相続放棄 2018.04.05
相続放棄で債務から免れられる?
被相続人が遺した財産の多くが債務だったというケースは珍しくありません。また、相続財産の調査をしても財産や債務の全貌が分からないという場合もあります。
相続するということは、被相続人の財産や権利をすべて継承することですから、相続人にとっては多額の債務を背負わされるかもしれないというリスクをはらんだものです。
明らかに債務の方が多い場合や多額の債務があると思われる場合には、相続放棄することで債務から免れるという選択ができます。
相続放棄で債務を免れることは可能
被相続人が多額の債務を遺して亡くなった場合、相続人がその債務を受け継がないようにする手段として、相続放棄があります。
相続放棄をした人は相続に関する一切の権利を放棄すると同時に、債務を弁済する義務も放棄することになります。つまり、相続放棄をすることで、被相続人の債務から免れることが可能です。
速やかに正式な相続放棄をすることが必要
確実に債務を免れるには、正しい手順で相続放棄の手続きを行うことが必要です。相続放棄という言葉は、一般社会で誤認されている面もあり、「相続は放棄するから」と一言言えば相続放棄できる、と認識されていることがあります。
これは相続放棄にはならない単なる意思表示ですので、債務の弁済責任を免れることはできません。本当の相続放棄は、家庭裁判所で行う正式な法的手続きです。
そのため、相続放棄したいと思っている人が自分で家庭裁判所へ赴き、「相続放棄申述書」や、その他の必要書類を提出して法的な申立てを行わなければならないのです。
相続放棄の決定は、自分が遺産相続の相続人であることを認識した時から3カ月以内に下さなければなりません。3カ月という期間は「熟慮期間」と呼ばれており、相続人が相続をするかどうかを検討する時間として与えられているものです。
もし3カ月以内に相続放棄の決定ができない状況なら、家庭裁判所へ熟慮期間伸長の申立てを行うことで、さらに3カ月の熟慮期間をもらうことができます。
遺産相続が始まってからの3カ月はあっという間に過ぎます。債務を免れるには、相続放棄の決定とその手続きを速やかに行わなければなりません。
相続放棄以外の方法で債務を免れることもできる
被相続人の債務を免れるための別の方法には、限定承認というものもあります。相続できるプラスの財産の範囲内に限定して、債務を支払うというものです。
プラスの財産より債務の方が多いとしても、相続人が自分の財産を充てて弁済する必要はありません。債務を支払うために自腹を切る必要がないという意味で、債務を免れることができます。
限定承認の場合は相続に関する権利を放棄することにはならず、相続人という立場もそのまま維持されるため、債務を弁済してもまだ財産が残っていたり、その後にたくさんの財産が見つかったりすれば、相続人としてそれらを相続できます。
ただし、限定承認をする場合は、相続人全員でしなければならないため、意見が一致しないと使えないという点には注意しましょう。
相続放棄しても免れられないもの
相続放棄をすれば債務からは解放されますが、相続放棄をしても免れられないものもあります。それが、相続財産の管理責任です。
民法第940条「相続の放棄をした者による管理」
相続放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。
相続放棄によって相続権は無くなるのだから、相続財産に対する管理責任も一緒に無くなるはずだという誤解は一般的に広く見られます。
しかし民法ではこのように、相続放棄した人でも次の相続人が相続財産の管理を始められるようになるまでは、自分の財産を扱うかのように相続財産を管理しなければならないとしています。
相続放棄した人が遺産相続における第一順位・第二順位の人であれば、自分が相続放棄することで、次に相続人となる人がいることになります。しかし、その人が相続人として財産を管理できるようになるまでは、自分が責任を持って管理しなければなりません。
もし相続放棄する人が第三順位の人で、次に相続人になる人がいない場合は、代わりに相続財産を管理してくれる人を立てなければなりません。
この場合は、家庭裁判所で「相続財産管理人の選任」申立てを行うことになります。無事に相続財産管理人が選任されるまでは、第三順位の相続人であった人に相続財産の管理責任があります。
まとめ
債務を免れるための正式な相続放棄をするためには、家庭裁判所へ申立てを行うことが必要です。財産も債務も、どれくらいあるのか定かではない場合は、限定承認も検討できます。
相続放棄の申立ては、申し立てる人が被相続人の財産を処分していると認められない場合があります。相続放棄の可能性があるなら、財産の扱いには十分注意しましょう。
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