相続人・遺留分 2018.04.19
相続財産のうちの遺留分とは
被相続人の死亡によって、遺族が一家の稼ぎ手を失うことも少なくありません。遺産相続には遺族の生活保障という趣旨も含まれているため、被相続人の死亡によって生活上の影響を受けやすい続柄の相続人ほど、多い割合の「遺留分」というものが定められています。
しかし、被相続人が生前贈与を行っていた場合や遺言を遺している場合に、遺族が遺留分を受け取れなくなってしまうケースがあります。相続財産における遺留分とその割合、遺留分が侵害された場合の対処法について解説します。
最低限確保されている相続財産が「遺留分」
遺産相続は、被相続人が遺した財産を家族や子どもなどの受け継ぐべき人に移行させ、被相続人亡き後の遺族生活を守る意味も持っています。
被相続人の財産は被相続人のものとは言え、すべてを自分の思うままに処分し遺族には一切渡さないということがまかり通ってしまうなら、遺族の生活は困窮してしまうかもしれません。
そのようなことを防ぐために民法では、相続人が最低限受け取れる相続財産を定めています。これが「遺留分」です。
遺留分は被相続人の意志によっても覆すことのできないものであり、法によって確保された相続人の権利です。
遺留分は、被相続人の配偶者と子ども、子どもの代襲者、直系尊属に限り認められており、被相続人の兄弟姉妹には遺留分はありません。
遺留分の財産の割合は?
遺留分とは、どれくらい受け取れるものでしょうか。
遺留分の割合は、被相続人の財産全体の1/2です。ただし相続人が直系尊属のみの場合は財産全体の1/3となります。
どちらの場合も、この割合を法定相続分で分割したものが各相続人の遺留分となります。相続人の組み合わせによる遺留分の割合は、次のようになります。
・配偶者のみ・・・(財産全体の)1/2
・直系尊属のみ・・・1/3
・子どものみ・・・1/2
・配偶者と子ども・・・配偶者1/4、子ども1/4
・配偶者と直系尊属・・・配偶者1/3、直系尊属1/6
直系尊属や子どもなど、複数の相続人がいる場合には、それぞれの遺留分を人数で割ったものが各人の遺留分となります。
遺留分算定のもとになる相続財産とは
遺留分の対象となる財産は、次の式で求めます。
「相続開始時の財産 + 生前に贈与した財産 - 債務 = 遺留分の対象となる財産」
生前に贈与した分の財産も遺留分の対象となることは、あまり知られていない内容で、相続開始前1年以内に行われた生前贈与は、すべて無条件で遺留分対象財産となります。
また1年より前の贈与でも、贈与者と受贈者双方が遺留分侵害を承知の上で行った贈与があれば、それも遺留分の対象財産となります。
さらに、相続人のうちの誰かが特別受益を受けていた場合は、贈与を受けた時期や遺留分侵害意志の有無に関わらず、特別受益分が遺留分の対象財産に含まれることとなります。
ちなみに平成21年の3月1日施行の民法特例により、経営者から後継者に生前贈与された自社株については、相続人全員の合意があれば、遺留分算定対象の財産から外すことができるようになりました。
遺留分算定対象財産として計算する場合でも、価額を相続人全員の合意時に固定することができます。この特例の適用を希望する場合は、相続人全員の合意についての経済産業大臣の確認と、家庭裁判所の許可が必要になります。
実際の相続財産が遺留分に満たない場合は?
遺留分に満たない相続財産しかもらえない場合は、遺留分を侵害している相手に対して自分の遺留分の返還を請求することができます。
これが遺留分減殺請求です。
遺留分の請求は、原因となった事柄のうち新しいものから順番に減殺することがルールです。遺贈と生前贈与の両方が遺留分侵害の原因ならば、新しい原因である遺贈分から減殺請求をすることになります。
遺留分減殺請求の方法はシンプルで、「遺留分にあたる財産を返して欲しい」という意思表示をするだけです。相手がこれに応じない場合に限り、内容証明郵便での請求や家庭裁判所の調停制度に進みます。
生前贈与や遺贈を行った被相続人自身、生前贈与や遺贈を受けた人も、単純に遺留分について知らなかったというケースがあります。そのため、遺留分侵害が起きたとしても、まずは穏やかに話し合い、遺留分について理解してもらうことを目指しましょう。
事前の直接交渉無しに突然、内容証明郵便を送ってしまうなどすると、相手の感情を刺激することにもなります。内容証明郵便や調停は話し合いがつかなかった場合の切り札として取っておき、むやみに利用しないようにしましょう。
まとめ
被相続人の配偶者や子ども、親や祖父母などの直系尊属には、最低限相続できる財産・遺留分があります。遺留分を侵害された場合には、事実を知った時から1年以内に遺留分減殺請求を行いましょう。
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