相続人・遺留分 2017.11.27

成年後見人が相続手続きに関与する場面とは?

認知症などにより判断能力が十分でない人には、成年後見人がついて相続の財産管理を行う制度があります。相続が起こったときにも、成年後見人が相続手続きに関与する場面もあり得ます。ここでは、成年後見人が相続手続きにどう関わってくるのかについて説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

成年後見の基礎知識

成年後見制度とは

成年後見制度は、認知症などで物事を判断する能力が十分ではない人に、成年後見人と呼ばれる援助者をつけて支援する制度です。成年後見人は、認知症などの本人(成年被後見人)のために、相続などの財産管理や身上監護を行います。成年後見人がついた場合には、契約などの重要な手続きは、成年後見人が行うことになります。

法定後見と任意後見

成年後見制度には、法定後見と任意後見の2種類があります。法定後見は、親族などの申立てにより、家庭裁判所が後見人を選任するものです。一方、任意後見は、本人が後見人になってもらう人をあらかじめ選んで任意後見契約を結んでおくものになります。

 

成年後見人が相続手続きを行うことがある

成年後見人が必要となる相続手続き

誰かが亡くなったとき、認知症の人が相続人になることがあります。相続手続きにおいては判断能力が必要とされる場面がありますが、認知症の人は判断能力を欠いているため、相続手続きができないことがあります。こうした場面では、成年後見人が代わりに相続手続きを行うことになります。

成年後見人が必要となる相続手続きには、以下のようなものがあります。

(1) 遺産分割協議

亡くなった人が遺言を残していない場合、相続人全員で遺産分割協議をして相続財産を分ける必要があります。しかし、認知症の人は遺産分割協議に参加して自分の権利を行使することができません。

認知症の人が遺産分割協議で自分の権利を行使するためには、成年後見人が必要になります。認知症の人を除いて行った遺産分割協議は無効ですから、相続人の中に認知症の人がいるケースでは、成年後見人を選任しなければ遺産分割協議ができないことになります。

(2) 相続放棄

亡くなった人が多額の借金を残しているようなケースでは、相続人は相続放棄をした方がよいことがあります。しかし、認知症の人は自分で相続放棄をすることができませんから、成年後見人が代理で相続放棄をする必要があります。

なお、相続放棄ができる期間は、通常、相続開始を知ったときから3ヶ月ですが、相続放棄する人が成年被後見人である場合には、後見人が被後見人のために相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月になります。

成年後見人の選任方法

相続手続きにおいて成年後見人が必要な場合、既に成年後見人がついているのでなければ、家庭裁判所に後見人選任の申立てをし、法定後見人を選任してもらう必要があります。

後見人選任の申立ては、本人、配偶者、四親等以内の親族等が、被後見人の住所地を管轄する家庭裁判所に後見開始申立書と必要書類を提出して行います。申立ての際には、申立手数料800円、登記手数料2600円、郵便切手代(4000円程度)のほか、鑑定費用5~10万円程度が必要になることがあります。

なお、後見開始申立書には親族等を成年後見人候補者として記載することができますが、家庭裁判所の判断で弁護士・司法書士等が後見人に選任されることもあります。

後見監督人がつくケースもある

後見監督人は、成年後見人が任務を怠ったり不正行為を行ったりしないよう監督する役割を果たします。家庭裁判所は、必要があると認めるときは、後見人等の請求または職権によって、後見監督人を選任します。

 

成年後見人と被後見人の利益が相反する相続手続き

利益相反に該当するケース

成年後見人には親族が就任することも多いですから、親族の誰かが亡くなったとき、成年後見人と被後見人の両方が相続人の立場になることもしばしばあります。この場合には、成年後見人と被後見人の利益が相反することになりますから、成年後見人は遺産分割協議において被後見人を代理することができません。

また、成年後見人と被後見人の両方が相続人となるケースで、被後見人のみが相続放棄をする場合にも、これによって成年後見人が利益を得ると考えられるため、利益相反に該当するものとされています。

利益相反に該当する場合にはどうなる?

成年後見人と被後見人が利益相反となる場合、後見監督人がついていれば後見監督人が被後見人を代理して相続手続きを行うことになります。

後見監督人がついていない場合には、家庭裁判所に特別代理人の選任を申し立て、特別代理人を選任してもらう必要があります。特別代理人が選任された場合には、特別代理人が被後見人を代理して相続手続きを行うことになります。

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