土地・不動産 2019.05.28
相続する際の相続人ごとの相続割合と遺留分の法改正情報について
相続が発生したら、相続人で話し合ってそれぞれの相続分の割合を決めなければなりません。ただ、何の目安もないまま割合を決めることは非常に難しいため、通常は、民法で定められている「法定相続分」を目安にします。
そこで今回は、遺産分割における重要な目安となる法定相続分の割合と、遺留分の法改正情報などについて解説します。
法定相続分の基礎知識
遺産分割については、大前提として遺言書が残されていた場合は、遺言書の内容を最優先に遺産分割をしますので、相続人同士で話し合って遺産分割協議をまとめる必要はありません。
不動産を所有している方の中には、相続発生後のトラブルを警戒して、生前に遺言書を残しているケースがありますので、相続が発生したら、まず遺言書を捜索することをおすすめします。
遺言書が残されていなければ、原則として相続人全員で遺産分割協議を行い、各相続人の相続割合について決めなければなりません。遺産分割については、相続人全員が合意さえすれば、どのような分け方をしても問題はありません。
例えば、子供2名が不動産を相続する場合において、長男が不動産など全ての財産を相続すると遺産分割を行ったとしても、弟がそれで合意していれば法的には何ら問題はないのです。
ただ、実際には不動産が相続財産に含まれるようなケースでは、譲り合いによって円滑に遺産分割協議が進まないケースが多いため、相続割合の目安として、民法で法定相続分という割合を規定しています。
法定相続分の割合は絶対なのか
法定相続分については民法で規定されているため、遺産分割協議において強い説得力がありますが、必ずしも法定相続分に拘束されるわけではありません。納得がいかなければ、法定相続分の割合による遺産分割を反対することもできます。
ただし、遺産分割協議が調停や審判になった場合については、裁判所が法定相続分をベースとして判断することが多いため、和解が難しいと法定相続分の割合に沿って遺産分割することが多いです。
法定相続分の割合について
不動産相続など、遺産分割の場面において重要となる法定相続分の割合については、相続人の組み合わせによって、次のように決められています。
・配偶者1/2 子供1/2
・配偶者2/3 直系尊属1/3
・配偶者3/4 兄弟姉妹1/4
このように、配偶者は常に相続人となり、優先的な割合が割り当てられています。
法定相続分を目安にして遺産分割協議を行うことで、相続人が納得する形で話がまとまりやすくなりますが、不動産が絡む相続については、ぴったり法定相続分の割合通りに分割できないことが多いため、紛争化してしまうことも少なくありません。
法定相続分の割合を侵害されたらどうなる?
法定相続分の割合については、法律で保証されているわけではないため、遺言書によって法定相続分の割合よりも一部の相続人の割合が少なくなるような指定がされていたとしても、原則として従うしかありません。
ただし、法定相続分の中でも遺留分という領域まで侵害された場合については、法律によって保護されるため、取り戻すことができます。
遺留分の割合とは
遺留分とは兄弟姉妹以外に認められている、法律で保護されている相続割合のことです。相続財産に占める遺留分の割合は次のようになります。
直系尊属のみ・・・1/3
上記以外・・・1/2
例えば、配偶者と子供2名が相続人の場合、遺留分の割合は次のようになります。
配偶者1/4 子供1/8 子供1/8
遺留分については、何もしなくても保護されているわけはなく、遺言書などによって侵害された場合に、それを取り戻す権利があるという意味です。侵害された遺留分を取り戻すことを「遺留分減殺請求」と言います。
遺留分減殺請求のやり方
不動産相続などで遺留分を侵害された場合は、侵害されたことを知った時から1年以内に遺留分減殺請求をする必要があります。
遺留分減殺請求については、内容証明郵便で侵害している相手方に対して送付するのが一般的です。
遺留分減殺請求をすることで、生前贈与などでされた偏った贈与などについても取り戻すことができますので、非常に重要な権利であると言えます。
遺留分減殺請求の問題点と法改正
遺留分減殺請求については、返還の対象となるのは原則として遺留分の侵害をした財産そのもの、つまり不動産などの現物を意味しているため、遺留分減殺請求を受けた側は、侵害の対象となった現物を返還しなければなりませんでした。
不動産相続などで遺留分減殺請求が起こると、単独所有できるはずが共有になってしまうなどの問題点があったのです。
そこで、法改正によって、上記原則の見直しが行われました。
遺留分侵害額請求に改正
これまで現物による返還が原則でしたが、法改正によって遺留分については金銭による支払いのみを請求できることに変更となりました。
※名称についても、遺留分減殺請求から「遺留分侵害額請求」に変更となりました。
金銭での返還ができることになったので、不動産の共有といった複雑な権利関係を回避できるようになりますが、返還できるだけの金銭もある程度準備しておかなければならない点には注意が必要です。
侵害額を金銭で返還できない場合は、家庭裁判所に請求することで一定期間猶予を受けられます。
まとめ
相続については法定相続分の割合を目安として協議を行いますが、相続人全員の合意が取れていれば、別の分け方もできます。
また、遺言書で遺留分を侵害された場合は、遺留分減殺請求によって侵害された割合を取り戻すことが可能です。遺留分減殺請求は法改正によって「遺留分侵害額請求」に変わりますが、施行日についてはまだ確定していないため、相続が発生した際には必ず施行日を確認しましょう。
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