相続人・遺留分 2017.12.08
遺産相続において遺留分が重要なわけとは?
人が死亡して遺産相続が発生したら、法定相続人で話し合って遺産を分けなければなりません。この際、遺産分割の基準となるのが民法に規定されている法定相続分です。ちなみに、法定相続分はあくまで遺産相続の目安に過ぎないため、法定相続人全員が合意して遺産について違う分け方をしても、何ら問題はありません。
またこのことは、遺言書によって遺産分割をする場合も同様に、法定相続分よりも優先されます。但し、遺言書を残す場合は、注意しなければならないことが一つあります。それは「遺留分」です。遺留分を無視して遺言書を作成してしまうと、あとからトラブルが発生してしまう恐れがあります。
そこで今回は、遺産相続における遺留分と、遺言書を書く際のコツについてまとめてみました。
遺留分は遺産相続で保護されている相続分の一部
そもそも遺産相続というのは、残された相続人である家族が遺産を相続することで生活が保障されるという趣旨があります。
もちろん、遺言書によって、一部の相続人にすべての財産を相続させることは可能です。但し、遺産相続の遺留分という持分については民法で保護されているため、これを侵害する遺言書が執行されると、あとから遺留分減殺請求によって返還を求められる恐れがあります。
遺留分は兄弟姉妹以外の相続人に認められており、その割合は以下のとおりです。
相続人が配偶者のみの場合:1/2
相続人が子供のみの場合:1/2
相続人が配偶者と子供の場合:各1/4
相続人が配偶者と直系尊属(両親など)の場合:配偶者1/3 直系尊属1/6
相続人が直系尊属だけの場合:1/3
このように、故人との関係性が深いほど遺産相続の遺留分の割合は大きくなります。割合を聞いただけだと、遺留分の金額がわかりにくいので、実際に遺産を想定してシミュレーションしてみましょう。
遺産1,200万円の場合の遺留分について
残されている遺産総額が1,200万円と過程した場合の遺留分については、以下のとおりです。なお、子供や直系尊属は各1名とします。
相続人が配偶者のみの場合:600万円
相続人が子供のみの場合:600万円
相続人が配偶者と子供の場合:配偶者300万円 子供300万円(複数人いる場合は人数分で割る)
相続人が配偶者と直系尊属(両親など)の場合:配偶者400万円 直系尊属200万円
相続人が直系尊属だけの場合:400万円
よって、遺産1,200万円の相続については、例え遺言書に「すべての財産を愛人に遺贈する」との内容が記載されていたとしても、最低限上記の遺産相続の遺留分については、民法によって保護されるわけです。
遺留分の権利は行使しなければ保護されない
なお、遺産相続における遺留分は絶対的に保護されてはいますが、当然に遺言書の内容が無効になるわけではありません。遺留分については、遺留分を持っている相続人(遺留分権利者)が自ら「遺産相続の遺留分を返せ」といって権利を行使しなければ、遺留分を保護することはできません。
遺留分の返還を求める権利行使を遺留分減殺請求といい、遺留分を侵害された場合は、一定期間内に遺留分減殺請求をしなければ遺留分が保護されませんので注意しましょう。
遺留分に気をつけて遺言書を書くコツとは
遺産相続の遺留分が法的に保護されているため、これを侵害する遺言書を書いてしまうと、かなりの確率で揉め事が発生してしまいます。とはいえ、相続される側が自由に書けるのが遺言書のメリットでもあるため、できる限り自分の想い描く通りの遺言書を書きたいものです。
そこで、遺留分を侵害しても遺産相続のトラブルを回避できるコツについてご紹介したいと思います。
付言事項を書く
遺言書は基本的に遺産分割の内容や財産目録など、遺産分割に必要な事務的な内容だけを記載します。ただ、それだけだと非常に無機質な遺言書になってしまい、本人の気持ちを読み取ることができません。
相続人が遺産相続の遺留分を侵害されても納得してもらうためには、なぜそのような遺言内容になったのかの理由を教える必要があります。
そこで活用したいのが「付言」です。付言とは直接法的な効果はありませんが、遺言書に本人の気持ちなどを記載することです。
付言の具体例
『遺産の分け方については記載のとおりです。長男よりも次男の方が多い理由としては、次男が献身的に私の介護をしてくれたことに対する感謝の気持ちです。また、長男は不動産に詳しいため、賃貸アパートについて相続してもらうことにしました。お互いどうか私の気持ちを酌んで納得してください。』
このように、本人の想いを付言として記載することで、相続人に遺言の意図を明確に伝えることができます。付言自体に法的な拘束力はありませんが、遺言書によるトラブルを防止するためにとても効果的です。
遺産相続の遺留分は相続人の生活を守るための権利であると同時に、遺産分割の火種にもなりえます。相続トラブルを回避するためにも、遺言書を書く際には、遺留分に注意しながら、付言を活用すると良いでしょう。
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