遺産相続・遺産分割 2017.12.27

遺産の相続方法には3つの選択肢がある

遺産相続では、被相続人の残した不動産や現金・預金などの財産のほか、借金などの負債も引き継ぐのが原則です。しかし、遺産の相続方法には複数の選択肢があり、借金の負担を免れることも可能になっています。ここでは、遺産相続の際に選択できる3つの相続方法について説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

単純承認は原則的な遺産の相続方法

単純承認とは

相続が発生したら、亡くなった人の残した財産(プラスの遺産)だけでなく、借金などの負債(マイナスの遺産)も引き継ぐことになります。このような原則的な遺産の相続方法のことを単純承認といいます。遺産の相続方法として単純承認を選択する場合には、特に手続きをとる必要はありません。

法定単純承認とは

法定単純承認とは、法律上一定の要件に該当した場合に、相続人本人の意思とは関わらず単純承認を選んだものとみなす制度です。民法では、相続人が以下に該当した場合には、法定単純承認となる旨が規定されています。

(1) 相続財産の全部又は一部を処分したとき

相続人が相続財産を処分したときには、相続する意思があってのことと考えられますから、法定単純承認になります。ただし、相続財産の現状を維持するための行為(保存行為)や民法602条に定められている短期賃貸借を行う場合には、法定単純承認に該当しません。

(2) 相続開始を知った時から3ヶ月以内に限定承認又は相続放棄をしなかったとき

相続開始を知ったときから3ヶ月が経過してしまうと、それ以降は限定承認や相続放棄ができませんから、遺産の相続方法として単純承認を選択したことになります。

(3) 限定承認・相続放棄後であっても、相続財産の全部又は一部を隠匿、私的に消費、悪意で相続財産目録に記載しなかったとき

たとえ限定承認や相続放棄をした後でも、相続財産を意図的に隠したり使ってしまったりすれば、法定単純承認となってしまいます。

 

限定承認では債務超過分は支払わなくていい

限定承認とは

限定承認は、被相続人のプラスの遺産から債務を支払い、それでもまだプラスの遺産があるようなら相続できるという遺産の相続方法です。限定承認では、プラスの遺産から債務を支払いきれない場合でも、相続人が自分の財産を使って支払う必要はありません。

限定承認の手続き方法

限定承認を選択する場合には、相続開始を知った時から3ヶ月以内に、共同相続人がいれば全員で家庭裁判所に限定承認の申述を行う必要があります。ただし、相続人の中に遺産の相続方法として相続放棄を選択する人がいる場合には、その人を除いて限定承認の手続きを行うことも可能です。

限定承認申述後の流れ

限定承認の申述をした後は、法律に従って相続財産を清算する手続きを行う必要があります。共同相続人がいる場合には、まず相続財産管理人が選任され、請求申出の公告や催告を行います。その後、相続財産をお金に換えて債務を返済していくことになります。もし残余財産があれば、共同相続人で遺産分割を行うことになります。

限定承認の注意点

共同相続人がいる場合には、限定承認は共同相続人全員で行う必要があります。共同相続人の中に単純承認を選択する人や法定単純承認に該当する人がいれば、他の相続人だけで限定承認をすることはできません。

 

遺産も借金も一切相続しないのが相続放棄

相続放棄とは

相続放棄は、プラスの遺産もマイナスの遺産も一切引き継がない相続方法です。遺産の相続方法として相続放棄を選択した場合には、その人は最初から相続人とはならなかったものとみなされます。多額の借金がある場合には、相続放棄をすることで借金の支払いから逃れることができます。

相続放棄の手続き方法

相続放棄を選択する場合には、相続開始を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所で相続放棄の申述を行う必要があります。家庭裁判所によって相続放棄の申述が受理されれば、手続きは完了します。相続放棄の申述が受理された旨の通知書や証明書を提示すれば、債権者からの支払いの請求を免れることができます。

相続放棄の注意点

遺産の相続方法として相続放棄を選んだ場合には、たとえプラスの遺産があっても一切相続することはできません。後になってプラスの遺産があることがわかっても、一度した相続放棄を撤回することはできませんから、相続財産の内容をよく調べてから手続きする必要があります。

また、同順位の相続人全員が相続放棄をすれば、当初は相続人でなかった次順位の親族が相続人となります。この場合、被相続人に借金があれば、次順位の相続人が借金を相続することになってしまいます。トラブル防止のため、次順位の相続人にも連絡し、相続放棄をしてもらった方がよいでしょう。

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