相続人・遺留分 2017.11.11

推定相続人の基礎知識と廃除の手続き

相続開始前には、推定相続人が誰であるかを考えて相続対策を行う必要があります。民法では「推定相続人の廃除」という手続きが規定されており、廃除により推定相続人の相続権を奪うことができるようになっています。ここでは、推定相続人に関する基礎知識と廃除の手続きについて説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

推定相続人とはどんな人?

相続があった場合に相続人になる人

推定相続人とは、民法によると、「相続が開始した場合に相続人となるべき者」とされています(892条)。現状のまま相続が開始したと仮定して、相続人になる人が推定相続人になります。まだ亡くなっていない間は相続人とは言えませんから、推定相続人という呼び方をします。たとえば、被相続人に妻と子がいる場合には、妻と子が推定相続人になります。

推定相続人は変動する

相続には順位がありますから、相続開始前に先順位の人が死亡すれば、後順位の人が新たに推定相続人になることがあります。また、元々の推定相続人が死亡すると、その子が代襲により新たに推定相続人になることもあります。つまり、相続開始前の段階では、推定相続人は変動するということです。

推定相続人と法定相続人の違い

推定相続人は相続開始前に推定される相続人ですが、法定相続人は相続開始後に確定した相続人になります。推定相続人がそのまま法定相続人になるとは限りません。

上述のとおり、推定相続人は変動しますから、ある時点で推定相続人だった人が相続開始時点では法定相続人とならないケースもあります。

また、欠格や廃除により相続権がなくなった推定相続人も、法定相続人にはなれません。欠格とは民法に定められている相続人の欠格事由(891条)に該当し、相続権がなくなってしまうことです。廃除とは、相続開始前に、被相続人自らが手続きして相続権を奪うことです。

推定相続人は遺言作成に関与できないことがある

民法では、推定相続人の廃除(892条)の項のほか、遺言の証人及び立会人の欠格事由(974条)の項でも推定相続人に言及しています。遺言を作成するときには証人や立会人が必要な場合がありますが、推定相続人は遺言の証人や立会人になることができません。

推定相続人の廃除の方法

廃除ができる場合

推定相続人の中に相続人となってほしくない人がいる場合、家庭裁判所で廃除の手続きをすれば、その推定相続人の相続権をはく奪することができます。ただし、廃除はどんな場合でも認められるわけではありません。家庭裁判所に廃除の請求ができるのは次のような場合になります。

(1) 被相続人に対し虐待をした場合
(2) 被相続人に対し重大な侮辱を加えた場合
(3) その他の著しい非行があった場合

廃除できる推定相続人

廃除により相続権をはく奪することができる推定相続人は、「遺留分を有する推定相続人」になります。推定相続人には、配偶者、子、直系尊属、兄弟姉妹がいますが、このうち兄弟姉妹には遺留分がありませんから、廃除はできないことになります。

遺留分を持たない兄弟姉妹については、廃除の手続きをしなくても、遺言により相続させないよう指定することができます。遺留分のある人については、廃除をしなければ相続権を完全にはく奪できませんから、遺留分のある人だけが廃除の対象となっているのです。

廃除の2つの方法

推定相続人を廃除する方法には、生前廃除と遺言廃除の2つがあります。

生前廃除

生前廃除をする場合には、相続開始前に、被相続人自らが家庭裁判所に対し、推定相続人の廃除を請求する必要があります。手続きとしては、被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に推定相続人廃除審判の申立書を提出することになります。

遺言廃除

遺言により廃除の意思表示を行うこともできます。遺言廃除の場合には、遺言が効力を生じた後、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の請求をする必要があります。そのため、遺言廃除を行うなら、遺言で遺言執行者についても定めておくべきでしょう。

 

推定相続人の廃除は簡単ではない

廃除が認められる例は少ない

推定相続人の廃除の請求をしても、家庭裁判所に認められるケースは非常に少ないのが現状です。遺言廃除の場合でも、廃除を求められた相続人本人が異議申し立てすれば、まず認められません。廃除には相続権をはく奪するという強力な効果がありますから、裁判所でも慎重に運用されているのです。

廃除を考えるなら専門家に相談

推定相続人の廃除は簡単には認められないものです。廃除の申立てを自分で行うのも簡単ではありませんし、廃除ではなく遺言書の作成などで対処できるケースもありますから、弁護士などの専門家に相談して対策を考えるのがおすすめです。

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