遺産相続・遺産分割 2020.12.28

預貯金は遺産分割の対象?

遺産の中に預貯金が含まれている場合には、遺産分割で分配することができます。
ただし、法定相続人であっても、遺産分割において預貯金を勝手に引き出すことはできません。必ず所定の手続きに則って分ける必要があるのです。
ここでは、遺産に預貯金が含まれる場合の分け方や引き出し方等について説明します。

記事ライター:棚田行政書士

預貯金を分ける前には遺産分割協議が必要

もともと遺産分割における預貯金は、法定相続分にしたがって分割されるものとされてきました。このため、それぞれの相続人が自らの相続分に基づいて、金融機関に対し遺産分割による預貯金の払い戻しが可能だと考えていたのです。

しかし、最高裁判所が平成28年に明らかにした見方では、遺産分割で預貯金の相続割合を決める際、法定相続人全員の合意があって初めて払い戻しを受けられるとのことでした。つまり、遺産分割の預貯金分配を行うためには、次のような手順が必要になってくるのです。

1:遺言書があるかどうかを確認する

遺言書があれば、内容にしたがって遺産を分け合うので、遺産分割協議を行う必要はありません。このため、相続が開始したら、隅々まで探して遺言書の有無を確認することが大切です。

2:被相続人の全遺産を調べて明らかにする

金融機関やタンス預金はもちろん、法務局や市町村で照会を行い、家族・親族が知らなかった財産がないか確認しましょう。ポイントは、プラスの財産だけでなく負債や滞納未払いなどのマイナスの財産についても漏れなく確認することです。

3:法定相続人が誰になるか確定させる

被相続人が生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍謄本等を取得し、誰が法定相続人となるのか確定させる必要があります。

 

預貯金の分け方

遺言がなければ、遺産分割により預貯金を分割することになります。

遺産分割協議を通して全ての相続人が同意すれば、法定相続分にとらわれることなく、任意の割合で預貯金を遺産分割することもできるのです。

また、遺言によって不動産と預貯金の全てを1人が相続した場合、預貯金を受け継いだことにより現金が手元に残るので、他の相続人に対する代償金等を支払うことも可能になります。そうすれば不公平もトラブルも生じにくい状況を作ることができるでしょう。

 

預貯金の引き出し方法

被相続人が亡くなると、遺族は金融機関に対してその旨を通知することになります。

通知を受けた金融機関は、不正利用防止の目的から被相続人の口座を凍結するでしょう。そうなると、遺産分割協議が完了し指定の手続きが終わるまで、自由に預金を引き出せなくなります。

特に遺言書がない場合、全ての相続人は集合して遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を作成する必要があります。協議書には、どの財産を誰がどういう割合で相続するか明記し、全相続人が署名捺印しなければなりません。

遺産分割協議書があれば、関係者全員の合意があるものとして、ようやく遺産分割で預貯金を引き出すことが可能になるのです。なお、預貯金の引出しに必要な書類は以下の通りとなります。

1:金融機関指定の相続関係届出書

預貯金を相続する本人の自筆署名と実印の押印が求められます。

2:遺産分割協議書

遺産分割で預貯金を誰が相続するか明記してあることが不可欠です。同時に、協議書には法定相続人全員の署名に加えそれぞれの実印を押印しなければなりません。

3:故人の戸籍謄本

特に指定がない限り、基本的には被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍謄本を取り寄せ提出します。

4:法定相続人全員の戸籍謄本

被相続人の戸籍謄本により全ての法定相続人を確認できる場合は、特に必要ではありません。

5:全ての法定相続人の印鑑証明書

発行日から6か月以内の、法定相続人全員分の印鑑証明書が必要になります。

6:預貯金を相続する者の実印

預貯金の払い戻しにおいて実印が必要になることもあります。

 

法改正で単独での引き出しも可能に

このように手続きが面倒なことから、2019年の民法改正によって遺産分割前でも一定額までは各相続人が単独で払い戻しを受けられるようになりました。

例えば、相続人2名で相続開始時の預金が600万円のケースの場合、各相続人がたんどくで払い戻しを受けられる金額は100万円が限度となります。

また、家庭裁判所に申し立てをすることで、家庭裁判所が仮取得を認めた金額を限度として仮払いを受けることも可能です。

詳しくは相続に強い弁護士や税理士に相談しましょう。

 

まとめ

遺産分割で預貯金を得たい場合は、遺産分割協議を行う前に、まずは遺言書の有無や法定相続人の調査、全ての財産の調査を行わなければなりません。また、遺産分割で預貯金を分け合う場合は、遺産分割協議書にどう明記すべきか知っておく必要があります。同時に、金融機関ではどのような手続きを行うことになるのか、予め把握しておくことも大切です。

これらの作業は煩雑かつ時間がかかるものであり、同時に相続人の間でアンフェアな事態が起こらないよう配慮する必要もあります。できるだけ問題を最小限に留めるためにも、早い段階で弁護士等の力を借りることを検討しておきましょう。

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