相続人・遺留分 2017.12.10
一部の相続人に認められている遺留分減殺請求権って何?
遺産相続は、通常であれば法定相続分を基準として遺産分割をします。また、相続人同士で合意すれば、法定相続分とは違う分け方をしても何ら問題はありません。
ただ、遺言書が残されている場合については、原則としてその内容に従って遺産分割をしていくことになります。この際、法定相続分よりも多くもらえる人と、法定相続分よりも減ってしまう人が出てきてトラブルになることがあります。
そこで今回は、遺言書の内容に納得ができない場合に行使できる遺留分減殺請求権について解説します。
遺留分とは何か
遺留分とは、一定範囲の相続人に認められている、遺言書でも侵害することができない絶対的な相続分のことを言います。
そもそも相続人の相続権は、相続人の生活を保障する意味合いもあるため、万が一全てを侵害されてしまうと、相続人の生活が成り立たない場合があります。そこで法律では、一定の相続人については、生活を保障するために相続分の一部を遺留分として保護しているのです。
なお、一定範囲の相続人とは、兄弟姉妹以外の相続人を指します。なお、元の相続人の代襲相続人(子が死亡している場合の孫など)についても遺留分があります。
遺留分の割合は以下の通りです。
・相続人が直系尊属のみの場合:相続財産の3分の1
・相続人が直系尊属のみの場合以外:相続財産の2分の1
上記の割合を遺言書の内容によって侵害された場合は、その侵害された相続人が遺留分減殺請求によって遺留分を減殺、つまり取り戻すことができるのです。
なお、遺留分減殺は当然に取り戻せるわけではなく、あくまで相続人が遺留分減殺請求権を行使してはじめて減殺することができます。よって、遺言書が遺留分を侵害してきたとしても、遺留分減殺請求をしなければ、侵害されたまま相続が確定してしまうため、注意が必要です。
遺留分減殺請求権の時効、期限について
遺留分減殺請求権には期間が決められています。遺留分がある相続人のことを遺留分権利者といいますが、遺留分権利者が「相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間」と期間が決められています。
万が一これを過ぎても遺留分減殺請求をしない場合は、遺留分減殺請求権が時効によって消滅してしまいます。又、相続の時から10年を過ぎた場合も同じく遺留分減殺請求権は消滅します。
このように遺留分減殺請求権は、遺留分権利者の生活を保護する上で非常に重要な権利ですが、権利を行使せずに放置していると、減殺できる遺留分を失うことになりますので十分注意しましょう。
遺留分減殺請求のやり方について
遺留分減殺請求のやり方は、法律で明確には決められていません。よって、遺留分を侵害している相手方に対して、遺留分減殺の意思を通知することによって行使します。
極端に言えば、口頭で「遺留分減殺請求します」と伝えても良いのですが、それでは万が一争いになった際に、いつの段階で遺留分減殺請求を行使したのか証拠が残らず、最悪の場合時効を主張される恐れもあります。
そのため、遺留分減殺請求権を行使する場合は、必ず内容証明郵便を利用して遺留分減殺請求権を行使した日付を明確に証拠として残すことが重要です。その後、もしも相手が遺留分減殺請求に従わない場合は、裁判所を通じて遺留分減殺調停や訴訟によって解決することになります。
遺留分減殺請求を弁護士に依頼するメリット
遺留分減殺請求は、相続人自らが行使することもできますが、最終的な解決まで考えると弁護士に相談する方が良いでしょう。法律上は遺留分減殺請求をすれば、遺留分を取り戻すことができますが、実際はそう簡単にいかないこともあります。
例えば、裁判で勝訴したとしても、相手方がこれに従わなければ、民事執行によって強制的に回収する手続きを取らなければなりません。
また、遺留分減殺の対象となる遺贈などが複数存在している場合については、減殺する順番について争いが発生することがあります。減殺する順番は決められていますが、順番自体を遺言で指定されている場合などもあり、一筋縄ではいかないことがあります。
遺留分減殺請求権を行使する場面というのは、十中八九、相続人同士もしくは受遺者ともめている状況のため、当事者同士のやりとりでは解決できない可能性が高いです。よって、遺留分減殺請求をする際には、一度弁護士に相談してみると良いでしょう。
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