土地・不動産 2019.01.25
不動産を相続する際の課税価格の計算方法
相続開始後10か月以内には、相続税申告をしなければなりません。正しく申告しないと後々余分な税金を課されたり、取り戻すためにさらなる手続きをしなければならなかったりするため、相続税申告は慎重に行うべき手続きと言えます。
相続税申告を一回で終わらせ、余計な手続きをしなくて良いようにするためには、相続税の課税価格を正しく計算していることが大前提です。この記事では、不動産の課税価格の計算方法と、不動産以外の相続財産を含めた課税価格の計算方法を解説します。
不動産の課税価格の計算方法
相続における課税価格とは、相続財産の金銭的価値を表したもので、相続人が納めるべき相続税の計算のもととなるものです。
現金や株式と異なり、不動産の金銭的価値は誰が見ても同一の価格とはなりません。そのため、不動産相続の際には、「相続税評価額」という価格を計算し、不動産に対する相続税の課税価格とします。
では、不動産を土地と建物に分け、課税価格の計算方法を見てみましょう。
1.土地
土地の課税価格は、「路線価」または「倍率」を用いて計算します。
路線価とは、土地と接している道路ごとに設定されているもので、両脇の土地の価値を表す基準です。路線価は全国すべての道路に設定されているものではなく、都市部にある道路を中心に設定されています。
路線価を用いた課税価格計算は、以下の式のように行いましょう。
「路線価×土地の面積=土地の課税価格」
路線価を確認できる「路線価図」は国税庁のホームページなどで公開されていますので、誰でも簡単にチェックできます。相続が始まる前に一度確認してみると良いでしょう。
なお路線価は、ごく標準的な土地を想定して設定されているため、相続税の課税価格計算では、土地の実状に応じた課税価格の加算や減算ができる仕組みになっています。
加算や減算をすることを「補正」と言いますが、補正の要素がある場合には以下のような計算が必要です。
「路線価×土地の面積×補正率=土地の課税価格」
倍率とは、地域ごとに定められた基準で、土地の課税価格を評価するために用いられるものです。路線価が設定されていない地域では、以下のように計算します。
「土地の固定資産税評価額×倍率=土地の課税価格」
倍率も、路線価図で確認可能です。
2.建物
建物の相続税課税価格は、計算が要りません。不動産の「固定資産税評価額」を、そのまま課税価格とすることができます。
あえて計算式を出すとすれば、以下のようになるでしょう。
「建物の固定資産税評価額×1.0=建物の課税価格」
1.0というのは、全国共通の倍率です。
相続財産全体の課税価格の計算手順
では次に、不動産を含めた相続財産全体の課税価格を計算する流れを見てみましょう。以下の4ステップを踏むことになります。
1.各人の課税価格の計算
まずは、相続財産を取得した相続人ごとに、課税価格を計算しましょう。以下の式を用います。
「本来の相続財産+みなし相続財産-非課税財産+相続時精算課税にかかる贈与財産-債務および葬儀費用+相続開始前3年以内の贈与財産=各人の課税価格」
少し分かりにくい式ですが、相続財産から差し引いても良いものがあることが分かるでしょう。
非課税財産には、仏具や墓地などの祭祀財産や、公共のために寄付された財産が含まれます。これらの財産を差し引くことを忘れないて下さい。
被相続人の債務と、葬儀に要した費用も差し引きましょう。
2.課税遺産総額の計算
ステップ1で計算した各人の課税価格をいったん合計しましょう。ここから相続税の基礎控除額を差し引いたものが、課税遺産総額となります。
相続税の基礎控除額は、以下の計算で求められるものです。
「3,000万円+600万円×法定相続人の数」
法定相続人には、相続放棄した人も含めましょう。
相続税総額の計算
相続税総額は、法定相続人が法定相続分通りに相続財産を取得したものと仮定して計算します。
ステップ2で計算した課税遺産総額を、各人の法定相続分に応じて按分し、各人の相続税額(仮)を計算しましょう。
その結果を合計することで、相続税の総額が分かります。
4.各人の納付税額の計算
最後に、相続税総額を各人の実際の取得割合に応じて按分します。条件を満たす相続人については、障害者控除や未成年者控除などの税額控除を適用し、相続税額を控除することが可能です。
逆に、法定相続人ではない人や、一親等ではない親族が相続財産を取得する場合には、相続税が2割加算されます。
まとめ
特殊な用途の不動産や、変形した土地などは、正確な課税価格を計算することが非常に難しくなります。また、相続人が自ら課税価格を計算する場合には特別控除などの適用漏れを起こす可能性も高いため、税理士に依頼した方が安心でしょう。
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