土地・不動産 2019.01.05

マンションのリフォームは相続税対策に有効?

マンションなどの不動産を所有していれば、相続が発生したときに相続税がかかることもあります。相続人の相続税負担を抑えるためには、生前からの対策が有効です。今回は、マンションをリフォームすると相続税対策になるかどうかについて説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

相続開始前にマンションをリフォームすると現金を減らせる

相続税がかかるケース

相続税は、相続財産の額が一定額以上になるとかかります。具体的には、相続人の数に応じて変わる「基礎控除額」を超えると、相続税の課税対象になります。

基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数

相続財産を減らせば相続税対策になる

相続税は、相続財産の額が多いほど高額になります。相続税対策は、手持ちの財産の額を減らすことが基本になります。

マンションを所有している場合には、マンションを手ばなせば財産を減らせます。しかし、マンションを売却しても現金に変わるだけで、財産を減らす効果はありません。マンションを生前贈与する方法もありますが、受け取る側に贈与税がかかってしまいます。

そこで、マンションをリフォームする方法を考えることがあると思います。マンションをリフォームすれば、手元の現金を減らすことができますから、相続税を抑えられるように思えます。

 

マンションをリフォームすると相続税評価額が上がる

マンションをリフォームすると、手元の現金は減らせても、マンション自体の価格が上がってしまうことがあります。

マンションの相続税評価額の計算方法は?

マンションは土地と建物が一体化したものです。マンションの相続税評価額を出すときには、土地と建物それぞれの評価額を計算して、合計します。

<土地の評価方法>

土地については、路線価方式、倍率方式という2種類の評価方法があり、原則的に市街地では路線価方式、市街地以外では倍率方式で評価します。

マンションの所有者は、敷地権という形で土地に対する権利(通常は所有権)を持っています。そのため、土地の評価額に敷地権の割合(土地の持分)をかけて評価額を出す必要があります。

<建物の評価方法>

建物については、相続税評価額は固定資産評価額と同じです。マンションの建物部分は、固定資産評価額で評価します。

マンションをリフォームしても固定資産評価額は上がらない

建物をリフォームすれば、必ず固定資産評価額が上がるわけではありません。リフォーム状況を役所がすべて把握できる体制にはなっていないからです。

役所に対して建築確認申請が必要なケースを除き、リフォームによって固定資産評価額が上がることは、通常ありません。

マンションの場合には、建築確認が必要なリフォームは基本的にできないので、マンションをリフォームしても、固定資産税評価額は変わらないことになります。

相続税評価額を出すときにはリフォーム費用の7割を加算

マンションをリフォームしても固定資産評価額が上がることはないため、マンションのリフォームは相続税対策として有効と以前は考えられていました。

しかし、2013年に「増改築等に係る家屋の状況に応じた固定資産税評価額が付されていない家屋の評価」について、国税庁が次のような趣旨の質疑応答事例を公表しました。

「リフォームした建物について、リフォーム部分が固定資産評価額に反映されていない場合には、リフォーム前の固定資産評価額にリフォーム費用(償却費相当額は控除可)の7割を加算して評価する」

つまり、マンションをリフォームすると、リフォームにかかった費用の7割分、相続税評価額が上がってしまうことになります。

 

マンションのリフォームによる相続税節税効果

マンションをリフォームしてもあまり節税できない

マンションをリフォームするのに1,000万円かかった場合には、700万円をマンションの固定資産評価額に加算して相続税評価額としなければなりません。

マンションをリフォームして現金が1,000万円減っても、建物の価額が700万円上がりますから、300万円しか財産が減らないことになります。

マンションをリフォームしても、現在は相続税の節税効果は薄くなっています。リフォームにより現金を使ってしまうと、相続税の納税資金がなくなってしまうこともあるため、注意が必要です。

マンションのリフォーム費用を加算しなくてもよい場合

マンションをリフォームしたにもかかわらず、相続税評価額にリフォーム費用が加算されていなければ、過少申告となり、追徴課税されてしまいます。

ただし、どんなリフォームでも、リフォーム費用を加算しなければならないわけではありません。通常の修繕や補修であれば、費用の加算は不要です。

リフォーム費用を加算すべきかどうかわからない場合には、税理士に確認して対処するようにしましょう。

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