土地・不動産 2019.08.07
相続対策で不動産は売るべき?売らざるべき?
ここ数年、都内の不動産価格が高騰していることを知っていますか?
2013年に東京オリンピックが決まってから、投資マンションや商業ビルを中心に東京の不動産価格が大きく値上がりして、あの昭和のバブルを上回る勢いの上昇を見せているんです!
そんな中、相続対策を検討している人から、「相続を考えると、今売ったほうがいいの?それとも売らないほうがいいの?」なんていう質問を繰り返し受けています。
実はこの答え、簡単ではないんです!
今売ったらどんな得がある?
東京でも山手線の内側を中心に、不動産価格は以前よりも大きく上昇しています。
例えば、実際の事例でいうと、港区にある築10年程度のワンルームマンション、新築時に約2,000万円で購入した方が、ほぼそれと同額で売却が成立したそうです。
築10年も経過して新築時と同額で売れれば、金利を除けばほぼ家賃分丸ごと利益になるという最高の条件です!
ここ数年の東京の不動産価格の傾向を考えると、今が高値で売却するまたとないチャンスでしょう。というか、東京オリンピックが終わったら、下落するのではとも噂され始めているので、高値で売るには待ったなしの状況と言っても過言ではありません。
では、相続対策としてみた場合、今売るとどんな得があるのでしょうか。
遺産分割がしやすく争いが起きにくい
相続が発生した際に、遺産の取り分をめぐって争う一番の原因となるのが「不動産」です。不動産は現物を分けるにしろ、売却して分けるにしろ、何かと相続人の間で争いが生じます。
預金として1億円あれば、割り算で法定相続分通りに分ければ概ね争いは起きませんが、時価1億円の不動産だった場合は、その不動産をどうやって分けるのか、誰が相続するのか、売却するのか、といった部分についてもめてしまうのです。
現在の高い相場で売却すれば、将来相続が発生してから慌てて売却するよりも、より多くのキャッシュを子供達に残せる可能性がある点が、今売却する大きなメリットといえるでしょう。
納税資金が確保できる
2015年から相続税の基礎控除額が大幅に下がったことは、まだ記憶に新しいですよね。相続税というと、もともとは一部の富裕層に課税される税金というイメージがあったため、
「うちは相続税なんて縁ないから」
という無関心な人が多かったのですが、今後発生する相続からは、一般家庭でも相続税が容赦なく課税される可能性がかなり高まりました。
そこで気をつけたいのが「納税資金」です!
仮に、都内の自宅を相続する際に相続税が発生した場合、現金一括で納税しなければならないんです!
知ってましたか?
例外的に分割払いが認められることもありますが、基本は現金一括なんです。
「じゃあ、一括で払えばいいじゃん」と思う方も中にはいるかもしれませんが、国税庁の行なった2016年分の亡くなられた方1人あたりの平均の相続税額は、1,764万円だそうです。
さて、この金額を一括で払えますか?
おそらく、「はい、大丈夫」とハッキリ言える人がどれだけいるでしょうか。
不動産以外にまとまった預金財産があればよいのですが、主だった遺産が不動産しかないケースは以外に多くて、相続税を支払うために慌てて相続不動産を売ることになるケースをよく目にします。
相続税は相続開始後10ヶ月以内に申告と納税をしなければならないので、ある程度金額を下げて急いで売らないと間に合いません。
納税資金対策としては、生命保険を活用する人も増えていますが、相場が高いうちに不動産を売って現金化しておくことで、相続発生後にスムーズに納税資金に充てられる点がメリットです。
今売ったらどんな損がある?
「今高く売れるのに、売ることで損なんてあるの?」
と思うかもしれませんが、相続を考えた場合、実は相続税が大幅に不利になる点に注意が必要です。
というのも、不動産の課税価格は時価ではなく、「相続税評価額」という路線価や固定資産税評価額などを用いて算出する金額で、時価よりもかなり低くなります。
例えば、時価1億円のマンションを所有している場合、建物評価額はおよそ6割の6,000万円まで圧縮できます。
さらに、賃貸マンションであれば、ここからさらに賃借権分でマイナス30%オフになるので、最終的な相続税評価額が4,200万円にまで下がるのです。
今、売却して現金1億円にしてしまうと、相続税の計算上、5,800万円も課税価格が大きくなってしまうため、相続税の節税という観点からするとかなり損!
ですから、単に相続税の節税を考えるのであれば、たとえ今価格が高騰していたとしても、不動産のまま売らずに保有していた方が無難なんです。
まとめ
このように、不動産を売るべきか、売らざるべきかについては、その人、その家庭が置かれている状況によって変わってくるので、一概にどっちがいい、とは言えないものです。
気になる方は、一度税理士に相談して、現時点で相続が発生した場合の相続税を試算してもらってから検討した方がよいでしょう。
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