遺産相続・遺産分割 2020.01.20

誤解している人多数!遺言信託の本当の意味と利用する際のポイント

高齢化が進む日本において相続対策を検討する方が増えていますが、中でも意味を誤解しやすいのが「遺言信託」です。

なんとなく聞いたことはあるという方や、知っているという人もいるかと思いますが、実は2つの意味があり誤解したまま理解しているとトラブルになる可能性があります。

そこで今回は、誤解しやすい遺言信託の2つの意味について詳しく解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺言信託の法的な意味とは?

信託とは文字通り信じて託すことあり、「遺言書によって信託をすること」が本来の法的な意味での遺言信託です。

一方、信託銀行が取り扱っている遺言信託は、「遺言書自体を信託すること」であり、法的な意味の遺言信託とは異なります。

遺言信託という商品もしくはサービスの名前と考えていただければ理解しやすいかと思います。

この2つの違いについてさらに踏み込んで見ていきましょう。

法的な意味での遺言信託とは

法的な意味での遺言信託は、家族信託の形態の一つであり、遺言書によって家族に信託することです。

家族信託は、保有する財産を信頼できる家族に託して管理を任せる契約であり、生前から効力を発しますが、その一形態である遺言信託は、遺言書によって家族に信託をしますので、相続発生と同時に信託の効力が発生することになります。

そのため、遺言信託をする場合は、遺言書に、「財産を家族の誰に信託し、その者が誰のために財産の管理をしていくのか」を書き記す必要があります。

法的な意味での遺言信託の具体的な例

例えば、父Aが遺言書を書く際に、自分が所有しているアパートについて息子Bに相続させて賃貸管理や運営を行い、そこから生じる家賃について孫Cに受け取らせる場合が一種の遺言信託となります。

この時、アパートという財産を所有している父Aを「委託者」、アパート運営を行い、財産を管理する息子Bを「受託者」、家賃収入という利益を受け取る孫Cを「受益者」と言います。

通常、アパートの所有者と家賃を受け取る人は同じですが、遺言信託を利用することでアパートの所有者と家賃を受け取る受益者を別人に指定することができるのです。

信託は生前にもできますが、自分の死後に遺言書によって実行したい場合は遺言信託を利用する必要があります。

法的な意味での遺言信託のメリット

遺言信託を活用することで、認知症を発症する可能性のある高齢者の財産管理を円滑に進めることができるといわれています。

先ほど挙げた具体例で、遺言信託をせずに、高齢の妻がアパートを相続した場合、万が一妻が数年後に認知症を発症してしまうとアパートを売却したくても判断能力が不十分であることから、売却することができず有効な相続税対策や資産運用ができなくなってしまいます。

そこで、息子を受託者、孫を受益者とする遺言信託をすることで、アパートを息子が管理運用し、それによって得た利益について孫が受け取るという状況を作り出し、妻が認知症になった場合のリスク対策をすることができるのです。

妻に利益を受け取ってもらいたい場合は、孫ではなく、妻を受益者とすることも可能です。

また、このような遺言信託の制度を利用すれば、例えば知的障害を持つお子さんがいるケースでも、ただ子どもに財産を相続させるのではなく、信頼できる家族に財産管理をまかせ、利益は子どもが受け取る、という形を取ることも出来るので、家族を守る、家族のニーズに沿った対策が取れるというのが法的な意味での遺言信託のメリットではないでしょうか。

法的な意味での遺言信託のデメリット

法的な意味での遺言信託は、2007年の信託法の改正により可能となった比較的新しい制度であり、まだまだ認知されているとは言えません。

ですから、遺言信託という制度があることを知らないまま、遺言書を作成してしまう方が多いです。

また、専門家であっても相続の分野に明るくなければ制度を十分に理解できていないことがあるので、自分の力だけで遺言信託を行おうとすることは困難でしょう。

 

遺言信託は誰に相談すればいい?

遺言信託は、遺言書の文面が非常に重要になってくるため、できるだけ自分で遺言書を作成するのではなく遺言信託に強い専門家に相談して作成することをおすすめします。

遺言信託については相続に強い弁護士や司法書士が取り扱っていることが多く、遺言信託について相談すれば相続発生後の遺言執行人についても同時に依頼することが可能です。

遺言執行人とは、遺言書の内容を実行する役割を担う人のことを言います。遺言信託のような複雑な手続きを遺言書に記載する場合については、弁護士や司法書士などの専門家に遺言執行人を依頼したほうがよいでしょう。

 

信託銀行における遺言信託とは?

