遺産相続・遺産分割 2018.02.26
遺産相続の時効はある?遺産相続の時効や期限の基礎知識
遺産相続でよくある質問として、遺産相続の時効に関するものがあります。ここでは、「遺産相続の時効があるのはどんな場合?」「遺産相続の時効に間に合わなかったらどうなる?」など、遺産相続の時効や手続きの期限について説明します。
遺産相続の時効はある?
・遺産相続では様々な手続きが必要
遺産相続が発生したときに必要となる手続きは、ケースによって違います。たとえば、遺産といっても借金がほとんどの場合には、相続放棄をしなければならないことがあります。また、遺産の額が一定以上あれば、相続税の申告が必要になります。相続財産の種類によっては、名義変更が必要になるものもあります。
・手続き期間が決まっているものもある
遺産相続が発生したら、まずは相続人や相続財産を調査し、どのような手続きが必要になるかを確認するべきです。というのも、手続き期間が決まっているものや、遺産相続の時効が設けられているものがあるからです。うっかり期限を過ぎてしまえば、遺産相続の時効で手続きができなくなってしまったり、ペナルティを課されたりすることがあります。
遺産相続の時効や期限が問題となる手続きとは?
・限定承認・相続放棄
遺産相続の際には、単純承認、限定承認、相続放棄の3つのうちから相続方法を選べます。単純承認を選ぶ場合には特に手続きをとる必要はありませんが、限定承認または相続放棄を選ぶ場合には家庭裁判所での手続きが必要になります。
単純承認は、亡くなった人の財産(プラスの財産)も借金(マイナスの財産)もすべて相続する方法です。限定承認は、プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する方法です。相続放棄は、プラスの財産もマイナスの財産も一切相続せず、相続人としての立場を放棄する方法です。
亡くなった人が借金を残している場合には、限定承認または相続放棄を選ぶことで、借金の負担を引き継がずに済みます。限定承認または相続放棄をするには、相続開始を知った時から3ヶ月以内に、家庭裁判所に申述書を提出する必要があります。何も手続きしないまま3ヶ月の期間が経過してしまうと、遺産相続の時効で自動的に単純承認したことになってしまい、それ以降限定承認や相続放棄はできなくなってしまいます。
・所得税の準確定申告
準確定申告とは、亡くなった人の所得税の確定申告のことです。確定申告義務がある人が亡くなった場合、亡くなった年の所得については本人が確定申告できないので、相続人がかわりに準確定申告という形で税務署に申告する必要があります。
準確定申告の期限は、通常の確定申告と違っていますから注意が必要です。準確定申告の期限は、相続開始を知った日の翌日から4ヶ月となっています。準確定申告の期限に遅れた場合には、遺産相続の時効で延滞税などのペナルティが課されることになります。
・相続税の申告・納税
遺産の額が基礎控除額を超える場合には、相続税が課税されることになるため、相続人や受遺者は相続税の申告を行う義務があります。基礎控除額とは、次の計算式で算出される額になります。
基礎控除額=3000万円+600万円×法定相続人の数
相続税の申告は、相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に行わなければなりません。さらに、税額が発生する場合には、期限までに納税も行う必要があります。遺産の額が基礎控除額を超えていても、特例等により税額が発生しない場合もありますが、遺産相続の時効として期限までの申告は必要ですから要注意です。
・遺留分減殺請求
遺産相続の時効が設けられている手続きとして、遺留分減殺請求があります。遺留分とは、法定相続人のうち、兄弟姉妹以外の人に認められている最低限の相続割合のことです。遺言により遺留分も相続できなくなった相続人は、遺留分減殺請求をすることにより、遺留分を取り戻すことが可能になります。
遺留分減殺請求権は、相続開始及び遺留分の侵害を知った時から1年で時効消滅します。また、相続開始から10年が経過した場合にも、遺留分減殺請求ができなくなります。
遺産分割には遺産相続の時効は関係ある?
・遺産分割の期限について
遺産相続の時効といえば、遺産分割をいつまでにしなければならないのかが気になると思います。遺産分割には、法律上定められた期限はありません。しかし、遺産相続の時効がないからといって、遺産分割をしないまま放置していると、デメリットになることがあります。
・遺産分割は遅くても3年以内に終わらせる
相続税には、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例など、税負担を軽減する特例が設けられています。しかし、申告時に遺産分割が終わっていない場合には、これらの特例を適用することができません。
なお、申告期限から3年以内に遺産分割ができれば、特例を適用して更正の請求を行うことが可能です。遺産分割は相続税の申告期限までに終わらせるのがベストですが、間に合わない場合にも3年以内に終わらせるようにしましょう。
関連記事
-
遺産相続・遺産分割
-
預貯金は遺産分割の対象?
預貯金を分ける前には遺産分割協議が必要 もともと遺産分割における預貯金は、法定相続分にしたがって分割されるものとされてきました。このため、それぞれの相続人が自らの相続分に基づいて、金融機関に対し遺産分 ...
2020/12/28
-
遺産相続・遺産分割
-
遺産相続争いの種、特別受益と遺留分のトラブル
特別受益の持ち戻しとは? そもそも特別受益とは、被相続人から生前に受けていた贈与のことをいいます。 遺産相続が発生した際、相続人間の不公平感を無くすために被相続人から生前に受けていた贈与分を相続財産に ...
2020/06/25
-
遺産相続・遺産分割
-
遺産相続の際に取得する戸籍謄本について徹底解説
なぜ戸籍謄本が必要になるのか 遺産相続した財産の名義を変更するためには、必ず添付書類として被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や除籍謄本など一式が必要になります。これは、被相続人を中心に誰が相続人なの ...
2020/06/23
-
遺産相続・遺産分割
-
相続とは何か
相続とは? 相続とは、亡くなった人の財産を相続人が引き継ぎ、財産を次世代へ受け継いでいくことです。現金や預貯金、土地や建物などの不動産といったプラスの財産は勿論ですが、借金やローンなどのマイナスの財産 ...
2017/10/02
-
遺産相続・遺産分割
-
生命保険は相続対策になる?
生命保険で相続対策となる仕組み 生命保険がなぜ相続対策になるのかということですが、まず生命保険の支払いを相続財産、つまり被相続人が支払うことにより相続財産を減らすことができます。 相続財産が減るという ...
2017/10/02
-
遺産相続・遺産分割
-
遺産分割に大きく影響する寄与分とは?
被相続人に貢献した人は、「寄与分」という取り分がある?! 遺産分割協議による話し合いにおいては、様々な主張が繰り広げられますが、もめているケースで多いのが、被相続人に対する貢献度にみあった財産を相続さ ...
2017/10/02