相続人・遺留分 2018.04.01

遺留分を取り戻す遺留分減殺請求には2つの期限がある?

相続人のうち一部の人は、自分の遺留分を他の人が取得してしまった場合に、遺留分減殺請求を行って取り戻しをすることができます。ところで、この遺留分減殺請求には2つの期限があるのをご存じでしょうか?ここでは、遺留分減殺請求の2つの期限について説明します。

記事ライター:ゆらこ行政書士

遺留分減殺請求には期限が設けられている

・一定の相続人には最低限相続できる遺産の割合がある

亡くなった後、所有している財産を誰にどのように引き継がせるかは、本人が生前に遺言を書いて指定することができます。

しかし、遺言で財産を自由に処分できるとすると、本来相続人になるはずの人が財産を一切もらえず、生活に支障をきたしてしまうことがあります。

こうしたことから、相続人のうち、兄弟姉妹(代襲相続人を含む)を除く人には、「遺留分」という最低限の遺産の取り分が認められています。遺留分をもつ相続人のことを「遺留分権利者」といいます。

遺言に従って遺産相続が行われると、遺留分権利者の遺留分について、他の人が取得してしまうことがあります。

このような場合、遺留分権利者は遺留分を侵害している人に対して、遺留分を返還するよう要求することができます。この返還要求のことを「遺留分減殺請求」といいます。

・遺留分減殺請求は期限までに行わなければならない

遺留分が侵害されている場合、必ず減殺請求をしなければならないわけではありません。遺留分減殺請求を行って取り戻しをするかどうかは、遺留分権利者の自由です。遺留分権利者は、減殺請求を行わず、遺留分を放棄することもできます。

ところで、遺言により遺留分を侵害する財産を取得した側は、遺留分減殺請求をされた場合、財産を返還しなければなりません。

遺留分権利者がいつまでも減殺請求しなければ、取り戻す気があるのかないのかもわかりませんし、何十年も経ってから減殺請求されても困ってしまいます。

こうしたことから、遺留分減殺請求には期限が設けられています。遺留分減殺請求の期限が過ぎると、それ以降、遺留分権利者は取り戻しをすることができません。

つまり、期限までに遺留分減殺請求がされなかった場合には、そのときの現状のまま、権利関係が確定することになります。

 

遺留分減殺請求の期限 (1)消滅時効

・1年の期限は消滅時効

民法1042条前段では、「減殺の請求権は、遺留分権利者が、相続の開始及び減殺すべき贈与又は遺贈があったことを知った時から1年間行使しないときは、時効によって消滅する」と定められています。

ここでいう1年という期限は消滅時効になります。消滅時効とは、一定期間権利を行使しなかった場合に権利を消滅させる制度です。

・1年の期限の起算点

遺留分減殺請求の1年の期限(消滅時効)の起算点は、「相続の開始」および「遺留分を侵害するような遺贈・贈与があったこと」の両方を知ったときになります。

相続開始は知っていたけれど、遺留分を侵害されている事実を知らなかった場合には、遺留分を侵害されている事実を知ったときから1年となります。

・時効の中断は問題にならない

消滅時効の場合、時効が中断することがあります。時効が中断した場合、進行していた時効がゼロにリセットされ、そこからまた時効を計算します。そのため、時効の中断があった場合には、時効までの期間が延び、期限がもっと先になります。

遺留分減殺請求というのは、一度請求すれば確定的な効果が生じるものですから、時効の中断は問題になりません。1年の期限内に一度でも遺留分減殺請求をすれば、それ以降は期限を気にする必要はないということです。

 

遺留分減殺請求の期限 (2)除斥期間

・10年の期限は除斥期間

上述のとおり、民法1042条前段では、遺留分減殺請求権の期限について、消滅時効を定めています。遺留分減殺請求の消滅時効は、相続開始及び遺留分減殺を知ったときから1年です。

さらに、民法1042条後段では「相続開始の時から10年を経過したときも、同様とする」と定めています。ここでいう10年という期限は、除斥期間と考えられています。

・除斥期間とは

除斥期間とは、一定期間権利を行使しなかった場合、経過によって権利が消滅してしまうという場合の期間です。除斥期間は消滅時効とは違い中断することはありません。その期間が満了すれば、当然に権利がなくなってしまうことになります。

・遺留分減殺請求の最終的な期限

遺留分を侵害されていることを知らなくても、相続開始から10年を経過すると、それ以降遺留分減殺請求を行うことはできません。遺留分減殺請求の期限は、最長の場合でも相続開始から10年ということになります。

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