土地・不動産 2018.12.31

不動産を相続した際にかかる登記費用は経費になるのか?

不動産を相続した人は、相続登記の手続きをする必要があります。なお、相続登記には一定の登記費用がかかります。登記費用は、相続する不動産の価額が大きいほど高額になるものですから、できれば登記費用を経費として落としたいと思う人もいるでしょう。
そこで今回は、相続した不動産の登記費用は経費にできるのかという点について解説してまいります。

記事ライター:棚田行政書士

不動産相続の際にかかる登記費用について

不動産を相続すると所有権の登記名義を被相続人から相続人に変更する必要があります。

この手続きを一般的に相続登記といい、次に記載する費用がかかります。

・登録免許税

登記手続きの際に発生する国の税金です。詳しくは後程解説します。

・司法書士報酬

相続登記は自分で申請書を書いて行うこともできますが、通常は登記の専門家である司法書士に依頼して申請するのが一般的です。

費用は一律ではないのでまちまちですが、都内の投資用ワンルームマンションの相続登記であれば、概ね4~5万円前後のことが多い印象です。

・司法書士日当

司法書士に支払う日当で、司法書士報酬とは別に請求されることが多いです。1物件あたり1万円前後くらいはみておきましょう。

また管轄の法務局が遠方の場合は、別途旅費や通信費がかかることもあります。

・各種書類の取得費用

相続登記をするためには、被相続人の死亡から出生までの戸籍謄本や除籍謄本を取得しなければなりません。

相続人自身で手配することもできますが、それなりに労力が必要なので司法書士に依頼するケースも多く数千円程度が相場です。

 

不動産の相続に必要な登記費用「登録免許税」

評価額が10万円に満たないほど著しく価格の低い不動産であれば話は別ですが、相続した不動産の相続登記では、必ずと言っていいほど「登録免許税」という登記費用がかかります。

相続した不動産にかかる登記費用の税額は、次のように計算できます。

「登記費用(登録免許税) = 課税標準×税率」

相続した不動産の場合、登記費用である登録免許税の課税標準となる金額は、不動産の固定資産税評価額です。固定資産税評価額は、市区町村が発行する課税証明書などで「本年度価格」や「評価額」などの名称で記載されている価格になります。

登記費用である登録免許税の税率は、相続によって不動産を取得する場合は0.4%、遺贈などによって不動産を取得する場合には2%です。

 

相続した不動産を売却した際の経費

相続した不動産を売却して得られる利益は「譲渡所得」となり、譲渡所得税という税金がかかります。譲渡所得税の対象となる譲渡所得は、以下の式で計算しましょう。

「譲渡所得=不動産の譲渡価額-(取得費+譲渡費用)」

不動産の譲渡価額には、不動産の売却金額を当てはめます。なお、譲渡価額には、固定資産税や都市計画税の清算金も含めて計算するようにしてください。

不動産の譲渡価額から引くことができるのは、取得費と譲渡費用という経費です。取得費とは、売却した不動産を取得するためにかかった経費を指しています。

不動産を相続した場合で考えると、不動産を取得するための経費といえるのは、登記費用である登録免許税や、司法書士に相続登記の手続きを代行してもらった際の経費程度でしょう。

というわけで、相続した不動産を売却した際には、登記費用である登録免許税などを経費として計算可能です。

所得税法基本通達では、以下のように定められています。

所得税法基本通達38-9(非業務用の固定資産に係る登録免許税等)
「固定資産(業務の用に供されるものを除く。以下この項において同じ)に係る登録免許税(登録に要する費用を含む)、不動産取得税等固定資産の取得に伴い、納付することとなる租税公課は、当該固定資産の取得費に算入する」

 

このように、譲渡費用という経費は、相続した不動産を売却するために直接かかった経費を表しています。

例えば、募集広告を出した不動産会社へ支払う仲介手数料、不動産を売却するために支出した測量費などの経費が、譲渡費用となるでしょう。

 

相続した不動産が事業用資産である場合

アパート、マンション、オフィスビルなど、賃料収入を生む事業用資産を相続した相続人には、その後、不動産所得税や固定資産税などの経費が毎年かかります。

不動産所得税の課税価格は、次の式で計算される金額です。

「不動産所得=不動産収入-必要経費」

賃料収入などの不動産収益から、必要経費を引いた金額が課税価格になります。必要経費に含められるのは、賃料収入を得るために直接必要になった経費だけです。

例えば、建物の減価償却費や管理費、修繕費、人件費などでしょう。相続で事業用資産を相続した場合には、必要経費として登録免許税などの登記費用も計上できます。

この点に関係する所得税基本通達を見てみましょう。

所得税法基本通達37-5(固定資産税等の必要経費算入)
「業務の用に供される資産に係る固定資産税、登録免許税(登録に要する費用を含み、その資産の取得価額に算入されるものを除く)不動産取得税、地価税、特別土地保有税、事業所税、自動車取得税は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する」

 

登記費用の経費化が認められたきっかけ

登録免許税などの登記費用を経費にできるようになったのは、実は、まだ最近のことです。経費化が認められるきっかけとなったのは、2005年の最高裁判決でした。

判決を要約すると「父親から相続したゴルフ会員権の名義書換の手数料を、ゴルフ会員権の譲渡所得における取得費に含めてよいか否か」という事案について「資産を相続するための付随費用は、資産の取得に要した金額として収入金額から控除されるべき性質のものである」という判決が下され、相続人の主張が認められたというものです。

この判決をきっかけとして、不動産の登記費用などを、経費として認める動きが広まりました。

 

まとめ

不動産を相続した時の登録免許税は、登記費用として必要経費にすることができます。なお、事業用資産を遺贈などによって取得し、不動産取得税を納めている場合には、相続登記以降、最初の年度に限り、不動産取得税も登記費用として、必要経費に含められます。

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