遺産相続・遺産分割 2018.02.19

妻が遺産相続する際に気をつけるべきことは?

夫が亡くなれば、残された妻は遺産相続を行わなければならなくなります。しかし普段は、夫が亡くなった後のことなどあまり考えることもないでしょうし、まだ元気なのだからと、遺産相続など先の話だとも思うかもしれません。

しかしながら、遺産相続については、事前に理解しておいた方が良い知識があります。余裕をもって遺産相続に備えておくことで、子どもの代にかける税負担を減らすことも可能になります。

記事ライター:棚田行政書士

妻が遺産相続する際の相続税の優遇制度について

遺産相続で相続する遺産が決定すると、各相続人は相続税を算出する必要が出てきます。相続税は、基礎控除額を超えた相続財産を相続しない限り課されることはありません。

妻が遺産相続をして相続税を算出する際には、「配偶者の税額軽減」という制度を利用できます。配偶者の相続分が法定相続分相当額、または1億6000万円のどちらか多い方の金額以下である場合には、配偶者に相続税は課されないという制度です。

この制度は一般的に考えて、被相続人の配偶者は他の相続人よりも優遇されるべき理由を持っているために設けられているものです。

例えば、遺産相続をする妻は結婚以来、長年にわたり被相続人と苦楽を共にして生活し、ともに財産を築き上げてきたと考えられます。また、遺される妻には、その後の生活保障も必要です。

さらに別の側面として、被相続人と配偶者は近い世代であることが多いため、被相続人の遺産相続が終了して間もないうちに妻が亡くなり、また新たな遺産相続が発生してしまうことも考えられます。

もし、被相続人から妻へ財産が移動した際に相続税がかかり、さらに妻からその子どもたちへ財産が移動した際にも相続税がかかるとなると、短期間のうちに同じ財産に対して相続税が2回もかけられてしまうことになります。

遺産相続する妻のそれまでの働きに報いるという意味と、妻のその後の生活を守る役割、また相続税が頻繁に課される事態を防ぐというこの3つの点を主な理由として、配偶者の税額軽減という制度が存在しているのです。

 

遺産相続した妻の財産が子どもへ渡る「二次相続」を考慮する

妻が遺産相続する際には、注意しなければならない点もあります。「二次相続」という問題です。被相続人である夫から妻への遺産相続を一次相続、妻から子どもへの遺産相続は二次相続と呼ばれています。

妻自身が亡くなって遺産相続が発生した場合に、妻が持つ財産は遺産として子どもなどへ分配されることになります。もし、配偶者の税額軽減制度を目いっぱい利用するほど多額の遺産相続を妻が遺してしまった場合、子どもが負担することになる相続税は非常に高額になってしまいます。

被相続人である夫の遺産相続の際は法定相続人であった妻も、妻自身が亡くなることで法定相続人の人数は減りますから、その分各種税額控除の枠も狭まります。遺産相続をする妻の立場であるなら、この二次相続にも留意し、遺産相続で得る財産が多ければ多いほど、早めに対策を打っておく必要があるでしょう。

 

配偶者控除を利用した贈与や、子どもへの生前贈与・遺贈を検討する

では、遺産相続した妻、また生前から被相続人と妻が行える相続税対策の具体例を2つご紹介します。

1.贈与税の配偶者控除の特例を利用する

被相続人の生前に行うことのできる贈与として、贈与税の配偶者控除の特例があります。正式に婚姻している期間が20年以上である夫婦の間で、自宅または自宅を取得するための資金を贈与した場合に、2,000万円まで控除できるという制度です。

被相続人の課税対象の財産を減らすことで相続税対策もできますし、遺産相続後の妻の住居が確保できるというメリットもあります。

2.子どもへ贈与を行う

被相続人の生前からでも、また遺産相続後の妻のみでも行うことができるものに、子どもへの生前贈与があります。

例えば、子どもがマイホームを建てる場合の資金として贈与する方法や、教育資金として、また結婚・子育て資金としてなど、1,000万円以上のまとまった財産を非課税で贈与できる各種控除制度があります。

これらの控除制度には、適用の期限があるものがあります。そのため、できるだけ早めに子どもに贈与しておくことは良い判断と言えるでしょう。

 

まとめ

妻が遺産相続する際には、子どもが遺産相続する番になった時の相続税のことも考慮しましょう。財産の額が大きい人ほど、生前贈与などを活用して、早めに子どもの代へ財産を移しておくことが効果的です。

関連記事

遺産相続・遺産分割

預貯金は遺産分割の対象?

預貯金を分ける前には遺産分割協議が必要 もともと遺産分割における預貯金は、法定相続分にしたがって分割されるものとされてきました。このため、それぞれの相続人が自らの相続分に基づいて、金融機関に対し遺産分 ...

2020/12/28

遺産相続・遺産分割

遺産相続争いの種、特別受益と遺留分のトラブル

特別受益の持ち戻しとは? そもそも特別受益とは、被相続人から生前に受けていた贈与のことをいいます。 遺産相続が発生した際、相続人間の不公平感を無くすために被相続人から生前に受けていた贈与分を相続財産に ...

2020/06/25

遺産相続・遺産分割

遺産相続の際に取得する戸籍謄本について徹底解説

なぜ戸籍謄本が必要になるのか 遺産相続した財産の名義を変更するためには、必ず添付書類として被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本など一式が必要になります。これは、被相続人を中心に誰が相続人なの ...

2020/06/23

遺産相続・遺産分割

相続とは何か

相続とは? 相続とは、亡くなった人の財産を相続人が引き継ぎ、財産を次世代へ受け継いでいくことです。現金や預貯金、土地や建物などの不動産といったプラスの財産は勿論ですが、借金やローンなどのマイナスの財産 ...

2017/10/02

遺産相続・遺産分割

生命保険は相続対策になる?

生命保険で相続対策となる仕組み 生命保険がなぜ相続対策になるのかということですが、まず生命保険の支払いを相続財産、つまり被相続人が支払うことにより相続財産を減らすことができます。 相続財産が減るという ...

2017/10/02

遺産相続・遺産分割

遺産分割に大きく影響する寄与分とは?

被相続人に貢献した人は、「寄与分」という取り分がある?! 遺産分割協議による話し合いにおいては、様々な主張が繰り広げられますが、もめているケースで多いのが、被相続人に対する貢献度にみあった財産を相続さ ...

2017/10/02

Copyright© 相続メディア nexy , 2024 AllRights Reserved.