遺産相続・遺産分割 2018.01.27

相続財産管理人の役割と権限

相続財産管理人とは、その名のとおり相続財産を管理する人です。しかし、相続の際には必ず相続財産管理人が関与するわけではなく、必要なケースでのみ選任されます。ここでは、相続財産管理人はどんな場合に選任されるのかという基礎知識や、相続財産管理人の役割・権限等を説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

相続財産管理人の基礎知識

・相続財産管理人は相続人がいないケースで必要になる

亡くなった人(被相続人)に相続人がいる場合、相続財産は相続人が管理することになります。一方、相続人がいないケースでは、相続財産を管理する人がいません。相続人がいないけれど、相続財産を管理する必要がある場合には、相続財産管理人を選任してもらうことができます。

・相続財産管理人は家庭裁判所によって選任される

相続財産管理人が必要な場合、利害関係人が家庭裁判所に相続財産管理人選任を申し立てると、家庭裁判所が相続財産管理人を選任します。

相続財産管理人になるのに特別な資格は必要なく、申立ての際に候補者を記載することもできます。候補者がいない場合、あるいは候補者がいても裁判所が他の人を選任した方がよいと判断した場合には、第三者である専門家(主に弁護士)が相続財産管理人に選任されます。

・相続財産管理人の選任申立てができるケースとは?

相続財産管理人が選任されるのは、条文上は「相続人のあることが明らかでないとき」となっていますが、単に相続人の有無が不明というだけで選任申立てができるわけではありません。戸籍謄本等を調べ、戸籍上相続人がいないことが明らかである必要があります。

なお、最初から相続人がいない場合のほか、相続人全員が相続放棄をして相続人がいなくなった場合にも、相続財産管理人の選任申立てができます。

・相続財産管理人は必ず選任されるわけではない

相続財産管理人は相続財産を管理するために選任されますから、相続財産がない場合には選任してもらう必要はありません。また、相続財産がある場合でも、申立てする人がいなければ、相続財産管理人は選任されないことになります。相続人不存在なら自動的に相続財産管理人が選任されるわけではありません。

・相続財産管理人が選任されるのは主に特別縁故者がいるケース

特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた人や被相続人の療養看護に努めた人です。相続人不存在の場合、家庭裁判所で特別縁故者と認められた人は、相続財産を分与してもらうことができます。

特別縁故者として相続財産の分与請求をするには、手続き上、相続財産管理人の選任が必要になります。そのため、相続財産管理人の選任申立てを行うのは、特別縁故者が多くなっています。

 

相続財産管理人の役割

相続財産管理人が選任されると、家庭裁判所により相続財産管理人選任の公告が行われます。そして、相続財産管理人は次のような職務を行います。

1.相続財産の調管理査

相続財産管理人は、相続財産の内容を調査し、財産目録を作成します。不動産については、相続財産法人名義に変更する登記を行います。相続財産管理人は、必要があれば家庭裁判所の許可を得て、不動産や株を売却して金銭に換えることもします。

2.相続債権者・受遺者に対する請求申出の公告

相続財産管理人は、被相続人の債権者や被相続人から遺贈を受けた人がいないかどうかを確認するための公告を行います。

3.相続債権者・受遺者に対する支払い

相続財産管理人は、2の請求申出の公告期間満了後、届出をした債権者や受遺者に支払いを行います。

4.相続人捜索の公告の請求

相続財産管理人は、家庭裁判所に相続人捜索の公告の請求を行います。これを受けて家庭裁判所は官報公告を行い、期間中相続人からの届出がなければ相続人不存在が確定します。

5.特別縁故者への相続財産分与

特別縁故者がいる場合、相続財産管理人は相続財産を分与する手続きを行います。

6.残余財産を国庫に帰属させる

相続財産管理人が報酬を受け取った後、残余財産があれば、相続財産管理人はこれを国庫に帰属させる手続きをします。

 

相続財産管理人の権限

・相続財産管理人が自らの判断でできる行為

相続財産管理人は、相続財産の保存行為(相続財産の現状を維持する行為)や管理行為(物や権利の性質を変えない範囲で利用・改良する行為)については、自らの判断で行うことができます。

たとえば、不動産の相続登記、預貯金の払い戻し、預貯金口座の解約、賃貸借契約の解除、既に存在している債務の履行などについては、家庭裁判所の許可不要で相続財産管理人が行うことができます。

・家庭裁判所の許可が必要な行為

相続財産管理人が、相続財産の処分行為を行うには、家庭裁判所に「権限外行為許可の申立て」をして許可を受ける必要があります。

たとえば、不動産の売却、家電・家具の処分、定期預金の満期前解約、期限未到来の債務の弁済などには家庭裁判所の許可が必要です。

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