遺言 2020.05.13

遺言執行者に資格は必要なのか、なれる人と権限を徹底解説

法改正があったこともあり、再び相続対策として遺言書が注目されています。
遺言書を書く際には、法的な要件に注意する必要がありますが、その中の1つに「遺言執行者」という事項があることをご存じでしょうか。

そこで今回は、遺言書を書く際に重要な要素となる遺言執行者について詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺言執行者とは?

「遺言執行者がなにかわからない」「聞いたことがない」という方も多いのではないでしょうか。

遺言執行者とは、本人の死後に遺言書の内容に従って遺産分割の手続きをする人のことをいいます。

一般的には遺言書作成や保管を行っていた弁護士や司法書士、行政書士などの資格者がやることが多いですが、必ずしも資格者でなければできないというわけではありません。

法的には、遺言執行者になるために特別な資格は必要ありません。

遺言執行者はどうやって決める?

遺言執行者を決めるのは、遺言書を書いている本人です。つまり、自分の書いた遺言書の内容を実現するために、手続きをしてくれる人を遺言書に書いておくということです。

遺言執行者は絶対に決めなければならないわけではないので、遺言執行者について指定をしていない遺言書を作成したとしても法的には有効となります。

ただし、次の事項について遺言書に書く場合については、遺言執行者を指定していないと実現できませんので注意が必要です。

・遺言認知

自分に嫡出でない子がいる場合に、遺言書で認知することを遺言認知と言います。生前に認知すればいい話ですが、家族がいる手前どうしてもできないという方が遺言書で認知する場合は、遺言書で認知することができます。このようなケースでは、必ず遺言執行者を定める必要があります。

・相続廃除

生前に推定相続人から虐待など一定の行為を受けたり、その他許しがたい非行を受けたりした場合に、家庭裁判所に申し立てをして相続人から除外してもらうことが可能です。これを相続廃除といいます。

遺言書で相続廃除することも可能ですが、遺言執行者の指定が必要です。

また、反対に廃除の取り消しをする場合も同様となります。

これらのケースに該当する場合は、必ず遺言執行者を遺言書に記載して権限をあたえておく必要があります。

遺言執行者のやるべきこととは?

遺言者が亡くなった時点から相続が開始します。相続が開始されると、遺言書が開示され、そこに記載された遺言執行者に「あなたが○○さんの遺言執行者に指名されています」と言った連絡が来ます。あるいは、あらかじめ自分が遺言執行者になっていることがわかっている人には、「○○さんが亡くなったので、遺言執行者の業務をお願いします」と言う連絡が来ます。

遺言執行者に指名された人は、承諾するか断るかの返事をしなければなりません。あらかじめ、遺言者との間で自分が遺言執行者になることを承諾している人は、ほとんどの場合、そのまま引き受けることになると思いますが、問題となるのは全く遺言者から聞いていていなかった人です。

どうしても受けられない場合には、断っても構いません。また、その際にも断る理由を言う必要もありません。遺言執行者から断られた場合には、相続人の誰かが全相続人を代表して手続きを行うか、あるいは弁護士などの専門家に依頼することになります。

遺言執行者の業務と流れ

遺言執行者の就任を承諾すると、以下の業務を行うことになります。

① 遺言執行者を承諾した旨を全相続人に通知する。

② 遺言の内容に係る手続きを開始する。

・戸籍等の取得
・相続財産の調査・確定
・相続人の調査・確定
・不動産の名義変更(法務局へ申請)
・各金融機関の解約手続き
・株式、有価証券等の名義変更
・換価手続き

③ 遺言の内容に従って執行していく。

④ 相続人全員に遺言執行が完了した旨を報告する。

以上のような流れになりますが、想像以上に複雑かつ煩雑な作業です。しかも、相続人の数や相続財産が多ければ多いほど、作業には時間と労力を要します。

市区町村役場、法務局、金融機関などの手続きがメインですから、手続きはほとんど平日に行うことになります。特に、名義変更を行う場合、法務局に多数の資料を提出しなければなりませんから、慣れてない人にとっては、かなりの負担です。

なお、遺言執行人が司法書士でない場合には、名義変更の手続きだけを司法書士に依頼することも可能です。また、不動産を現金に換える(換価)ことも、時間がかかりますし、専門的な知識がないと、なかなか上手くいかない可能性があります。

遺言執行者になった人は、わからない分野は専門家に相談し、アドバイスをもらったり、自分では難しいと思えば業務を委託したりして、相続がスムーズに行くように工夫をする必要があります。

 

遺言執行者になれないケース

遺言執行者は基本的に資格者である必要はないので、遺言書を書く人が好きな人を指定することが可能です。ただし、次の2つのいずれかに該当する場合は遺言執行者になることができません。

未成年者

遺言執行という重要な仕事を任されることになるので、未成年の方については遺言執行者になることができません。

ただし、未成年かどうかの判断の基準は遺言書作成時点ではありません。

例えば、長男を遺言執行者に指定したいと思った場合、遺言書を書いている日の年齢が18歳だとしても、自分が死亡した時に20歳になっていれば問題なく遺言執行者になることができます。

