相続人・遺留分 2018.06.18
配偶者死亡の場合、誰が相続人になるのか
遺産相続でよく相続人になるのは、被相続人の配偶者と子どもたちです。相続人としての配偶者の立場は「配偶者相続人」と言われ、どんなケースでも必ず相続人になることが最大の特徴です。
しかし、被相続人の配偶者死亡により、配偶者相続人が不在になってしまうケースもあります。では、配偶者死亡の場合は、誰が相続人になるのでしょうか?配偶者死亡の場合の相続人について、4つのパターンに分けて考えていきましょう。
配偶者が死亡している場合の法定相続人
亡くなった人に妻または夫という配偶者がいれば、その配偶者は必ず相続人になることはご存じの方が多いでしょう。ところで、亡くなった人に配偶者がいたけれど先に死亡している場合には、誰が優先的に相続人になるのでしょうか?
配偶者以外で相続人になる人とは?
民法上相続人になる人を「法定相続人」と言います。法定相続人は、「配偶者相続人」と「血族相続人」に分かれます。
配偶者相続人とは、亡くなった時点で配偶者だった人です。離婚した配偶者は配偶者相続人にはなりません。つまり、配偶者相続人がいる場合には、1人だけということになります。
血族相続人は、亡くなった人の子(または孫等)、父母(または祖父母等)、兄弟姉妹(または甥・姪)のいずれかです。血族相続人は1人のこともあれば、複数いることもあります。
血族相続人の優先順位とは?
上に書いたとおり、血族相続人は、亡くなった人の子(または孫等)、父母(または祖父母等)、兄弟姉妹(または甥・姪)です。ただし、これらの人全員が同時に相続人になることはありません。血族相続人に関しては、次の順番で相続人になる人が定められています。
第1順位 子(子が死亡している場合には孫などの直系卑属で最も近い人)
第2順位 父母(父母とも死亡している場合には祖父母などの直系尊属で最も近い人)
第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合にはその子である甥または姪)
第1順位の人が存在していれば、第1順位の人だけが相続人となります。第2順位の人が相続人になれるのは、第1順位の人がいない場合です。第3順位の人は第1順位の人も第2順位の人もいない場合にのみ相続人となります。
配偶者相続人と血族相続人の関係
配偶者相続人と血族相続人は、どちらが優先するというものではありません。配偶者と血族相続人の両方とも生存していれば、どちらも相続人となり相続権を持ちます。
配偶者が死亡している場合には、血族相続人がいれば相続人になります。この場合にも、第1順位から第3順位の順番に従って、優先的に相続人になる人が決まります。
なお、配偶者が死亡しており、かつ血族相続人で生存している人も1人もいない場合には、法定相続人はいないことになります。たとえば、亡くなった人のいとこがいたとしても、血族相続人ではないので、相続権はありません。相続人不存在の場合には、家庭裁判所に相続財産管理人を選任してもらった上で、遺産を処分するという手続きが必要になります。
配偶者死亡、子ども有りの場合
配偶者死亡の場合でも、子どもがいるなら子どもが相続人になることができます。配偶者を別にすれば、被相続人の子どもは最上位の相続人です。他に被相続人の親や兄弟姉妹がいるとしても、配偶者死亡の場合は子どもだけが相続人となります。
遺産相続で言うところの子どもには、実の子ども以外に養子や認知済みの非嫡出子も含まれます。ただし、配偶者の連れ子は含まれません。
配偶者死亡によって、子どもだけが遺産を相続する場合の相続分は、子どもの頭数で割った割合です。配偶者死亡によって相続人となる子どもが2人なら、それぞれ遺産の半分ずつを相続分として取得することになります。
配偶者死亡、子ども有りでも、子どもがすでに死亡してしまっている場合もあるかもしれません。子どもの子ども(孫)がいるなら、代襲相続という制度によって、孫が相続人になることができます。
子どもの代襲相続には、孫がいなければひ孫、ひ孫もいなければさらにその下の代と、どこまでも下の代へ相続権を移行させられるという特徴があります。配偶者死亡、子どもも孫もいないという場合は、次の順位の相続人へ相続権が移行します。
相続税に関しては養子の数に制限がある
上に書いたとおり、子どもについては、実子のみならず養子も法定相続人になります。ただし、相続税の課税においては、養子は全員法定相続人に含める扱いにはなりませんので注意しましょう。
