土地・不動産 2018.12.07
不動産相続で権利証がなかったり、権利証を紛失したりした場合は一体どうなる?
相続では、相続する不動産の権利証を紛失したことに気づいて、相続人が慌てる場合もあります。不動産の権利証を紛失したので、相続登記など不動産に関係する手続きが何もできなくなってしまったと考え、相続登記をしないまま不動産を放置する相続人も少なくありません。
不動産の権利証は、紛失したからといって再発行できる書類ではありませんが、相続においては必ずしも必要ではないケースもあります。ここでは、不動産の相続に際して、権利証の紛失に気が付いた時に確認すべきことについて解説します。
不動産の相続登記で権利証は必要?
相続登記とは、相続した不動産の名義を相続人に変更するための登記手続きです。不動産の相続登記に必要な書類は、以下になります。
・登記申請書
・被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本
・被相続人の住民票
・相続人全員分の戸籍謄本と住民票の写し
・相続人全員分の印鑑証明書
・遺言書、または遺産分割協議書
・固定資産税評価証明書
遺言書による不動産の相続や、法定相続による不動産の相続では省略できる書類もありますので、参考程度にお考え下さい。ここで注目したいのは、不動産の相続登記の必要書類に、不動産の権利証が含まれていないことです。
不動産の相続登記には、原則として権利証が要りません。ですから、不動産の相続登記を控えて権利証を紛失したとしても、それほど慌てる必要はないでしょう。
不動産の権利証に取って代わる「登記識別情報」
従来、不動産に関しては登記済証すなわち権利証と呼ばれる書類が発行され、不動産の売却や担保設定の際の本人確認書類として使われてきました。しかし、2004年の不動産登記法改正により、権利証の発行は廃止され、権利証の代わりに「登記識別情報」が発行されるようになっています。
登記識別情報とは、数字やアルファベットの組合せからなる、12桁の番号です。登記所が無作為に選んだもので、相続登記によって新しい名義人になった相続人にだけ、通知されます。
登記識別情報は、今度の不動産の登記や売却などの際に、不動産の名義人本人であることを証明するために必要であり、厳重に管理すべき大切な情報でもあります。
登記識別情報は、例えるならパソコンやスマートフォンのロック解除用パスワードのようなものです。もしもパスワードが他人に知れてしまったら、他人が自分の端末を勝手に操作することもできてしまいます。
それと同じことで、登記識別情報を他人に知られてしまうと、せっかく相続した不動産を勝手に登記されてしまう可能性があるのです。そのため、厳重に管理して、絶対に他人に知られないようにしましょう。
なお、登記所で交付される登記識別情報通知書は、登記識別情報が人目にさらされることのないよう、登記識別情報の上に目隠しシールを貼り付けた状態で交付されます。
目隠しシールをはがすのは、不動産の登記など、登記識別情報の確認が必要な時まで待ちましょう。登記後にすぐはがしてしまうと、誰かに盗み見られても気づくことができません。
また、従来の形式の権利証も無効になったわけではなく、不動産の手続きには引き続き使用可能です。権利証を紛失していないなら、引き続き大切に保管して下さい。
相続登記で権利証が必要なケースもある
相続登記に権利証が必要ないというのは、あくまで原則としての話です。例外的に、相続登記に権利証が必要なケースがあります。それは、被相続人の登記上の住所と、住民票や戸籍で確認できる住所が一致しない、または住民票や戸籍が確認できない場合です。
現状、亡くなった人の住民票や戸籍が保存される期限は、死後5年とされています。法改正によって、住民票の保存期間を150年に延ばそうという動きもありますが、まだ確定されてはいません。
ですから、被相続人の死後5年以上経ってから相続登記をする場合には、住民票も戸籍も抹消されていて確認できないことがあるのです。
住民票も戸籍も確認できない場合、法務局としては相続登記を受け付けるわけにはいきません。同姓同名の、別人の土地を登記してしまう可能性があるためです。
このようなケースでは、相続する不動産の権利証に加えて、以下の書類を添付することで相続登記が可能になります。
・相続人全員の上申書
・相続人全員の印鑑証明書
権利証が必要な相続登記なのに権利証を紛失したら、どうすれば良い?
前項でご紹介したようなケースで、権利証が紛失された場合にはどうしたら良いのでしょうか。
最後の手段として、不動産の登記上の名義人と被相続人が同一人物であることを証明できる、権利証に代わる書類を提出するという方法があります。
どんな書類なら良いのかについては、管轄法務局ごとに基準が異なることを覚えておきましょう。例を挙げるとすれば、以下のような書類が求められます。
・納税通知書
・過去3年分の評価証明書
上記のどちらの書類も紛失している場合には、一度、管轄法務局へ相談してみることをおすすめします。
まとめ
相続開始からしばらく経過してからの相続登記では、権利証その他の必要書類が紛失されているケースも珍しくありません。
このような場合には、法務局に紛失の事実を伝えれば、代替策を提案してもらえることでしょう。その他、知り合いに司法書士がいれば、一度相談してみるのもおすすめです。焦らずに、落ち着いて対処するようにしてください。
関連記事
-
土地・不動産
-
相続不動産の評価方法と節税方法について
不動産はどのように評価されるのか 不動産の価格というと時価をイメージする人も多いと思います。 例えば、1億円で購入した土地であれば評価額も1億円と思うかもしれませんが、実際はそうではありません。 相続 ...
2020/12/25
-
土地・不動産
-
不動産相続で大トラブル!実家の価値は果たしていくら?
不動産と預貯金の違いとは? そもそも、なぜ不動産相続が揉めやすいのかというと、それにはいくつかの要因があります。 不動産は高額である 相続財産に占める不動産の価格割合を見てみると、ほとんどの相続のケー ...
2019/10/04
-
土地・不動産
-
相続対策で不動産は売るべき?売らざるべき?
今売ったらどんな得がある? 東京でも山手線の内側を中心に、不動産価格は以前よりも大きく上昇しています。 例えば、実際の事例でいうと、港区にある築10年程度のワンルームマンション、新築時に約2,000万 ...
2019/08/07
-
土地・不動産
-
家を相続するには!? 相続登記の方法!
相続登記は、できればしておいたほうが無難 相続登記は、いわゆる名義変更です。ですが、しなくても特に問題はないのです。法的な義務はありません。たとえば、その家を売ろうとしたとき、そして、建て替えをするの ...
2017/10/03
-
土地・不動産
-
相続登記申請書の書き方について
相続登記申請書の書き方 相続登記自体は自分でも申請することが可能です。その際には相続登記申請書と複数ある必要書類を添えて、不動産の所在地を管轄する法務局に提出する必要があります。 それでは、相続登記申 ...
2017/10/02
-
土地・不動産
-
相続登記の費用はいくらかかる?その内訳とは?
相続登記ってそもそも何? 相続に伴って不動産を取得した場合に、その名義を被相続人の名義から相続人の名義に変更する手続きのことを一般的に「相続登記」と呼んでいます。 ただ、正式には相続登記という登記手続 ...
2017/10/02