土地・不動産 2019.02.18
不動産を相続して売却した場合の所得税の計算方法
親から不動産を相続した場合、すでに自宅として住んでいるようであれば、そのまましばらく持ち続ける可能性が高いかと思いますが、空き家の場合についてはそのまま売却しようと考える人も多いのではないでしょうか。
相続不動産を売却した場合は、通常の売却と同じように譲渡所得に対して所得税が課税されますが、計算方法が若干ややこしいので注意が必要です。そこで今回は、相続不動産を売却する際の所得税の計算方法について解説します。
相続した不動産を売却した時にかかる税金には何がある?
まずは、相続した不動産を売却した際にかかる主な税金について見ていきましょう。
譲渡所得税
譲渡所得とは、簡単に言うと相続不動産を売却した際の「利益」のことです。
その利益である譲渡所得に対して課税される税金のことを、「譲渡所得税」といいます。
印紙税
印紙税は、不動産売買契約書を作成する時に、契約書に課税される税金のことです。
印紙税の額は、契約金額に応じて以下のように増えていきます。
100万円超500万円以下 | 1,000円 |
500万円超1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円超5,000万円以下 | 10,000円 |
5,000万円超1億円以下 | 30,000円 |
1億円超5億円以下 | 60,000円 |
5億円超10億円以下 | 160,000円 |
10億円超50億円以下 | 320,000円 |
50億円超 | 480,000円 |
登録免許税
売却する土地にまだローンが残っているなど、抵当権が設定されている場合、売却した代金でローンを返済し抵当権を外すことが可能です。
その際に、抵当権抹消登記の手続きが必要となり、登録免許税がかかります。
相続した不動産を売却した時にかかる税金以外の費用は何?
相続した不動産を売却するときにかかるのは、税金だけではありません。
その他に、以下のような諸費用も必要となる場合があります。
仲介手数料
不動産の売却は、ほとんどの方が不動産会社に依頼することになると思いますが、その際報酬を支払う必要があります。
これが仲介手数料で、「売買価格×3%+6万円」に消費税を加算した額が最大かかります。
建物の解体費用
土地の上に建物が建っている場合に土地のみを売却したい場合、売り主の負担で建物の解体費用を支払うことになります。
建物の大きさや材質によっても違いますが、一般的な木造の2階建てで200万前後かかるでしょう。
土地の測量費用
売却する土地の境界が確定していない場合、測量して正確な土地の面積を確定しなければならないことがあり、その際土地の測量費用がかかります。
測量費用はだいたい10万円~20万円程度かかると見ておけばよいでしょう。
譲渡所得を計算するために知っておくべきこと
相続した不動産の譲渡所得税を計算する際は、まず譲渡所得を算出する必要があります。
譲渡所得は、
譲渡価額—取得費—譲渡費用—特別控除=譲渡所得
上記の計算式で求めることができますが、以下について把握しておけば計算式が理解しやすいでしょう。
不動産を売却した時の代金
相続不動産を売却した時の金額を「譲渡価額」と言います。
当然ですが、高く売れれば売れた分だけ所得税は高くなります。譲渡価格については、売買契約書で確認しましょう。
不動産購入時の価格
不動産の購入時の価格のことを「取得費」と言います。相続不動産の場合については、亡くなられた被相続人が買った時の金額がベースとなる点がポイントです。
ただし、建物部分については、買った金額から減価償却費を控除するため、所有期間が長いほど、取得費は減ることになります。ちなみに、自宅不動産の減価償却率は以下の通りです。
木造:耐用年数33年 償却率0.031%
軽量鉄骨:耐用年数40年 償却率0.025%
鉄筋コンクリート:提要年数70年 償却率0.015%
その他にも、不動産会社に支払った仲介手数料や売買契約書に貼った印紙代、不動産取得税、登録免許税、登録手数料、建物の取り壊し費用などについても、取得にあたって支出していれば取得費として計算することが可能です。
しかし、相続した不動産ということは、親がかなり前に購入したものであり、購入時の価格、つまり取得費がわからないということも少なくないです。
その場合、売却した価格の5%を取得費とすることになりますが、おそらくかなり安価になってしまうため、売却する前に購入時の売買契約書は是非探しておきたいところです。
売却のためにかかった費用
不動産を売却するためにかかった費用のことを「譲渡費用」といいます。
売却の際の仲介手数料や不動産会社に支払った広告費、測量費、印紙代などについても該当します。
大幅に所得税が節税できるケース
居住用の不動産であるマイホームを売却した場合については、国の政策的な配慮によって3,000万円の特別控除が設けられており、大幅に所得税が節税となります。
主な適用要件は、該当不動産を相続した人が、自宅として住んでいることです。
当然ですが、この特例を受けるために引っ越してきても、特別控除は認められません。
空き家の売却で所得税が節税できるケース
最近では相続によって誰も住まなくなった空き家が増えており、社会問題にまで発展しています。空き家が放置されると周辺の生活環境に悪影響が及ぶため、有効活用して利用を促進することが重要で、そのための政策の一環として所得税の控除ができるのです。
相続によって取得した空き家についても、一定の要件を満たせば3,000万円の特別控除が受けられます。
所得税が節税できる空き家の条件は?