相続税の基礎控除額は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」となっています。つまり、「法定相続人の数」が多いほど、基礎控除額が大きくなり、相続税が安くなるしくみです。ここで、法定相続人に含められる養子の数には、次のような制限があります。
(1) 実子がいる場合…1人まで
(2) 実子がいない場合…2人まで
養子の数の制限は、生命保険・死亡退職金の非課税枠を計算するときにも適用されます。生命保険金や死亡退職金は相続税の課税対象になりますが、それぞれ「500万円×法定相続人の数」という非課税枠が設けられています。この非課税枠を計算する際の「法定相続人の数」にも、養子全員を含めることはできません。
もし養子を全員法定相続人に含められるとすると、養子を増やすことによって基礎控除額や非課税枠を増やせるので、不当に相続税を免れるということができてしまいます。そこで、相続税の計算においては養子の数に上限があるのです。
なお、養子の数の制限は、あくまで相続税を計算するときに適用されるものです。養子縁組すること自体には制限はないので、何人養子にしてもかまいません。
配偶者死亡、子ども無し、両親(祖父母)有りの場合
配偶者死亡、かつ子どもも孫もいない場合に限り、第二位の相続人である被相続人の両親が相続人になることができます。
あるいは、配偶者死亡、かつ両親がどちらもいない場合に限り、祖父母が相続人になります。両親と祖父母が一緒に相続人となることはありません。
遺産相続で言うところの両親や祖父母は、被相続人と血縁関係にある人に限られます。義理の両親や祖父母は含まれていません。ただし、養子縁組を結んでいる養親は含まれます。
配偶者死亡、かつ子どもも孫もいないことによって、両親か祖父母が遺産を相続する場合の相続分は、相続人の頭数で割った割合になります。
両親が揃って相続するなら、それぞれ遺産の半分ずつを、片親のみが相続するなら、全部の遺産を相続分として取得します。
配偶者死亡で、子どもも孫も両親も祖父母もいない場合は、さらに次の順位の相続人へ相続権が移行します。
配偶者死亡、子ども無し、両親祖父母無し、兄弟姉妹有りの場合
配偶者死亡の上、子どもも孫も両親も祖父母もいない場合、被相続人の兄弟姉妹が相続人になることができます。兄弟姉妹は第三位の相続人であり、これより下位の相続人はいません。
配偶者死亡、子どもも孫も無し、さらに両親や祖父母もない場合の兄弟姉妹の相続分は、やはり相続人の頭数で割った割合になります。
ただし、兄弟姉妹の場合は、両親ともに同じ「全血兄弟」か、片親だけが同じ「半血兄弟」かによって相続分が変わります。半血兄弟の相続分は、全血兄弟の半分とされています。
民法900条4号但し書き
「父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の二分の一とする」
兄弟姉妹がいないものの、その子ども(甥や姪)がいる場合は子どものケースと同様、代襲相続によって甥や姪が相続人となることができます。ただし子どもの場合と異なり、甥や姪の下の代へは相続権が移行しません。
配偶者死亡、子ども無し、両親祖父母無し、兄弟姉妹甥姪無しの場合は?
まれに配偶者死亡だけでなく、子どもも両親も兄弟姉妹も甥姪もいない、というケースもあります。前述のように、兄弟姉妹は最下位の相続人であり、代襲相続を別にすればその次に相続人になれる人はいません。
配偶者死亡、かつ他に相続人となり得る人がひとりもいなくなった状態は「相続人不存在」と言います。相続人不存在の場合は家庭裁判所へ「相続財産管理人選任申立」を行い、遺産の管理をする人を選出しなければなりません。
相続人不存在は申立とともに確定するのではなく、一年以上の時間をかけて相続人の捜索が行われてから確定します。家庭裁判所が手を尽くしても相続人が見つからない場合は、相続財産管理人による遺産の処分が実行されます。
まとめ
配偶者死亡の場合の遺産相続は、相続人となり得る人がひとりでも残っていれば可能です。第三位の相続人もいない場合は、財産を管理する人を選出するための裁判手続きが必要になります。
配偶者死亡や相続人死亡の場合以外に、配偶者死亡かつ相続人となり得る人が全員相続放棄した場合も、同様の対処が必要になります。
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