相続放棄 2017.10.04

あなたも例外じゃない、意外と身近な相続権トラブル。

相続権。
あまりイメージの湧かない単語ですが、この記事に目を通していただければ、案外身近で、自分にも関係するということがイメージしていただけると思います。
相続権にまつわる論点をいくつかみていきましょう。

記事ライター:今井弁護士事務所

相続権とは

相続権とは、被相続人の遺産を相続できる権利であり、いわば相続資格のようなものです。

相続権を喪失する場面は以下のように2つあります。

・相続開始前に、相続人がその意思に反して、相続権をはく奪されるケース

・相続開始後に、相続人が自らの意思で相続権を放棄するケース

大まかなイメージを築くために、やや詳しくみていきましょう。

 

相続権がはく奪されるケース

相続開始前に、相続人がその意思に反して、相続権をはく奪されるケースには、「相続欠格」と「廃除」の2つの場合があります。

「相続欠格」は、相続秩序を侵害する非行をした相続人の相続権を、法律上当然にはく奪する民事上の制裁、と定義されますが、平たくいえば、かなり悪いことをした法定相続人には遺産はあげない、ということです。 民法は以下の5つの欠格事由を定めていて、いずれかに当てはまると、当然に相続権がはく奪されます。

① 故意に被相続人または先順位・同順位の相続人を殺害、または殺害しようとしたために刑に処せられた者

② 被相続人の殺害されたことを知って、これを告発・告訴しなかった者

③ 詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者

④ 詐欺または強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者

⑤ 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者

実際に裁判で問題になるのは、⑤が多いですが、①-⑤のいずれにせよ、相当悪いことをした場合であることが分かると思います。 自分が遺産を相続したいからといって、他の相続人を殺したり被相続人を騙したりした悪い人には、びた一文もあげたくないですよね。

他方、「廃除」というのは、相続欠格事由ほど重大な非行ではないけれど、被相続人からみて自己の財産を相続させるのが妥当ではないと思われるような、非行や被相続人に対する虐待・侮辱がある場合に、被相続人の意思に基づいてその相続人の相続資格をはく奪する制度です。 とはいえ、被相続人の意思に基づくとはいっても、気に入らない相続人をむやみやたらに廃除できるわけではありません。家庭裁判所に対し、被相続人による廃除の請求がなされたら、それを受けて家庭裁判所が相続廃除を認めるか認めないかを判断するという仕組みになっています。 実際に廃除が認められた例としては、 【1】子(長男)が、多額の商品購入の代金、会社の使い込みを父に支払わせ、父母が意見をしようとすると暴力をふるい、その後家出をして行方不明になっている事案 【2】子(長男)が父の多額の財産をギャンブルにつぎ込んで減少させ、父の自宅の売却までせざるを得ない状況に追い込み、なおかつ父の会社の取締役を解任されたことを不満に思って、虚偽の契約書を作出して民事紛争を引き起こした事案、などがあります。

 

相続権を放棄するケース

相続人には自らの意思で相続しないことを選択する自由が認められていて、これを相続放棄といいます。

借金だらけの被相続人を相続した場合、相続によって借金を肩代わりすることになり、かえって損になるので、このような場合が相続放棄がされる典型例でしょう。

相続放棄がされると、「その相続に関しては、初めから相続人とならなかったもの」とみなされます。なお、相続放棄は撤回することができませんので、慎重に判断すべきです。  ここでは相続放棄に絞って説明をしましたが、他にも、原則通りに相続する「単純承認」、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を引き継ぐ「限定承認」という選択肢が用意されています。

これら3つの選択肢のいずれを選ぶかは、相続人が相続財産の状況を調査して損得を考える期間が必要で、この期間は熟慮期間と呼ばれています。 民法によると、この熟慮期間は、「自己のために相続の開始があったことを知った時」から起算して(数え始めて)、3カ月です。熟慮期間を過ぎても何らの選択もされない場合は、原則に戻って、被相続人の財産は包括的に相続人に承継されることになります。

では、例えば、第1順位の相続人Aさんが相続を放棄したけれども、第2順位の相続人Bさんがそれを知らぬまま、3カ月を過ぎてしまった場合はどうなるでしょうか。 この場合、第1順位のAさんが存在するかぎり、第2順位のBさんは相続人ではありません。しかし、Aさんが相続を放棄し、Aさんは初めから相続人でなかったとみなされる結果、順位が繰り上がり、Bさんが第1順位の相続人となります。でも、Bさんとしては、自らが相続人だとは知らなかったわけですから、熟慮するチャンスはありませんよね。これではBさんがかわいそうですから、Bさんが、自分が相続人であることを知った時点から起算するという運用になっています。

 

結びに

いかがでしたでしょうか。 特に、相続放棄については、自分にも起き得るものとしてイメージされたかもしれません。知識を身につけて備えたり、弁護士に依頼したりして、泣き寝入りしないようにしましょう。

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