所得税の節税対象となる空き家は、昭和56年5月31日以前に建築された住宅で、売却する際に耐震リフォームなどを行って新耐震基準を満たすことで適用が可能となります。
耐震リフォームをしない場合でも、建物を取り壊して更地にして売却した場合でも、同じく3,000万円の特別控除を使うことが可能です。
注意点としては、マンションには適用されず、戸建てでなければならないということでしょう。
また、相続の開始の直前において、被相続人である亡くなった親以外に住んでいる人がいないことも要件となります。
適用期間について
所得税が節税できる3,000万円控除の適用期間は、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間です。
また、相続の時から相続の開始があった日以降3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に売却したものに限られます。
壌土所得税には税率が二種類ある
相続不動産の譲渡所得にかかる所得税(譲渡所得税という)の税率は、相続不動産の所有期間に応じて、次のいずれかが適用されます。
長期譲渡所得(所有期間が5年を超える場合):所得税15% 住民税5%
短期譲渡所得(所有期間が5年以下の場合):所得税30% 住民税9%
※所有期間は不動産を売った年の1月1日時点を基準に考えます。
このように、不動産の譲渡所得税については、所有期間の長さ次第で、税率が倍も違ってくるのです。
相続不動産の場合の所有期間はどうなる?
所有期間とは、文字通り不動産を所有していた期間のことですが、相続不動産の場合はいつが基準となるのでしょうか。時々、相続不動産の所有期間は、自分が相続して取得した日から起算すると考えている人がいますが、それは大きな間違いです。
相続不動産の所有期間については、亡くなられた被相続人が不動産を取得した日から起算することになります。取得費の購入金額についても、被相続人の購入金額となりますので覚えておきましょう。
相続不動産の取得費についての特例って?
このように、相続不動産の所有期間については、被相続人の所有期間をそのまま引き継ぐことになります。
取得費についても被相続人の購入価額が引き継がれるのですが、相続した際にかかった不動産の登記費用や不動産取得税などについても、取得費に加算できますので覚えておきましょう。
また、売却する土地にかかった相続税に関しても、取得費に加算することが出来、これを「取得費加算の特例」と言います。
確定申告は必要?
相続した不動産を売却し、利益が出た場合は確定申告が必要となります。
つまり
譲渡価額—取得費—譲渡費用—特別控除=譲渡所得
この計算式で、譲渡所得がプラスになった場合には、確定申告をしなければならないということです。
確定申告は、相続した不動産を売却した年の翌年の3月15日までに行い、所得税を納めなければなりません。
その際必要な書類は、主に以下の通りです。
・確定申告書
・分離課税用の申告書
土地の売却による納税は「分離課税」といい、独自に税率を掛けて行うため、分離課税用の申告書が必要
・不動産売却時の売買契約書
不動産を売却した際の売却金額を証明する書類
・不動産購入時の売買契約書
不動産購入時の取得費を証明する書類
・領収書
売却手数料や印紙税などの領収書
・ 譲渡所得の内訳書
売却した不動産の所在地や、名義、価格などの詳細について記載する書類
・登記事項証明書
売却により不動産の所有権が移転したことを証明する書類
特別控除を受けるためには確定申告を!
では、相続した不動産を売却した際に利益が出なかった場合、確定申告をする必要がないのかというと、そうではありません。
確定申告を行わなければ、特別控除や特例を受けることが出来なくなるからです。
利益が出なかった場合の確定申告は原則としては必要ないですが、特別控除や特例を利用することでかなりの節税になるため、確定申告はするべきでしょう。
まとめ
相続不動産を売却する際には、所得税が課税されますが、所得税計算のポイントとなる税率については、相続不動産の所有期間によって大きく異なるため、注意が必要です。
所有期間や取得費については、被相続人のものをそのまま引き継ぎます。計算する際には間違えないよう気を付けましょう。
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