遺言 2017.10.02
遺言の効力は絶対なのか?法定相続や遺留分との関係を解説!
「終活」という言葉が流行ったことからも分かるとおり、相続は元気なうちから積極的に考えたい問題です。中でも「財産が多くて遺族が揉めそう」という方は、予め遺言書を用意しておけば、死後の相続もスムーズです。
一方、遺族の中には、相続を見越して今後のライフプランを考えている方も多いです。しかし、実際に遺言書を見てみると、自分には1円も財産が遺されないケースもあり、偏った遺言はかえって争いの原因になります。
今回は、遺言と法定相続の関係について説明した上で、遺言の内容に左右されず相続を受けられる「遺留分」について解説していきます。
遺言と法定相続の関係
遺言とは、被相続人の最終的な意思表示です。すなわち、死後の財産を自らの意思で相続・処分させるためには、生きているうちに遺言書を用意しておく必要があります。
一方、法定相続とは民法で定められた遺産の分割方法です。法定相続分が定められている趣旨は、遺族の生活を保障することや、遺言が無いために遺産相続が混乱することを避けることにあります。
基本的な法定相続分は、次のとおりです。
法定相続人 法定相続分
配偶者と子 配偶者1/2・子1/2(人数で分ける)
配偶者と父母 配偶者2/3・父母1/3(人数で分ける)
配偶者と兄弟姉妹 配偶者3/4・兄弟姉妹1/4(人数で分ける)
また、法定相続人には順位があります。すなわち、配偶者は同順位と呼ばれて常に相続人になりますが、子は第一順位・父母は第二順位・兄弟姉妹は第三順位となり、遺産相続においては、より上の順位の者が優先されます。
したがって、妻と子が相続人になっている場合、父母や兄弟姉妹に相続権はありません。
とはいえ、遺言の効力は法定相続に優先します。民法の考え方からすると、自分の財産をどのように処分するのも自由だからです。したがって、遺産相続について特別な希望がある人は、遺言書の準備が必須です。
遺言で相続人以外に財産を残すことも可能
一方、いくら遺言の効力が強いとはいっても「すべての財産をボランティア団体に寄付する」「生前お世話になった友人に全額を相続させる」というような、法定相続人以外の人に全財産を遺す遺言はできるでしょうか。
この点、誰に財産を譲るのも被相続人の自由です。したがって、法定相続人以外の者に全財産を遺贈するという遺言も有効です。なお、「友人に1000万円を遺贈する」というように、財産を明示して遺贈することも可能です。
遺言書の内容にかかわらず相続できる「遺留分」とは
とはいえ、配偶者や子どもなど「法定相続人の生活を保障する」という遺産相続のもう1つの側面を、完全に無視することもできません。したがって、民法では、相続財産のうち一定割合が「遺留分」として保障されています。
遺留分が保障されているのは、配偶者・子・直系尊属のみです。具体的な遺留分の割合は、以下のとおりです。
相続人 相続財産に占める遺留分の割合(遺留分率)
配偶者のみ 1/2
配偶者と子 1/2
配偶者と直系尊属 1/2
直系尊属のみ 1/3
上記の遺留分率に法定相続分を乗じた額が遺留分になります。例えば、相続財産1億円、法定相続人が妻1人・子2人の場合、遺留分の金額は以下のように計算されます。
・妻の遺留分:1億円×1/2(遺留分率)×1/2(法定相続分)=2500万円
・子1人あたりの遺留分:1億円×1/2(遺留分率)×1/4(法定相続分)=1250万円
このように、遺言で遺産を遺してもらえなかった法定相続人が、遺留分を取り戻す手続を、遺留分減殺請求と言います。遺留分減殺請求権を行使することで、財産を全く相続できないという事態は避けられます。
上記の事例では、遺言の内容にかかわらず、妻と子には法定相続分の半分が遺留分として認められることになりますね。
さらに、遺留分減殺請求権は遺言によって奪うことはできません。したがって、遺留分は遺言に優先すると言えます。もし遺留分減殺請求権を行使されてしまった場合は、一定の範囲で遺言の効力が制限されます。
ただし、被相続人を殺そうとしたり、生前虐待したりしていた者は、欠格事由・廃除事由に該当します。この場合、遺留分も認められません。
まとめ
今回は、遺言の効力は法定相続に優先するものの、遺族の遺留分減殺請求権までは奪えないことが分かりました。
とはいえ、不動産を所有しており「相続によって不動産が分割されることを防ぎたい」といった事情がある方もいます。その場合、不動産を1人に相続させて、他の相続人には現金や有価証券を相続させるという方法も可能です。
相続人の遺留分を害さずに、希望どおりの相続を実現することは可能です。一度、相続に詳しい弁護士などに相談してみてください。
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