土地・不動産 2018.06.28

マンションを相続する際の相続税と、特例制度について

現代では、マイホームとしてマンションを選ぶ人も珍しくありません。生活上の利便性や維持管理の容易さなどを考慮し、老後の生活の場としてマンションを選ぶ高齢者も増えています。それにより、相続でマンションを取得する相続人も増加傾向にあります。

マンションの相続税の計算方法は、一般の戸建て住宅とは少し異なる部分があります。ここでは、マンションの相続税を計算する方法と、マンションの相続税を抑えることのできる特例制度についてご紹介します。

記事ライター:棚田行政書士

マンションの相続税の計算方法

マンションなどの不動産は通常、「土地」部分と「建物」部分に分けて相続税評価額を計算します。まずは、次の計算式でマンションの土地部分の相続税評価額を計算しましょう。

「路線価×マンション全体の面積×自分の敷地権割合」

マンション全体の評価額は、接道の路線価などによって決まります。もし路線価が設定されていない地域にマンションがあるなら、倍率方式によって計算することになります。固定資産税に、地域ごとの評価倍率をかけることで計算できます。

マンション全体の評価額のうち、自分の持分に相応する額が土地の相続税評価額になります。持分がどれほどあるかは、マンションの登記簿謄本を確認すると分かります。

 

マンションの建物部分については、基本的に固定資産税評価額と同等と考えて良いでしょう。

固定資産税評価額は、市区町村から毎年送付される課税明細書や、税務課で発行される固定資産税評価証明書を確認すると分かります。

最後に、土地と建物の評価額を合算すれば、マンションの相続税評価額を知ることができます。

 

マンションは通常の場合、RC造など耐用年数の長い構造で建設されています。そのため、年数が経っても評価額が落ちにくく、一般の戸建て住宅に比べて高額な評価額になりがちです。

マンションの相続税評価額を試算した結果、遺産総額が相続税の基礎控除額を超えることが判明するかもしれません。そのような時には、マンションの相続税の特例制度を利用できないか確認してみましょう。

 

マンションの相続では「小規模宅地等の特例」を利用可能

小規模宅地等の特例とは、被相続人や相続人が居住していたり、事業に使用したりしていた店舗などの不動産に対して、相続税評価額を大幅に減額するという制度です。

相続税の納税資金に困った結果、遺族が自宅や店舗など生活の本拠地を失うようなことがないように考慮された特例です。

「小規模」という名の通り、この特例には面積についての制限があります。小規模宅地等の特例の対象になる不動産は4種類あり、種類ごとに面積の制限や減額割合が異なります。

不動産の種類 面積の制限 減額割合
特定居住用宅地 330㎡ 80%
特定事業用宅地 400㎡ 80%
貸付事業用宅地 200㎡ 50%
特定同族会社事業用宅地 400㎡ 80%

・特定居住用宅地とは、被相続人の住居のことを指しています。
・特定事業用宅地とは、被相続人が事業を行っていた土地や建物のことです。
・貸付事業用宅地とは、貸し駐車場や不動産貸付業などのための不動産を指します。
・特定同族会社事業用宅地とは、被相続人かその親族が、株式または出資総額の50%以上を有している法人に対し、所有する不動産を使用させていた場合に該当します。

 

相続するマンションに小規模宅地等の特例を適用させたいと思う相続人は、次のいずれかの条件に当てはまる立場でなければなりません。

1. 配偶者

被相続人の夫または妻です。マンションを相続するのが配偶者の場合は、無条件で特例を適用できます。

2.同居親族

相続発生時に、被相続人と同居していた親族です。実際に同居していたかどうかがポイントなので、単に住民票を被相続人と共にしていたという場合には適用できません。

3. 被相続人と別居しており、3年以上持ち家に住んでいない親族

前述の配偶者、および被相続人の同居親族の両方がいない場合に限り、別居の親族が特例を適用できる可能性があります。条件として、相続開始前3年以内に自分または自分の配偶者の持ち家に住んでいないことがあげられています。

 

マンションの相続で小規模宅地等の特例を適用させるには、相続税の申告期限までにマンションの遺産分割を済ませ、マンションを相続する人を決めておかなければなりません。さらに、相続税がかからない場合でも、申告書を提出する必要があります。

小規模宅地等の特例は、相続時精算課税制度の利用で贈与されたマンションや、相続開始前3年以内の贈与によって取得したマンションに対しては、適用されません。

 

まとめ

マンションの相続税評価額は、路線価や評価倍率、固定資産税評価額を調べればすぐに計算できます。

相続するのが被相続人と近しい親族であれば、税制上の大きな減額特例を受けられる場合もありますが、配偶者以外の親族の場合は、細かく厳しい条件をクリアすることが必要です。

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