相続人・遺留分 2019.09.04

「仲良く半分に分けて!」という遺言書はかえってトラブルのもとになる説

遺産分割のトラブルを防止するために「遺言書を書きましょう!」というアドバイスをしているサイトがたくさんありますが、さまざまな事例を見てきた私からすると、遺言書が相続の「特効薬」として効いているケースはむしろ少なく、かえって「劇薬」になっているケースの方が多いような気がします。

今回ご紹介する事例でも、2人の子供が相続人となったケースで、「仲良く半分に分けて!」という、非常に単純明確な遺言書を残したにも関わらず、かえってトラブルの火種となってしまったのです。

なぜ、遺言書がトラブルの原因になってしまうのか、そして、どうすれば遺言書が特効薬になるのか、事例を交えて解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺言書の理想と現実

遺言書に関連する書籍には、法定相続分や遺留分などについて細かく書かれているケースが一般的です。

例えば、相続人が子2人であれば1/2ずつ、子と直系尊属であれば子2/3、直系尊属1/3といった法定相続分が規定されているため、基本的にはその割合を目安とした遺言書を書くようにすべきといったアドバイスが多いように思います。

確かにその通りなんですが、実際の相続ではそこまで単純な話では終わりません。

子供のために参考書を見ながら遺言書を書いたけれど

今回の事例は、被相続人予定者である母親が、子供2人にケンカして欲しくないという思いやりから、遺言書の参考書を読み始めたことから話が始まります。

母親は、子供の法定相続分は1/2ずつになることを知り、それを反映させる形で「仲良く半分に分けて!」と直筆の遺言書を書き残したのです。

参考書をしっかりと読んでいただけあり、全文直筆で書いた上、署名捺印や日付など、自筆証書遺言としての要件は完全に満たされており、有効な遺言書としてタンスに保管されていました。

母親はアパートの大家だった

親の遺産を長男と次男が仲良く半分に分けて相続することは、そこまで難しくありません。例えば、相続財産が1億円の預金であれば、5,000万円ずつ分ければよいだけです。

ところが、この事例ではほとんど預金資産がなく、代わりに母親名義のアパートが複数棟ありました。そうです、母親はかなりの物件を所有する大家だったのです!

このように、主だった資産が「不動産」ばかりの場合、遺産分割の難易度は一気に高くなります。

仲良く半分がわかりづらい

仲良く半分というと聞こえはいいですが、実際に不動産を半分に分けるとなると、非常に骨の折れる作業となります。

そもそも、複数あるアパートの時価は、不動産会社によっても査定額にばらつきが出るくらいなので、ちょうど均等になるわけ方を考えることは至難の技です。

この事例では、似たようなアパートが複数あったため、均等になるわけ方にも様々なパターンが考えられました。

【それぞれの時価の例】

アパートA:2,000万円

アパートB:2,000万円

アパートC:3,000万円

アパートD:3,000万円

このような場合、半分ずつに分けるとすると

長男

アパートA:2,000万円

アパートC:3,000万円

次男

アパートB:2,000万円

アパートD:3,000万円

というわけ方もあれば、

長男

アパートB:2,000万円

アパートC:3,000万円

次男

アパートA:2,000万円

アパートD:3,000万円

というわけ方もあるのです。

この事例でも、半分ずつに分ける方法が無数に存在したため、結局、わけ方をめぐって長期にわたって話し合いをすることになってしまいました。

指定相続分だとさらに揉める

どうにか話し合いがまとまって遺産分割ができたのでよかったのですが、万が一、遺言書に書かれていた割合が、「法定相続分」ではなく「指定相続分」だったら、争いはもっと大きくなっていたでしょう。

指定相続分とは、遺言書で指定した法定相続分とは違う割合のことです。

先ほどの事例は、まだ法定相続分だったから、割合しか書かれていなくても、相続人同士で大きく揉めませんでしたが、指定相続分の場合は、相続人のどちらかにとって不利な割合になっていることも考えられるため、話し合いが長期化する可能性が高いです。

 

遺言書を書くなら細かく書く!

遺言書を書く際に、割合だけ指定して書くことはとても簡単ですが、それだけでは相続人にとってはある意味「ありがた迷惑」な側面もあります。

相続のトラブル防止として遺言書を書くのであれば、割合だけでなく、割合の内訳として、誰にどの財産を相続させたいのかについてまで、明確に記しておくことがとても重要です。

例えば、不動産であれば、どの不動産を誰に相続させるのか、代償金はいくら支払うのか、といった部分まで明確にしておくことで、遺言書は相続人を困らせる「劇薬」から、相続人を喜ばせる「特効薬」に変わります。

 

まとめ

遺言書は書くだけであれば簡単ですが、特効薬となる遺言書を書くとなると、割合だけでなく内訳まで明確に書くことがポイントになります。

できれば、なぜそのような分け方を希望するのかについても、遺言書の中に記載しておくと、相続人の同意や理解を得やすくなり、さらにトラブルを防止できるでしょう。

 

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