相続人・遺留分 2017.10.04

遺留分ってどのように計算するの?

ここでは、「遺留分」について紹介していきたいと思います。
遺留分とは、一定範囲の相続人(配偶者・直系卑属・直系尊属)に与えられた、遺産の中から一定額の財産を取得する権利のことです。
被相続人(死亡した人)は、遺言等によって、自己の財産を相続人以外の人にあげたり、自分が気に入っている相続人だけに法で定められた相続分以上の財産をあげたりすることができます。しかし、このような行為により、ほかの相続人がもらえる財産がなくなってしまうのでは問題です。そこで、法は遺留分制度を用意することにより、遺言等による財産処分を制限して、上記の範囲の相続人に「遺留分」という相続財産の確実な“取り分”を保障しています。
このように、遺留分制度は、被相続人がした遺言等によって、もらえるはずだった遺産がなくなってしまったというときに役立つ制度です。

記事ライター:今井弁護士事務所

遺留分額の計算(1)遺留分の算定の基礎となる財産

では、法が用意した”取り分”とはいくらなのでしょうか。

遺留分額を求めるには、まず、「遺留分の算定の基礎となる財産」を、以下の計算式で算出する必要があります。 遺留分の算定の基礎となる財産=相続開始時の財産+贈与―債務 ここにいう贈与とは、原則として相続開始前の1年間にした贈与(つまり、死亡時から1年前までの贈与)のことを指します。

もっとも、

(a)贈与の当事者双方が遺留分という”取り分”を侵害することを知りながらされた贈与については、1年より前のものであっても、ここにいう贈与に含まれ、上記計算式に算入されます。

また、

(b)特別受益となる贈与(→別記事参照)についても、時期を問わず計算式に算入されます。

※ (a)(b)は細かいので、さしあたり気にしなくてもかまいません。

 

では、以下の事例における「遺留分の算定の基礎となる財産」はいくらでしょうか?

【事例】 Aさん(80歳)が死亡しました。

死亡時、Aさんには、1000万円の不動産、500万円の銀行預金、100万円の債務がありました。

Aさんは、死亡する半年前に、友人Bに300万円、友人Cに500万円を贈与していました。

この事例においては、

相続開始時の財産:1000万円の不動産+500万円の銀行預金

贈与:Bへの300万円+Cへの500万円

債務:100万円 ですから、

「遺留分の算定の基礎となる財産」は、(1000万円+500万円)+(300万円+500万円)-100万円=2200万円となります。

 

