相続放棄 2018.03.04
相続放棄がもたらす効果
相続放棄は、遺産相続において相続人が下す決定のひとつです。相続人は遺産を強制的に相続させられるのではなく、相続するかどうかを自分で決定することができます。遺産の状況によっては、相続放棄することを決定する人もいます。
相続放棄の効果とは何か、注意するべき効果はあるか、また効果のない相続放棄はあるのかについて解説していきます。
相続放棄によってもたらされる効果
遺産相続では、被相続人の預貯金や不動産など価値ある財産だけでなく、借金などの債務も同時に相続することになります。相続する財産は選べないため、もし価値のある財産よりも債務の方が多ければ、相続人は損しかしないことになります。
そのような事態を防ぐために、被相続人のすべての財産に関する相続権を放棄することが選択できるようになっています。
これが、相続放棄です。
相続人にとってメリットとなる相続放棄の効果は、被相続人の債務を免れられることです。価値のある財産もすべて放棄しなければなりませんが、その代わり、被相続人に債務がどれほどあったとしても相続人がそれを負担する必要はなくなります。
相続放棄のもたらす効果には、注意すべき点も
相続放棄は、様々な効果をもたらします。しかしその効果をよく理解していないと、思わぬ効果によって相続放棄したことを後悔してしまうかもしれません。そのため相続放棄は、安易に決定すべきではありません。
では、債務を免れること以外の相続放棄の効果をご紹介しましょう。
代襲相続は起こらない
代襲相続とは、親など本来相続人の立場にいる人の代わりに、その子どもなどが相続権を得て相続人となることです。多くの場合、本来の相続人が死亡しているか、相続欠格・廃除などをされた場合に起こります。
代襲相続は、本来の相続人が相続放棄した場合には起こりません。相続人が相続放棄すると、その人は初めから相続人ではなかったものとされるため、代襲相続も起こらないのです。
そのため、遺産を自分の子どもに相続させたいなどの理由で相続放棄をしても、代襲相続という効果は生まれませんので、注意が必要です。
撤回ができない
相続放棄の決定は原則として、撤回(取り消す)ことができません。そのため、相続放棄してから価値のある遺産がたくさん見つかったとしても、少しも相続することはできません。
過去の判例でも、相続放棄した後に遺産が見つかったので取り消したいという訴えは認めていないようです。
ただし相続放棄に至った理由が、他の相続人などから脅迫されたり虚偽を告げられたりするなどして騙されたためである場合には、相続放棄の取り消しを認めている判例もあるようです。
同順位の他の相続人の相続分が増える
自分の兄弟など、同順位の他の相続人の相続分を増やせるという効果を期待して相続放棄を行うケースも多く見られます。
しかしこの効果は、遺産分割協議で協議することによっても実現可能です。相続放棄の効果はとにかく強力ですから、このような効果だけを求めているなら遺産分割協議で解決する方が良いでしょう。
同順位に相続人がいないなら、次順位の人が相続人となる
自分が相続放棄することで同順位の相続人がいなくなる場合は、次順位の人が新たに相続人となるという効果が生まれます。
この場合は必ず、相続放棄したことを次順位の相続人に報告しましょう。先順位の相続人が相続放棄しても、次順位の相続人に通知などが行くことはありません。
そのため、知らない間に相続人になってしまい、相続放棄した方が良い状況なのにその決定が下せないまま時間だけが過ぎてしまうことになります。
効果のない「相続放棄」に注意
相続放棄は、相続放棄したい相続人が自ら家庭裁判所へ申立てをし、受理されることで初めて効果を持ちます。ですが、相続放棄を間違った方法で行っているケースも見られます。
最も多い誤解は、遺産分割協議で「相続放棄します」と意思表示するというものです。
遺産分割協議は、相続人同士の間でのみ行われる内輪の話し合いに過ぎません。そのため、そこで取り決められる事柄は内部的にしか効果はなく、被相続人の債権者から見てもその人はいまだ相続人であることに変わりはありません。
この場合、債務を免れるという効果は生まれず、債権者からの取り立ても無視することはできません。効果のない相続放棄は何の意味も持ちません。自分で申立てをすることで、本当に効果のある相続放棄をしましょう。
まとめ
効果のある相続放棄は、家庭裁判所へ申立てを行うことで可能となります。相続放棄は自分だけでなく、他の相続人にも大きく影響を与える決定です。相続放棄の持つ効果すべてをよく考慮した上で、慎重に検討しましょう。
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