資産の交換直前の用途と同じ用途に使用すること

等価交換される固定資産の用途は、固定資産の種類に応じ、次のように区分されています。

土地・・・宅地、田畑、鉱泉地、池沼、山林、牧場又は原野、その他
建物・・・居住用、店舗又は事務所用、工場用、倉庫用、その他

等価交換前に、土地区分内のいずれかの用途に土地を使用しており、等価交換後も引き続き同じ用途で土地を使用するのであれば、条件達成となります。

また、交換後の土地の使用者が複数名になる場合でも、等価交換した土地所有者本人の使用用途が一貫していれば条件達成とすることができます。

条件6. 交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、いずれか高い方の価額の20%以内であること

 

難しそうな条件に感じるものもありますが、一般の個人が土地同士を等価交換する場合には、ほとんど自然に満たすことのできる条件です。

 

土地の等価交換で、固定資産の交換の特例を利用する上でのポイント

土地を等価交換する際に固定資産の交換の特例を利用する場合は、上記の条件の他にも、あらかじめ留意しておきたいことがあります。

確定申告が必要

固定資産の交換の特例の適用を受けたい場合には、等価交換をした年の確定申告で特例を適用することを示さなければなりません。確定申告の際は、次の事項を記載した譲渡所得内訳書を添付する必要もあります。

交換譲渡資産と交換取得資産の種類、数量、用途及びその価額

交換の相手方の氏名又は名称及び住所若しくは居所又は本店若しくは主たる事務所の所在地

交換の年月日

交換譲渡資産及び交換取得資産の取得年月日

その他参考となるべき事項

換差益には税が課される

特例の適用条件を満たしても、等価交換によって相手方から金銭などの交換差金を受け取った場合は、交換差金が課税対象になります。

課税の「免除」ではなく「繰り延べ」である

固定資産の交換の特例はあくまでも繰り延べであり、課税の免除ではありません。なお、交換取得資産の取得費は交換譲渡資産の取得費を引き継ぎます。

譲渡所得税以外の税は繰り延べられない

土地を等価交換する際には、譲渡所得税以外の税金や費用も必要になります。例えば、不動産登記の際の登録免許税や印紙代、不動産取得税などです。繰り延べられるのは譲渡所得税のみであり、その他の税は都度、支払う必要があります。

税務署からチェックが入り適用を否認される可能性がある

固定資産の交換の特例を受けるための条件の一つである「交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、いずれか高い方の価額の20%以内であること」ですが、税理士が、時価ではなく、固定資産税評価額や路線評価額で判定してしまうといった間違いがあります。

この場合、交換の特例の適用を否認されてしまう可能性があるので、不動産鑑定士による不動産鑑定評価をお勧めします。

 

まとめ

土地を等価交換する際には、固定資産の交換の特例の適用条件を満たせるかどうかを確認しましょう。条件を満たすことができれば、土地の運用において大きなメリットになります。

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