この点を踏まえて、遺言執行者を誰にするのか決めることが大切です。

破産者

自己破産した人については、他人の財産を安全に取り扱えるか不安が残るので遺言執行者になることができません。これについても先ほどと同じで、相続が発生した時の状況で判断します。

法律では、上記のとおり「未成年者」と「破産者」のみが、遺言執行者になれないと規定しています。従って、それ以外の方であれば、例えば個人だけでなく法人(会社)であっても、遺言執行者になることは可能です。信託銀行が遺言執行の業務を行っていることはよく知られていますが、他にもNPO法人、社会福祉法人なども遺言執行者となることもあり得ます。

また、法定相続人の一人が遺言執行者になるケースも少なくないはずです。ただ、金融機関の手続きにおいて、相続人が遺言執行者に指定されていても、単独で解約・払い戻しの手続きを行う場合に、なかなか応じてくれず、相続人全員の実印の押印を求めるケースがあります。

これは、相続人間のトラブル回避するための手続きです。それ以外でも、相続人の一人が遺言執行者になって業務を行えば、使いこみなどをするのではないかと、他の相続人が心配しても、不思議ではありません。

このような疑心暗鬼を持たれないように、遺言執行者を相続人以外から選ぶか、あるいは複数の相続人を遺言執行者にするなどの配慮も必要です。

 

遺言執行者に報酬は必要?

遺言執行者を指定した場合、報酬を支払う必要はあるのでしょうか。

法的には遺言執行者に報酬を支払う義務はありませんが、一般的には弁護士などの外部の資格者に依頼した場合は遺産の一部を報酬に充当するケースがあります。

相場は特に決まっていませんが、遺言執行する遺産の規模によって変わってきます。

例えば、「相続財産の○%(最低額○万円)」という決め方をする場合が一般的です。但し、遺言書に遺言執行者の報酬を記載していない場合もあります。また、記載されている報酬額について、法定相続人が納得しない場合もあります。

報酬の決め方

報酬の決め方には、以下の3パターンがあります。

1つ目は、遺言書に書かれた報酬について、遺言執行者が承諾する場合です。但し、遺言執行者が、報酬額に対して承諾しないということも考えられます。そのような時には、遺言執行者になることを拒否することもできます。

2つ目は、遺言書に報酬額の記載がないために、相続人と協議を行った上で、金額を決める方法です。相続人全員と遺言執行者(予定者)とで話し合いを行い、報酬額を決めることになります。

但し、全協議者、つまり相続人全員と遺言執行者(予定者)が合意しなければ、遺言執行者となることはできません。そうなると、そのまま報酬額の交渉を続けるか、あるいは他に遺言執行者を探すなどの方法を取ることになり、相続手続きが遅滞することになります。

3つ目は、家庭裁判所に決めてもらう方法です。報酬額について、相続人全員と遺言執行者(予定者)の間で合意できなれば、家庭裁判所へ報酬の決定を申し立てることができます。申し立てできる人は、遺言執行者です。申し立てを受けた家庭裁判所は、相続財産の額、手続きの難易度や煩雑さ、相続人の数などによって、報酬額を決定します。

 

遺言執行者を指定する際の注意点

遺言執行者を弁護士に依頼すれば安心、と思っている人が多いのですが、実はそうとも限りません。遺言書を作成する際に忘れてはならないのは、執行するのはいつになるのかわからないということです。

遺言執行が行われるのは自分が死亡した後の話なので、仮に自分よりも依頼した弁護士が先に死亡していた場合は、遺言執行者に指定していても意味がありません。

そのため、遺言執行者を弁護士に依頼する際には、できるだけ自分よりも若い弁護士に依頼するか弁護士法人を指定するといった方法でリスクヘッジすることが大切です。

法人であっても遺言執行者になることは可能です。

遺言執行者は辞退できる

遺言執行者を親族などで指定した場合、人によっては遺言執行者を辞退するケースが出てきます。遺言執行者については強制ではないので、本人が辞退を申し出た場合はどうしようもありません。

そのため、親族で指定する場合は予め本人の了解をとることがとても重要です。

親族の中で、遺言執行者を引き受けてくれる人がいない場合には、遺言執行を仕事として行っている弁護士などの資格者に報酬を出して依頼することを検討しましょう。

遺言執行者を指定すべき場合とは?

遺言を作成するからと言って、必ずしも遺言執行者を指定しなければならないわけではありません。

しかし、自分の財産の処分に関して、遺言執行者がいた方が確実でスムーズに行くと思う場合には、遺言執行者を遺言書の中で指定しておいた方が、その不安が解消されます。特に、相続人同士の交流が乏しいとか、相続財産が多岐に渡るために手続きが煩雑な場合等には、できるだけ弁護士などの専門家を遺言執行者に指定した方が良いでしょう。

なお、遺言書を作成する際にも、遺留分を侵害するような内容になってしまうと、相続の際に相続人同士でトラブルに発展する可能性がありますので、専門家などからアドバイスを受けて、遺言書を作成るようにしましょう。

 

まとめ

遺言執行者の指定は義務ではありませんが、指定しておくことで相続発生後の手続きがスムーズになることは間違いありません。

また、一部の手続きについては遺言執行者を指定しなければ実現できない点にも注意が必要です。

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