遺産相続・遺産分割 2017.10.04
養子が相続する場合に知っておきたい知識や注意点
◆養子縁組とは
養子縁組とは、親子関係のない者同士を、法律上、親子関係があるものとすることを言い、養子は嫡出子と同じ身分を取得します。
相続税対策のために養子縁組をする…というお話を聞いたことがあるかもしれません。
養子縁組には縁組の意思が必要となりますが、最高裁は『専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1項にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない』(最判平成29年1月31日)と広い解釈を示しており、相続絡みでの養子縁組に対する関心は、今後より高まっていくのではないでしょうか。
今回はそんな養子縁組と相続との関係について説明していきたいと思います。
養子縁組の種類
一般的に「養子縁組」と言われているのは、普通養子縁組のことを指していることがほとんどです。普通養子縁組は、実親との親族関係も維持したまま養親とも親族関係が生じる状態になるため、実親・養親、双方の相続権を有することになります。特別養子縁組の場合とは、実親との親子関係を絶つことになる点で異なります。
民法上の養子の法定相続分は実子と全く同じであり、相続人の数に制限はないため、養子が何人いようとも全員法定相続人となります。
代襲相続
養子縁組をした場合に、代襲相続は認められるのでしょうか。
代襲相続とは、相続開始時に法定相続人が既に死亡していた場合、代わりに代襲相続人が同様の割合で相続することをいいます。
また代襲者とは、被相続人の子又は兄弟姉妹たる相続人の直系卑属である者をいいます。
養子縁組をした場合で言うと、養親より先に養子が死亡していた場合、養子の子が養親の代襲相続人となれるか、という問題ですね。
これは、養子縁組と養子の子の出生のタイミングによって異なります。 結論をいうと、養子縁組後に生まれた養子の子は、養親の代襲相続が可能です。裏を返せば、養子縁組前に生まれた子については代襲相続の対象となりません。
養子は、養子縁組をした日にはじめて養親と血縁関係になります。もっとも、養子の親族と養親が親族関係になることはないのです。
養子縁組のメリット
そんな養子縁組のメリットについて4点挙げると以下の通りです。
法定相続人の創出
養子縁組をすることにより、本来法定相続人でない者に対しての相続が可能になります。
例えば、孫は法定相続人ではないですが、養子縁組をすることにより世代を飛ばして相続させることが出来ます。もっとも、この場合には相続税が2割加算となることに注意が必要です。
相続分、遺留分の引き下げ
先に述べたように養子は法定相続人となるため、人数が増えるほど一人当たりの相続分、遺留分は少なくなります。
相続税の基礎控除額の増加
法定相続人の数によって、基礎控除額も増加し、節税対策にもなります。詳しくは次の段落に記載します。
生命保険金、死亡退職金の非課税枠の増加
上記非課税枠は、「500万円×法定相続人の数」で計算されます。そのため法定相続人の数が増えるほど非課税枠も増加します。
相続税との関係では?
相続税の基本控除額は 「3000万円+600万円×法定相続人の数」 となります。
そのため、法定相続人の数を増やす、つまり先ほど民法上養子は全員養親の法定相続人の地位を取得すると述べた通り、養子の人数を増やせば増やすほど、基本控除額が大きくなるといえます。
もっとも、相続税法上カウントされる養子の人数には制限があります。
被相続人に実子がいる場合→養子は1人まで
被相続人に実子がいない場合→養子は2人まで
なお、これは普通養子の場合であり、子の福祉・利益の観点から認められる特別養子の場合には、人数制限は設けられていません。
養子縁組をする前に…
以上のようにメリットも多い養子縁組ですが、一方で縁組の際には慎重な検討も必要です。
事前の承諾を。
本来財産を譲り受けることのない者が法定相続人となる以上、他の法定相続人との間で争いが生じる可能性もあります。現に私の親族では、知らない間に法定相続人でない者との養子縁組がなされていたことが被相続人の死後に発覚し、親族間での紛争となってしまいました。このような争いを防ぐためにも、事前に利害関係人の承諾を得てから養子縁組を行うようにしましょう。
義務も負う。
養子縁組により実子と同様の権利を得る半面、養子は実親と養親の双方に対して扶養義務を負います。つまり、財産を受け取る権利を得る代わりに、親が働けなくなった場合や介護が必要となった場合に、面倒を見る義務も発生するのです。
解消も難しい。
縁組の手続自体は、養子となる者が20歳以上であれば婚姻届と同様に簡単に行うことが出来ます。
もっとも、養子縁組を解消する場合には原則として双方の合意がないとできません。たとえ養親と養子の関係が悪くなったとしても、重大な虐待や侮辱がない限り一方的な解消はできません。
そのため、例えば娘の夫と養子縁組をする「婿養子」の場合などは注意が必要です。この場合、仮に娘と婿養子が離婚したとしても、婿養子との親子関係は維持されてしまいます。養親と婿養子、双方の合意がないと養子縁組の解消はできません。
終わりに…
利害関係人との関係性、養親となる者及び養子となる者の関係性、本当に節税対策となるのかなど…
慎重に考慮したうえで上手に養子縁組の制度を活用できるといいですね。
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