相続人・遺留分 2018.06.06
遺留分を取り戻すための裁判手続きとは?
相続人には、遺言があっても必ず相続できる取り分である「遺留分」があることをご存じの方は多いと思います。自分の遺留分を侵害するほどの遺産を誰かが取得してしまった場合には、取り戻しを請求することができ、相手が従わない場合には裁判手続きも可能です。ここでは、遺留分を取り戻すための裁判手続きについて説明します。
遺留分を他の人が相続したら取り戻しができる
遺留分とは
遺留分は、兄弟姉妹以外の相続人(配偶者、子、直系尊属)に民法上確保されているもので、最低限相続できる財産の割合になります。ただし、相続が開始したとき、何もしなくても遺留分を相続できるわけではありません。
遺留分を侵害する遺贈や生前贈与が行われていても、遺留分を持っている本人が何も文句を言わなければ、そのままの状態が確定してしまいます。遺留分を取り戻すかどうかは、本人の自由です。遺留分を取り戻して相続したいなら、侵害されたときに取り戻しを請求しなければなりません。
遺留分減殺請求とは
他人が自己の遺留分を取得してしまった際に、取り戻しを請求することを遺留分減殺請求といいます。遺留分減殺請求ができる期間は、相続開始及び遺留分の侵害を知ったときから1年です。相続開始から10年経過したときにも、遺留分減殺請求はできなくなってしまいます。
遺留分減殺請求の方法
遺留分減殺請求は、遺留分権利者から侵害している相手方に対して行います。遺留分減殺請求の方式は特に定められておらず、当事者同士が任意に交渉して返還を受けても問題はありません。
交渉で返還を受けるのが困難な場合には、裁判手続きを利用します。遺留分減殺請求で裁判手続きを利用する場合には、遺留分減殺請求調停から行う必要があります。調停が不成立になった場合には、審判には移行しないため、裁判(遺留分減殺請求訴訟)を起こす必要があります。
まずは家庭裁判所に調停を申し立てる
裁判所を利用するなら調停から
裁判所に申し立てて家事事件の解決を図る場合、裁判(訴訟)よりも前に調停を申し立てなければならないという「調停前置主義」の原則があります。
すべての家事事件が調停前置主義の対象となるわけではありませんが、遺留分減殺請求事件は調停前置主義が適用されるため、まずは家庭裁判所に遺留分減殺請求調停(遺留分減殺による物件返還請求調停)を申し立てる必要があります。
裁判所への調停申立方法
遺留分減殺請求調停は、遺留分権利者(または遺留分権利者の相続人など)が申立人になります。申立先は、遺留分を侵害している相手方の住所地を管轄する家庭裁判所または当事者が合意で定める家庭裁判所になります。
申立の際には、申立書のほか、相続関係のわかる戸籍謄本、遺言書、相続財産が不動産である場合には不動産の登記事項証明書などを裁判所に提出します。収入印紙1,200円分と裁判所からの連絡用の郵便切手も提出します。
調停が成立したら
遺留分減殺請求調停を行い、遺留分の返還について当事者間で合意に至ることができれば、調停成立となり、家庭裁判所によって調停調書が作成されます。調停調書には裁判における確定判決と同様の効力があるため、合意事項が守られなかった場合には、強制執行も可能になります。
調停不成立になったら裁判を起こす
遺留分減殺請求調停が不成立になったら
遺留分減殺請求調停は、家庭裁判所における話し合いになりますから、決裂することもあります。家事事件では、調停不成立になった場合、家事審判に移行する事件とそうでない事件があります。家事審判とは、家庭裁判所が行う裁判で、裁判官があらゆる資料にもとづき判断する手続きになります。
遺産分割請求事件は家事審判の対象ではないため、調停不成立になっても審判には移行しません。調停不成立になった場合、裁判所で問題を解決するには、裁判を起こす必要があります。
遺留分減殺請求の裁判を起こす裁判所
遺留分減殺請求の裁判は、家庭裁判所ではなく、被相続人の最後の住所地を管轄する地方裁判所または簡易裁判所に提起します。請求金額が140万円を超える場合には地方裁判所に、140円以下の場合には簡易裁判所に裁判を起こします。
遺留分減殺請求の裁判の流れ
裁判では両方の当事者が主張や立証を行い、裁判官が最終的な判断として判決を行います。裁判でも必ず判決まで進むとは限らず、裁判官から和解が提案され、和解で終結することもあります。第一審の判決に不服があれば、控訴や上告でさらに上の裁判所の判断を仰ぐことになります。
裁判が終わった後、相手方が裁判所で決まったことに従わない場合には、判決や和解調書にもとづいて強制執行することも可能になります。
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