遺産相続・遺産分割 2018.04.27
未成年の相続人がいる場合の遺産分割の方法
日本の法律では、20歳に満たない人は未成年とされ、法律で様々な行為が制限されます。遺産相続で行われる遺産分割も法律行為の一部のため、未成年の人が単独で遺産分割を行うことはできません。
被相続人の年齢が比較的若い場合は、未成年者が相続人となる可能性が高くなります。そのままでは遺産分割できないため、必要な措置を講じることになります。この記事では、未成年の相続人がいる場合の遺産分割の方法などについて解説します。
未成年の相続人が遺産分割をするには「特別代理人」が必要
遺産分割に加わる相続人の中に未成年がいるなら、特別代理人を選任する必要があります。特別代理人は未成年の相続人のために、遺産分割を代行する役割を負います。
未成年の相続人の特別代理人になれるのは、遺産分割に関して利害関係にない人です。未成年の相続人の親も相続人である場合は、遺産分割に関して、お互いに利益相反の関係となってしまうため、親が特別代理人になることはできません。
未成年の相続人と遺産分割に関して利害関係になく、特別代理人としての責務を誠実に果たす能力を有する人であれば、資格や年齢に関係なく誰でも特別代理人になることができます。
多くの場合は、遺産分割には無関係である祖父母やおじ・おば、または弁護士や司法書士などの専門家が特別代理人となることが多いようです。
親族に特別代理人を依頼する場合は、無報酬で法的な手続きをしてもらったり、協議や裁判の際に出頭してもらったりしなければならないため、依頼する側としては少々気後れするかもしれません。
その点、司法書士や弁護士に特別代理人になってもらうなら、余計な気苦労を感じることなく遺産分割ができるでしょう。
未成年者の特別代理人の選任手続きの流れ
まずは、特別代理人の選任申立てを行います。未成年の相続人の住所地を管轄する家庭裁判所が申立て先です。
申立てができるのは、未成年の相続人の親権者か、遺産分割における利害関係者です。なお、申立てに必要となる基本的な書類は、次のとおりです。
特別代理人の選任申立て書
未成年者および申立人の戸籍謄本
特別代理人候補者の戸籍謄本および住民票
利益相反が分かる資料(遺産分割協議書案など)
提出された書類の内容を家庭裁判所が確認し、特別代理人の候補者に特に問題が見いだされなければ、候補者が特別代理人として選任されます。
家庭裁判所が、特別代理人候補者と未成年の相続人との間に遺産分割において利益相反があると判断した場合には、他の候補者を探す必要があります。
他に適任な人が見つからなければ、司法書士や弁護士などの第三者を特別代理人にすることになります。
未成年者でも、特別代理人が要らないケース
未成年の相続人が遺産分割に関わる場合でも、特別代理人が不要になるケースもあります。代表的なケースを2つご紹介しましょう。
未成年の相続人と親権者が、ともに相続放棄をする場合
遺産分割が始まる前に、未成年の相続人と親権者がともに相続放棄をする場合は、遺産分割に関して未成年の相続人と親権者の利益相反が生じないため、特別代理人の選任は不要です。
親権者が未成年の相続人よりも先に相続放棄している場合も、遺産分割における利益相反はないため、特別代理人は不要となります。
未成年の相続人だけが相続放棄をする場合は、それによって親権者が自分に有利な仕方で遺産分割を進めることが可能になってしまうため、特別代理人の選任が必要となります。
未成年の相続人が、婚姻している場合
未成年の相続人がすでに婚姻している場合は、それによって成年に達しているものとみなされる「成年擬制」の効力が発生するため、遺産分割のために特別代理人を選任する必要はありません。この場合は、自分ひとりで遺産分割に参加できます。
一部の法律行為においては、未成年者の婚姻が解消された場合は成年擬制も解消され、再び未成年扱いされることもあります。
遺産分割においては、未成年の相続人が婚姻を解消した場合であっても引き続き成年擬制の効力は持続するとされているため、一度でも婚姻した未成年の相続人は、特別代理人無しで遺産分割に参加することができます。
まとめ
未成年の相続人が遺産分割を行うためには、特別代理人を選任することが必要です。特別代理人は、未成年の相続人の利益に関して重い責任を担うことになるので、予算が許すなら司法書士や弁護士など法律の専門家に依頼する方が良いでしょう。
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