土地・不動産 2019.01.30
相続した不動産を共有することのメリット・デメリット
不動産を相続しなければならない場面になると、「とりあえず共有しておこう」と考える相続人がいます。
しかし、相続した不動産の共有をめぐるトラブルは全国的に頻発しており、仲の良かった家族の絆が不動産の共有によってボロボロになってしまうことも、決して珍しくありません。この記事では、相続した不動産を共有することに伴うデメリットに重きをおいて解説します。
相続した不動産を共有するメリット
相続した不動産を共有する人が多いことからも分かるように、不動産を共有することには若干のメリットもあります。
1.遺産分割が簡単
相続における遺産分割の段階では、相続財産ごとに相続人を決める必要があります。不動産の場合、相続したいという相続人が複数人いたり、逆に誰も相続したくないと言うことで、誰が相続するのかがなかなか決まらなかったりすることも多いものです。
共有する場合は、相続人全員の共有名義として登記をするだけで良い上に、相続人全員が不動産の権利者になれます。
2.不動産を公平に分割できる
相続人が複数人いる場合には必ず、不公平にならない仕方で相続財産を分割する必要が出てきます。この点で、物理的に分割することのできない不動産の存在が障害になることは、言うまでもありません。
不動産を共有にするならば、相続人それぞれの相続分にしたがって不動産が公平に分割されることになるため、相続人が不満を感じない仕方で遺産分割ができます。
相続した不動産を共有するデメリット
実際のところ、相続した不動産を共有することは、メリットよりもデメリットの方がはるかに多くなります。代表的な4つのデメリットを見てみましょう。
1.共有者が時間と共に増える
共有から時間が経過すれば、共有者のうちの誰かが亡くなり、今度は被相続人の立場になることも十分考えられます。
そうなると、時間の経過と共にどんどん共有者の人数は増えていき、ひとつの不動産における共有持分は細分化されていくでしょう。
共有者の人数が増えるということは、不動産について非協力的な人が現れるリスクが高くなるということも意味します。
共有されている不動産は、何をするにしても共有者全員の意思が一致しなければなりません。やむなく共有にするなら、一刻も早く共有状態を解消するように努めましょう。
2.共有者の遺産相続が困難に
先ほど述べたように、共有者が亡くなれば今度はその人の遺産相続がスタートします。その人の相続人は、共有されている不動産のうち、被相続人の共有持分についてのみ遺産分割をしなくてはなりません。
他にも権利者がいる不動産の一部を欲しい、と思う相続人はまずいないため、相続人同士がお互いに押し付けあう可能性があります。結果として、相続人たちの関係を悪化させてしまうことでしょう。
共有されている不動産の遺産分割でもめにもめてしまった場合は、家庭裁判所に申し立てることで不動産の遺産分割について調停や審判をしてもらうことも可能ですが、相続人に多大な労力をかけることに変わりはありません。
3.自分の自由にはならない
共有されている不動産は、多くの行為について共有者全員で行わなければなりません。そのため、売却したり、建物を建てたりする場合は、共有者全員が同意している必要があります。一部の権利を持っているだけでは、自由に不動産を活用することは難しいのです。
自由にできないので共有状態から抜けたいと思っても、一筋縄ではいきません。他の共有者に自分の持分を買い取ってもらうことで共有状態から抜けることはできますが、うまく買い取ってもらえる可能性は低いため、最悪の場合は無償で譲渡することになります。
共有持分の買い取りを実施する不動産会社も少数ながらありますが、相当な安値で売らなければならないでしょう。
4.金銭的な犠牲
相続した不動産を共有するなら、共有者全員は不動産にかかる税金についても分担することになります。
たいていの場合、共有することにした不動産に自分が住んでいるとか、頻繁に使用しているということはありません。それなのに税金を払わなければならないとしたら、不満が募るとしても無理はないでしょう。
共有した不動産が賃貸物件の場合、本来であれば共有者として受け取る権利のある賃料などが適正に支払われなくなるというケースもあります。
共有者同士が近しい関係にあるため、お互いに甘えが起こりやすく、共有者のうちの誰かが金銭的な点でルーズになることも十分考えられるでしょう。
まとめ
相続した不動産の共有は、当事者の力だけではとても解決できないほど深刻なトラブルに発展することもあります。
「うちは家族みんな仲が良いから大丈夫」と考えていた人たちが、二度とお互いの顔を見たくないと言うほどに憎み合うことも珍しくありません。他人事と思わず、相続した不動産の共有は極力避けたほうがよいでしょう。
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