遺産相続・遺産分割 2018.03.24

遺産相続の経験者が財産分与する際のポイント

離婚の際には、夫婦共通の財産を分ける「財産分与」という手続きが必要になります。夫婦のどちらかが遺産相続を経験しており、遺産相続で得た財産を保有している場合には、それも財産分与の対象とすべきかどうかについて悩むかもしれません。

もし離婚前に遺産相続が発生したら、遺産相続で相続した財産まで財産分与しなければならないのでしょうか?遺産相続した財産の財産分与に関しては、例外があるでしょうか?

本記事では、この点を解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺産相続における財産分与とはそもそも何?

遺産相続における財産分与には、次の3つの性質があります。

1.清算的財産分与

財産分与において核となっているのが、この清算的財産分与です。結婚している間に夫婦で協力して形成してきた財産は夫婦の「共有財産」であるため、離婚の際も夫婦で分けるべきという考えです。

財産分与の対象となる財産の例としては、夫婦が結婚してから購入したマイホームや自動車、家財や貴金属、生命保険や株式といったものが含まれます。これ以外のものでも、夫婦が二人で力を合わせたことで築いてきた財産であれば、財産分与の対象となります。

清算的財産分与においては何よりも、夫婦の協力によって築かれた財産かどうかが最重要視されます。ですから、たとえ夫婦の名義ではない財産であっても実質的には夫婦二人の協力によって築かれた財産であれば、財産分与の対象となるとされています。

清算的財産分与の請求権は、離婚の原因をどちらが作ったかによって左右されることはありません。そのため、離婚の原因を作った側の配偶者から財産分与を請求される可能性もあります。

2.扶養的財産分与

財産を分けるという意味の他にも、離婚によって経済的に困窮する可能性のある配偶者への扶養料を支払うという扶養的な意味でも、財産分与が行われる場合があります。

病気や高齢によって特別な配慮を必要とする配偶者の場合に認められる場合がありますが、実際の裁判で扶養的財産分与が認められるのは稀なこととなっています。

3.慰謝料的財産分与

離婚の原因を作った側の配偶者が、慰謝料を請求されることはよくあることです。しかし本来、財産分与される財産と慰謝料は別個の性質のものです。

慰謝料的財産分与は、財産分与でやり取りをする金銭に慰謝料的な部分もまとめて請求するという意味合いで用いられることのあるものです。

 

遺産相続で取得した遺産も、財産分与の対象?

では、離婚しようとしている人が遺産相続で得た財産を所有している場合、遺産相続で得た財産も財産分与の対象とされてしまうのでしょうか?

財産分与に関する判例などでは、夫婦のどちらかが所有しているもので、夫婦で築いてきたとは言えない財産であれば、財産分与の対象とはしないとしています。

例えば、結婚する前から貯蓄していた貯金や、結婚前に購入した不動産などが含まれるでしょう。このような財産は、「特有財産」と呼ばれ、財産分与の対象にはなりません。特有財産には、結婚している間に発生したとしても夫婦の協力とは無関係に取得した財産も含まれています。

遺産相続で得た財産は明らかに夫婦二人が築いたものではなく、遺産相続の相続人としての配偶者の立場によって得た財産のため、特有財産と見なされます。そのため原則として遺産相続で得た財産は、財産分与の対象にはならないと言えます。

 

遺産相続における財産分与の例外

遺産相続で夫婦のどちらかが得た財産は特有財産であり、遺産相続における財産分与の対象ではありませんが、例外もあります。夫婦のどちらかが遺産相続で得た財産について、その配偶者がその財産の維持管理に大きく貢献していた場合などです。

夫婦として当たり前の程度の貢献では認められませんが、遺産相続した財産の維持管理に対する貢献の度合いが大きいと裁判所が認めれば、遺産相続で得た財産も財産分与の対象となる場合があります。

過去の判例でも、遺産相続で夫が相続した財産の維持管理に大きく寄与してきた妻に対し、一定の割合での財産分与が認められた事例があります。

遺産相続を経験してから離婚する際には、自分が遺産相続でもらった財産だから財産分与しなくて大丈夫と決めつけず、遺産相続した財産に対する配偶者の特別な貢献があったかどうかをよく考慮しましょう。

 

まとめ

遺産相続で得た財産は特有財産なので、財産分与の対象とはなりません。共有財産の財産分与請求は、離婚から2年以内に行う必要があります。

2年と言うと長く感じますが、新しい生活で忙しくしていると意外に早く過ぎてしまうかもしれません。遺産相続後に財産分与請求をする場合は、早めに手続きを行いましょう。

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