相続放棄 2020.03.23
相続放棄は家庭裁判所でする?正しいやり方と注意点について解説
相続に関連する手続きの中でも、重要な部分に誤解が多いのが相続放棄です。
相続放棄は家庭裁判所で行う手続きなのですが、相続人の中には財産を何も相続しないことが相続放棄だと勘違いをしているケースがよくあります。
相続放棄を勘違いしていると、思わぬダメージを受ける可能性があるため注意が必要です。
そこで今回は、相続放棄を間違えた際のリスクと裁判所における手続きの流れについて詳しく解説します。
相続放棄と相続分の放棄の違いとは
相続放棄というと遺産を一切相続しないことだとイメージする方が多いのですが、ある意味それも間違いではないのですが正確にいうとちょっと違います。
例えば相続財産として預金1億円と借金8,000万円、相続人が子AとBの2名の場合で、Aがすべての預金を相続する代わりに借金もすべて相続するという遺産分割をしたとします。
Bとしては借金の清算が煩わしいので、一切財産は相続しないと遺産分割協議書に記載して実印で署名捺印をしました。
この場合、一見すると相続放棄ができているように外形上は見えるかもしれませんが、実は家庭裁判所で行っていない相続分の放棄では相続放棄にならないのです。
相続分の放棄
Bとしては一切の財産の相続を放棄したので、これで相続に関連する手続きから完全に開放されたと思うかもしれませんが、Bがした手続きは裁判所を通して行っていないので相続放棄ではなく相続分の放棄に該当します。
相続分の放棄とは簡単にいうと、本来自分で相続できる取り分を放棄することです。
相続財産に借金などの負債が一切ない場合であればそれでも問題ありませんが、今回の事例のように借金がある場合については、裁判所で相続放棄の手続きをしないと将来的にトラブルになる恐れがあります。
借金の返済を請求される可能性がある
裁判所で手続きをしていないと、相続分を放棄しただけなので依然としてBは相続人であることに変わりありません。Aが1億円の預金を相続して、それを借金の返済にすぐに充当すれば問題ありませんが、万が一Aが預金を使い込んでしまい借金の返済ができなくなってしまうと、Bも借金の債権者から返済を迫られることになるのです。
Bとしては遺産分割協議書という書面で相続分を放棄しているのだから、裁判所で手続きをしていなくても借金を返済するのはAの責任と思うかもしれませんが、それはあくまでAとBの相続人間での取り決めに過ぎません。
債権者からするとBも相続人なので、Aが速やかに返済していなければ債権者は相続人各人に対して法定相続分相当額の返済を請求することができます。
つまりBは4,000万円の借金の返済義務を負う可能性があるのです。
裁判所で相続放棄
相続財産を一切相続しない場合で、相続財産に借金がある場合についてはたとえ遺産分割協議書ですべての相続分を放棄したとしても、上記事例のように債権者から法定相続分の範囲で返済を迫られるリスクを負います。
このリスクを回避するためには、裁判所で相続放棄の手続きをする必要があるのです。
相続放棄期間
相続放棄を裁判所で行うためには、相続開始を知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に対して相続放棄の申述(申し立て)をしなければなりません。相続に関連する手続きの中では、非常に期間が短い部類なので、相続放棄をするのであれば相続発生後迅速に動く必要があります。
相続放棄に係る費用
相続放棄を裁判所で行うためには、一定の費用がかかります。
自分自身で手続きをすれば実費のみなので、裁判所に提出する相続放棄申述書に貼る収入印紙代800円と郵送用の切手代400円程度です。
後は必要書類として取得が必要な戸籍謄本関係の取得費用の実費だけなので、費用負担としてはそこまで大きくありません。
相続放棄の代行
相続放棄の手続きは、弁護士や司法書士に依頼して代行してもらうことも可能です。
弁護士であれば代理人として手続きできるので、裁判所への申し立てや裁判所からの連絡の窓口となりすべての手続きを代行してくれます。
対して司法書士の場合は書類作成のサポートなどをしてくれますが、基本的に手続き自体は自分自身で行うことになります。
費用は弁護士に依頼した場合で3~5万円程度、司法書士に依頼した場合で3万円程度がおよその相場です。
相続人間でもめている場合
相続について相続人間で争いがある場合は、原則として弁護士に依頼する必要があります。
紛争化している事案の解決は、弁護士に依頼して代理人になってもらうことで解決がスムーズになるからです。
たとえ相続放棄の手続きだけだとしても、手続き中にトラブルになることも予想されますので、できるだけ弁護士に相談することをおすすめします。
まとめ
裁判所で行う相続放棄と相続分の放棄は、本質的な意味を混同している方が多いので注意が必要です。
プラスの財産だけではなく、マイナスの財産の相続を完全に逃れたいのであれば必ず裁判所で相続放棄の手続きをしましょう。
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