遺留分の計算(2)遺留分額

続いて、「遺留分の算定の基礎となる財産」に、

「総体的遺留分率」と

「法定相続分率」

という2つの数値を掛け算することにより、1人1人に保障された“取り分”の額(=遺留分額)を計算することになります。

ややこしいと感じるかもしれませんが、言葉が難しいだけで、計算はさほど難しくありません。

まず、「総体的遺留分率」は、以下の通りです。

直系尊属のみが相続人である場合→1/3

それ以外の場合        →1/2

※「直系尊属」とは、死亡した人の父・母など、死亡した人からみて「上」の人のことです。

次に、「法定相続分率」は、以下の通りです。

被相続人(死亡した人)の配偶者→以下の(ア)の場合1/2、(イ)の場合2/3、(ウ)の場合3/4

(ア)被相続人に子がいる場合のその子→1/2

(イ)被相続人に子がいないが、直系尊属がいる場合の、その直系尊属→1/3

(ウ)被相続人に子も直系尊属もいないが、兄弟姉妹がいる場合の、その兄弟姉妹→1/4

※「配偶者」又は「子・直系尊属・兄弟姉妹」のいずれか一方がいない場合には、いる方の遺留分は「総体的遺留分額」丸ごとになります。

例えば、配偶者はいるが、子も直系尊属も兄弟姉妹もいない場合、配偶者の遺留分率は、相続財産の1/2になります。

逆に、配偶者はいないが、子が1人いる場合、子の遺留分率は、相続財産の1/2になります。

※配偶者・子・直系尊属・兄弟姉妹の中で人が複数いる場合には、頭割りになります。

例えば、配偶者が1人、子が3人いる場合には、子1人あたりの遺留分率は、

1/2×1/2×1/3=1/12になります。

この2つをそれぞれ掛け算することで、1人1人の遺留分額を確定します。具体例をみましょう。

【事例1】 「遺留分の算定の基礎となる財産」が1000万円であり、配偶者が1人、子が1人いる場合。

この場合、「総体的遺留分率」は1/2です。

また、「法定相続分率」は、配偶者は1/2、子も1/2となります。

したがって、配偶者の遺留分額は1000万円×1/2×1/2=250万円、子の遺留分額も同様に250万円となります。

【事例2】 「遺留分の算定の基礎となる財産」が600万円であり、配偶者が1人、直系尊属が2人、兄弟姉妹が3人いるが、子はいない場合。

この場合、「総体的遺留分率」は1/2です。

また、「法定相続分率」は、配偶者が2/3、直系尊属が1/3です(直系尊属がいるため、兄弟姉妹の取り分は0であることに注意)。

また、2人の直系尊属の間では頭割りですから、直系尊属1人あたりは、1/3×1/2=1/6となります。

したがって、配偶者の遺留分額は600万円×1/2×2/3=200万円、直系尊属1人あたりの遺留分額は600万円×1/2×1/3×1/2=50万円となります。

 

遺留分の計算(3)遺留分侵害額

これが、最後の計算です。

上記の遺留分額から、相続人が現実に得た額である「純取り分額」を引いた余りが、遺留分侵害額となります。 遺留分を侵害された相続人は、遺留分を侵害している人(贈与などで被相続人の財産を過大に得ている人)に対して、この「遺留分侵害額」を返せということができます(遺留分減殺請求権)。

「純取り分額」とは、具体的な相続分に特別受益額を加えた後に、相続債務負担額を引いた残りの額をいいます。

特別受益は細かいので、さしあたり、「純取り分額」=具体的な相続分-相続債務負担額としてもかまいません。

では、以下の事例で、ここまでの総おさらいをしてみましょう。

【事例】 Aさんが死亡しました。

死亡時、Aさんには、1200万円の銀行預金、120万円の債務がありました。

Aさんには、配偶者のBがいますが、子はいません。Aさんの父Cはすでに他界していますが、母Dはまだ存命です。

また、Aさんには、妹のEがいます。 Aさんは、死亡する半年前に、友人Fに1500万円を贈与していました。 B、D,Eさんは、Fに対し、遺留分減殺請求権を行使できるでしょうか?

行使できる場合、その額はいくらでしょうか?

まず、「遺留分の算定の基礎となる財産」は、1200万円+1500万円-120万円=2580万円となります。

次に、総体的遺留分率は1/2です。

また、法定相続分率は、配偶者であるBは2/3、直系尊属であるDは1/3となります(直系尊属がいるため、兄弟姉妹であるEはそもそも相続できないことに注意)。

したがって、遺留分額は、 B:2580万円×1/2×2/3=860万円 D:2580万円×1/2×1/3=430万円 となります。 なお、Eは相続人でないため、遺留分額も当然0となります。

続いて、遺留分侵害額を求めます。

まず、Bの純取り分額を計算します。Bの法定相続分は2/3なので、具体的な相続分は1200万円×2/3=800万円、相続債務負担額は120万円×2/3=80万円となります。

したがって、Bの純取り分額は、800万円-80万円=720万円となります。

次に、Dの純取り分額を計算します。同様に、Dの具体的な相続分は1200万円×1/3=400万円、相続債務負担額は120万円×1/3=40万円ですから、Dの純取り分額は、400万円-40万円=360万円となります。

これらを遺留分額から引いて、遺留分侵害額を求めると、 B:860万円-720万円=140万円 D:430万円-360万円=70万円 となります。

以上より、BはFに対して140万円分の遺留分減殺請求をすることができ、DはFに対して70万円分の遺留分減殺請求をすることができます。 一方、Eは遺留分減殺請求をすることができないことになります。

 

まとめ

いかがだったでしょうか。

遺留分の計算は①から③の3ステップで行われることを覚えておいてください。

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