遺産相続・遺産分割 2018.04.29

遺産分割で交わす「同意書」とは?

遺産相続で遺産分割協議が成立すると、遺産分割の具体的な内容を詳細に記載した「遺産分割協議書」が作成されます。

遺産分割協議書の内容に従って実際に遺産を相続する段階になると、遺産分割協議書の他に「同意書」と呼ばれる書類を提出しなければならない場合があります。

この記事では、遺産分割における「同意書」とは何かに加え、遺産分割において同意書が必要になる2つの状況について解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺産分割の際に作成する「同意書」とは

遺産分割の同意書とは、遺産分割の内容に関して相続人全員が合意していることを示すための書類です。相続人同意書、または相続同意書とも呼ばれます。

遺産分割における同意書は、一部の相続人が他の相続人に無断で遺産の名義変更をするなどして、遺産を勝手に処分したり、独り占めしたりすることのないよう抑止するための重要な書類です。

遺産分割において同意書が必要になる主なシーンは、被相続人の預貯金を相続してお金を引き出す場合や、相続した遺産の名義を変更する場合です。

例えば、口座の名義人が亡くなった場合、金融機関は遺産の悪用を防ぐために貯金口座を凍結しますが、全ての遺産分割を終えるのには時間がかかるので、その前に、預貯金の分だけを先に分割したいと思う相続人も少なくありません。

そのような場合に、相続同意書を作成しておけば、金融機関に提出することで凍結が解除され、スムーズな財産分割に繋がるでしょう。

また、預貯金に限らず、一部の遺産だけを先に分割したいときに役立つのが相続同意書なのです。

 

遺産分割協議書と、同意書の相違点

遺産分割に関する相続人の合意を示す書類としては、遺産分割協議書も同意書も同じものですが、この2つには微妙な違いがあります。

遺産分割協議書が、被相続人の遺産すべての分割方法に関して詳細に記載しているのに対し、同意書は一部の遺産の分割方法について記載しているに過ぎません。よって、遺産分割協議書よりも同意書の方が簡便な書式になります。

遺産分割協議書は、記載されている遺産すべての名義変更手続きに使用可能です。同意書は、記載されている遺産の名義変更にのみ使用できます。同意書に記載されていない遺産についての手続きには使用できません。

 

相続同意書が必要なケース

相続同意書が必要となる主な3つのケースについてそれぞれ解説していきたいと思います。

被相続人の預貯金を引き出す場合

先ほども少し触れましたが、預金口座の名義人が亡くなると、金融機関は預金口座を凍結します。凍結された口座は、一切の入出金ができなくなります。凍結された口座の預貯金は遺産分割対象の遺産であるため、凍結することで入出金を制御しておく必要があります。

そうしなければ、金融機関が遺産の管理に関して、責任を問われてしまう可能性も出てくるため、必要な措置と言えます。

遺産分割で預貯金を相続することが確定したなら、相続人が必要な手続きを踏んで凍結解除をしなければなりません。

凍結解除の手続きに必要な書類

凍結解除の手続き方法は金融機関ごとに多少異なりますが、一般的には次のような書類を提出するように求められます。

払戻依頼書(または相続届、相続手続き依頼書など)

預金口座の名義人の出生から死亡までの記載がある戸籍謄本

相続人全員分の戸籍謄本および印鑑証明書

預貯金の引き出しにおいては、払戻依頼書が同意書の役割を果たすことになります。遺言書がない場合には、同意書へ相続人全員が署名捺印するように求められることがほとんどです。

遺産分割協議が成立している場合は、遺産分割協議書の提出を

遺言書がなくとも遺産分割協議が成立している状態なら、遺産分割協議書の提出を同意書の提出に代えることができる可能性もあります。

遺言書がある場合は、同意書の提出は原則不要

遺言書がある場合は、遺言書で預貯金の相続を指示されている相続人の署名捺印のみで凍結解除ができる可能性もあります。原則として同意書の提出は不要です。

遺言書があっても、金融機関が遺言書の有効性を疑問視した場合や、金融機関の独自の基準に基づく判断によっては、相続人全員が同意書へ署名捺印するように求められる場合もあります。

最近では、凍結解除後の相続人同士の争いを予防するため、遺言書の有無に関係なく相続人全員が同意書へ署名捺印することを求められるケースが多くなっています。

もし、遺言執行者がおり、遺言執行者が凍結解除の手続きをする場合には、同意書の提出は原則として不要になります。

金融機関が遺言執行者の身元や権限を確認し、預貯金の相続手続きが遺言執行者の権限範囲内であることが確認出来た場合には、遺言執行者の署名捺印があれば、凍結解除が可能となります。

被相続人の遺産の名義変更をする場合

遺産分割で被相続人の所有していた自動車などの遺産を相続した場合にも、同意書を作成して名義変更をする必要があります。

自動車の名義変更のための同意書は、最寄りの運輸支局やウェブサイトから入手することができます。

自動車の同意書には、名義変更をする自動車の登録番号、車台番号、相続人全員の住所氏名を記入し、捺印します。

許認可の必要な事業を継承する場合

被相続人が営んでいた許認可の必要な事業を継承する場合も、同意書が必要となります。

事業には、許認可といって、行政期間の許可が必要な種類があり、

・飲食店、食品製造業、食品販売業などの食品営業
・美容室、理容室
・クリーニング店
・たばこの販売店

などが挙げられます。

上記のような、許認可の必要な事業を継承する場合は、遺産分割協議書の他に、相続同意書も求められることがあります。

ただし、許認可の種類にもよりますが、被相続人の許認可を相続するよりも、いったん廃業にし、相続人が新規に許認可を取得する方がスムーズなケースもあるので、事前にどちらの方法が良いか確認しておくのが良いでしょう。

 

相続同意書の作成方法

相続同意書には、一般的に以下の内容を記載します。

・被相続人の住所、氏名
・被相続人の生年月日と死亡年月日
・相続人全員の住所、氏名、実印
・相続される遺産の詳細
・遺産の分割方法に、相続人全員の合意がある旨の文章
・同意書を作成した年月日

相続される遺産の詳細は、預金口座の同意書 であれば、支店名、預金の種類、口座番号を、自動車であれば自動車登録番号と車台番号を、許認可の必要な事業を継承する場合であれば事業の種類、店舗の所在地、現在受けている営業許可番号と年月日などを記載しましょう。

また、提出先によっては、あらかじめ記載する内容の指定があったり、テンプレートのようなものが用意されていたりする場合があるので、事前に確認しておきましょう。

 

被相続人の遺産の名義変更をするための同意書

遺産分割で被相続人の所有していた自動車などの遺産を相続した場合にも、同意書を作成して名義変更をする必要があります。

自動車の名義変更のための同意書は、最寄りの運輸支局やウェブサイトから入手することができます。

自動車の同意書には、名義変更をする自動車の登録番号、車台番号、相続人全員の住所氏名を記入し、捺印します。

 

まとめ

遺産分割で作成される同意書には、金融機関に提出する払戻依頼書や、自動車の名義変更の際に提出する同意書などがあります。

同意書には相続人全員の署名捺印が必要なので、同意書作成に協力してもらえるよう、争うことなく遺産分割を進めることも大切です。

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