遺言信託というと信託銀行をイメージする人も多いかと思います。

実際、一般的には「遺言信託」というと、先ほどまで説明してきた法的な意味のものではなく、信託銀行が取り扱っているサービスのことを示すことが多いです。

実は信託銀行が取り扱っている遺言信託は、先ほど解説した遺言信託とは全く意味が異なりますので注意しなければなりません。

遺言を信託するのが信託銀行の遺言信託

法的な意味での遺言信託とは一言でいうと「遺言書に信託して欲しいことを書く」ことですが、信託銀行などでいうところの遺言信託とは「遺言書自体を信託すること」を意味しています。

つまり、信託銀行の遺言信託は遺言書の作成、保管、執行をトータルでサポートする独自のサービスのことをいうのです。

また、信託銀行によっては「遺言代用信託」というサービスを行っている場合もあります。

遺言代用信託とは、本人に代わって信託銀行が金銭等を管理(信託)することで、相続発生後は相続人に引き継ぐサービスです。

このように、同じ遺言信託という言葉でも「遺言書で信託する」ケースと「遺言書を信託する」ケースがあるため、実際に遺言信託を検討する際には自分自身はどちらを利用したいのか確認した上で相談先を考える必要があります。

遺言信託のメリット

・遺言書の作成に関する適切なアドバイスがもらえる

遺言書は、ただ書けばいいというわけではなく、法的な効力を確実に発生させるためには、ルールに則って作成しなければならず、内容や方式に不備があれば無効になってしまう可能性があります。

遺言信託を依頼すれば、そのようなことが無いよう、書き方について教えてもらいながら作成することが出来ます。

また、内容に関しても、財産を有効活用出来るような適切な財産の分け方かであるか、という部分に関しても踏み込んだアドバイスをしてくれるので、どのような遺言書にしようか悩んでいる場合にもお勧めです。

・確実に遺言を執行してもらえる

金融機関に遺言書を託すわけですから、遺言書が発見されなかったり、改ざんされてしまったりという心配がなく、確実に遺言を執行してもらえるという安心感があります。

相続人の方たちも、金融機関の遺言信託サービスを利用して作成した遺言書であれば、正式な遺言書であると納得しますので、内容にも同意しやすいというメリットがあるでしょう。

遺言信託のデメリット

・費用が高額である

遺言信託は、信託銀行によっても違いがありますが、高額な費用がかかることが多いです。

まずは遺言書作成時に数十万~100万円程度かかりますし、遺言執行の際も数十万~100万円以上かかることもあります。

その他、遺言書の内容を変更したい時も書き換え手数料として数万円~10万円程度かかると見ておきましょう。

数千円ですが、遺言書保管料が毎年かかってくる信託銀行もあります。

この高額な費用が、遺言信託の一番のデメリットであると考えてよいでしょう。

・信託銀行が破綻する可能性もある

せっかく高額な費用を支払い遺言信託しても、信託銀行が破綻してしまう可能性があります。

そういったリスクを考えると、弁護士等の専門家の方が費用を多少抑えられるケースもありますし、信託銀行でしか行えないサービスというのは基本的に無いといっても良いので、他の方法も検討するべきでしょう。

 

遺言信託の相談先

遺言書で信託する場合については基本的に弁護士や司法書士、遺言書を信託する場合は弁護士、司法書士の他に信託銀行という選択肢があります。

弁護士と信託銀行どっちがいいの?

遺言書を信託する場合はどちらでも対応ができますが、それぞれ特徴が異なります。

信託銀行については基本的に相続発生後のトラブルを避けたいので、極端な内容の遺言書については取り扱いを拒否される場合があるようです。

例えば、子供が4人いるにもかかわらず全ての財産を長男に相続させるといった遺言書を信託するとなると、信託銀行からトラブルを警戒して拒否される可能性があります。

(※紛争性のある事案については、弁護士でなければ取り扱いできません)

一方で弁護士についてはトラブル解決のスペシャリストなので、本人が希望すればどのような遺言書でも法的に問題がなければ信託することが可能です。

そのため、相続発生後に相続人が揉めそうな場合については弁護士に相談して遺言信託をしたほうがよいでしょう。

 

まとめ

遺言信託にはまったく違う2つの意味があることがお分かりいただけましたでしょうか。

「遺言書で信託する」のか、「遺言書を信託する」のか、自分自身はどちらを希望しているのかによって相談先も変わってきますので間違えないよう注意しましょう。

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