土地・不動産 2019.03.05

生活保護受給者は不動産を相続できるか?

様々な事情から生活保護を受給している人の中にも、身内の死亡によって相続人の立場になる人がいます。
生活保護を受給しているからと言って、相続人となる権利が無くなることにはなりません。しかし、気がかりなのは、少しでも相続財産を取得したら生活保護を受けられなくなるのではないかという点でしょう。
相続するのが不動産などの高額な財産であれば、なおのこと心配になるかもしれません。生活保護受給者は、不動産を相続できるのでしょうか。または、生活保護という権利を守るために相続放棄することは可能なのか、考えていきます。

記事ライター:棚田行政書士

生活保護受給者の義務から考える、不動産の相続

生活保護は、日本国民が誰しも平等に有している権利です。ただし、権利には義務が付随します。生活保護受給者に対し国が定めているおもな義務は、以下の3点です。

1.利用しうる資産、能力その他あらゆるものを生活のために活用すること

2.可能な限り勤労し、健康の保持および増進に努め、収入支出その他生計の状況を適切
に把握するとともに、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めること

3.福祉事務所から、生活の維持向上その他保護の目的達成に必要な指導または指示を受けたときは、これに従うこと

1は、生活保護世帯の全員が、自分に利用できる資産や能力その他のすべてのものを活用して生計の維持に努めるべきであるという意味です。

それでもなお生活に困窮する場合に、その困窮の程度に応じて必要な保護を行うのが生活保護という制度になります。生活保護についての法律「生活保護法」の第4条で、以下のように定められている通りです。

第4条
保護は、生活に困窮する者が、その利用しうる資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件として行われる。

2は、当然ながら働ける人は働き、無駄遣いをしないと共に、できるだけ健康的な生活を維持するよう努めるようにすべきという意味です。

生活保護は本来、生活保護受給者がいずれ自力で生計を立てられるように援助するための制度ですから、3にあるように福祉事務所から生活指導を受ける場合があります。生活保護受給者は、原則としてそれに従わなければなりません。

 

不動産を相続したら、生活保護費を返さなければならないか

では、生活保護受給者が不動産を相続することになった場合、それまで受給していた生活保護費は返さなければならないのでしょうか。生活保護法の規定を確認してみましょう。

第63条
「被保護者が、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず、保護を受けたときは、保護に要する費用を支弁した都道府県又は市町村に対して、すみやかに、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内において、保護の実施機関の定める額を返還しなければならない」

つまり、生活するだけのお金があるのにあえて生活保護を受給していたのなら、その間の生活保護費を返してもらうという意味です。

不動産の相続に直面している人の場合は、お金があるのにあえて隠していたという状態ではないでしょう。

しかし、資産価値が高く換金が容易と思われる不動産を相続する場合は、不動産から得られる経済的利益の度合いに応じて生活保護費の返還を求められる可能性があります。

もしくは、不動産の相続による経済的利益を得たことを機に、生活保護の廃止を承諾することで、生活保護費の返還は容赦される場合もあるでしょう。

ただし、居住中の物件の老朽化や被災など、何らかの理由で早急に転居しなくてはならない生活保護世帯は、相続する不動産が居住用として適当と認められた場合に、不動産の相続と生活保護の受給継続が容認される可能性もあります。

 

生活保護を継続する目的での相続放棄は可能か

生活保護を受給している人が不動産の相続に直面する際、最も気にかけるのは「不動産を相続したら生活保護を打ち切られるのではないか」ということでしょう。

しかし、一口に不動産と言っても色々です。相続する不動産が、需要がほとんどない過疎地の不動産であったり、あちこちに要修繕箇所がある築古物件のような場合もあります。

これでは自分が使用することも売却することも難しい上、売却できたとしてもごく少額になる可能性があります。

このような、お荷物状態の不動産を相続しただけで生活保護が打ち切られてしまえば、生活保護の趣旨である「最低限度の生活」もできなくなるかもしれません。

冒頭で考慮した生活保護受給者の義務から考えると、生活保護の打ち切りを恐れての相続放棄は認められない可能性が高いです。

ただし、資産価値が極めて低い不動産を相続することが保護の補足性に反するかどうかについての判定は、ケースバイケースとなるでしょう。

 

まとめ

生活保護世帯の数だけ、事情があります。生活保護に関係する法は数あれど、それぞれの世帯の事情を鑑みて判断される事案は非常に多いものです。不動産の相続について不安に思った際には、早めにケースワーカーや福祉事務所の生活保護担当窓口へ相談しましょう。

関連記事

土地・不動産

不動産を相続したらローンはどうなる?

ローンと相続の関係について 遺産相続における選択肢としては、次の3つの種類があります。 単純承認 プラスの財産もマイナスの財産も全て相続する 相続放棄 プラスの財産もマイナスの財産も全て放棄する 限定 ...

2019/06/06

土地・不動産

相続不動産を現金化する際、安く買い叩かれないためのポイントとは

相続不動産が安く買い叩かれやすい理由とは 相続不動産を現金化する際には、まず不動産会社と媒介契約を結んだ上で、広く買主を募集してもらうことになります。 ただ、相続不動産は通常の不動産売買とは違い、価格 ...

2019/06/04

土地・不動産

不動産の相続で相続税が減税できる理由とは

相続税の計算方法について 相続税は、相続財産の総額から基礎控除などを控除して税率をかけて算出します。そのため、相続税の金額については、相続財産の金額の多寡によって大きく左右されるのです。 財産がいくら ...

2019/05/30

土地・不動産

家を相続するには!? 相続登記の方法!

相続登記は、できればしておいたほうが無難 相続登記は、いわゆる名義変更です。ですが、しなくても特に問題はないのです。法的な義務はありません。たとえば、その家を売ろうとしたとき、そして、建て替えをするの ...

2017/10/03

土地・不動産

相続登記申請書の書き方について

相続登記申請書の書き方 相続登記自体は自分でも申請することが可能です。その際には相続登記申請書と複数ある必要書類を添えて、不動産の所在地を管轄する法務局に提出する必要があります。 それでは、相続登記申 ...

2017/10/02

土地・不動産

相続登記の費用はいくらかかる?その内訳とは?

相続登記ってそもそも何? 相続に伴って不動産を取得した場合に、その名義を被相続人の名義から相続人の名義に変更する手続きのことを一般的に「相続登記」と呼んでいます。 ただ、正式には相続登記という登記手続 ...

2017/10/02

Copyright© 相続メディア nexy , 2019 AllRights Reserved.