相続人・遺留分 2018.05.27

相続人だけでなく相続人以外にも財産を譲れる遺贈とは?

自分が亡くなった後の財産の処分方法については、生前に遺言を書いて指定しておくことができます。遺贈とは、遺言を利用して相続人や相続人以外に財産を取得させることです。ここでは、遺贈とは何か、どんなことに注意すべきかについて説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

遺贈の基礎知識

遺言により財産を取得させること

遺贈とは、遺言で遺産の全部または一部を処分することです。遺贈は、相続人に対しても、相続人以外に対しても、どちらでも行うことができます。

遺贈を受ける人は「受遺者」と呼ばれます。民法では、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡した場合には、遺贈は効力が生じない旨も規定されています。

遺言相続は法定相続に優先する

自分が亡くなった後、所有していた財産は法定相続人が法定相続分に応じて取得することになります。しかし、自分の所有していた財産を相続人以外に譲りたいということもあると思います。このような場合には、遺言を書いて遺贈を行うのが有効です。

民法には、遺言相続は法定相続に優先するという原則があります。遺言を作成しておくことで、法定相続どおりに相続が行われるのを防ぐことができます。

遺贈の2つの方法

遺贈には、次の2つの方法があります。

①包括遺贈

遺産の全部または一定割合を与える場合を「包括遺贈」といいます。遺言に書く場合には、「全財産を遺贈する」「遺産の2分の1を遺贈する」などと記載することになります。

②特定遺贈

不動産や預金など、特定の財産を指定して遺贈を行う場合を「特定遺贈」といいます。遺言に書く場合には、「下記不動産をAに遺贈する」「下記預金債権をBに遺贈する」などの記載になります。

 

遺贈をするなら遺留分に配慮

遺留分を侵害しないようにする必要がある

遺言で遺贈を行う場合にも、100%自由にできないことがあります。それは、遺留分を持つ相続人がいるケースがあるからです。

遺留分とは、兄弟姉妹以外の相続人に確保された最低限の相続割合のことです。遺留分を持つ相続人(遺留分権利者)は、自らの遺留分を侵害された場合には、遺留分減殺請求を行って遺留分の取り戻しができるものとされています。

遺留分を侵害する遺贈も無効とは限らない

たとえば、被相続人が全財産を他人に譲る遺言を残している場合、被相続人に配偶者や子がいれば、生活に支障をきたすことがあります。遺贈は、遺留分を侵害しない範囲で行わなければなりません。

ちなみに、遺留分を侵害する遺贈も、直ちに無効になるわけではなく、遺留分権利者が遺留分減殺請求を行わない限りは有効です。そのため、事前に遺留分権利者に遺留分を放棄してもらってから、遺贈を行う方法もあります。

 

遺贈する際のその他の注意事項

相手が相続人か相続人以外かで表現を変える

遺言により財産を処分するときには、財産を譲る相手が相続人であるかどうかで、遺言書に記載する表現を変えた方がよいことがあります。財産を譲る相手が相続人の場合には、「遺贈する」という表現以外に「相続させる」という表現も可能です。

一方、財産を譲る相手が相続人以外の場合には、財産の引き継ぎは相続ではないため、「遺贈する」という表現をしなければなりません。相続人以外に「相続させる」と書くのは、厳密には間違いということになります。

なお、実際には相続人以外に対して「相続させる」と書いた遺言も、「遺贈する」と読み替える扱いをされるのが通常です。このように、遺言を可能な限り有効になるよう解釈することを「遺言の有効解釈」といいます。

「相続させる」と「遺贈する」の違い

相続人に遺言で財産を譲る場合には、「相続させる」と「遺贈する」のどちらも使えますが、どちらを選ぶかで効果に違いが生じることがあります。

「相続させる」と書かれた遺言は、原則として、遺産分割の方法を定めたものとされます。そのため、「相続させる」とされた財産は、遺産分割を経ることなく、相続開始と同時にその相続人のものになります。そして、「相続させる」とされた財産が不動産の場合には、財産を譲り受けた相続人が単独で所有権移転登記申請ができるのです。

一方、「遺贈する」と書かれている場合には、遺言者の遺贈義務を相続人全員が引き継ぐことになります。そのため、「遺贈する」とされた財産が不動産の場合には、受遺者と相続人全員(または遺言執行者)が共同で所有権移転登記の申請を行う必要があります。

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