相続人・遺留分 2019.12.09
連れ子には相続権がない!?財産を残してあげるためにできることとは
相続が発生すると相続法の規定に戸惑う方が多くいますが、中でも「連れ子」がいる方については必要な対策を事前に講じておかないと相続発生後にとても後悔することになります。
というのも、連れ子については相続において一定の要件を満たしていないと、財産を一切受け取れなくなってしまうからです。
そこで今回は、相続における連れ子の法的な位置づけと、連れ子に財産を残すために必要な手続きについて詳しく解説します。
連れ子は相続人ではないことを理解する
まず重要なことは、連れ子は法律上相続人ではないということです。
前夫、前妻との間に授かっている子供を再婚相手から見て「連れ子」といいます。
男女は結婚することで婚姻関係となり、配偶者として相続人になることができますが、連れ子についてはあくまで血のつながっている親とのみ親子関係が成立しているので、親の再婚相手とは法律上の親子関係は成立していないのです。
連れ子の実親が亡くなられた事例
連れ子との相続を真剣に考えるきっかけとなりやすいのが実親の死亡です。
再婚相手と連れ子の間に相続関係は生じませんが、実親が生きている間は万が一再婚相手が亡くなって相続が発生したとしても、実親が配偶者として財産を相続するため生活が立ち行かなくなる心配はありません。
ところが実親が先に死亡してしまうと、連れ子は再婚相手の財産を相続できないため、何らかの対策をとらないと再婚相手が死亡した時に連れ子が困ることになってしまうのです。
実際に上記のような状況になっている再婚相手の方からご相談をいただいたことがあります。その方は連れ子ととても仲が良く、自分の死後に連れ子が苦労することのないよう財産を相続させてあげたいといっていました。
再婚相手の方のご両親(直系尊属)はすでに亡くなられており、疎遠の兄弟が1人いる状態だったので、何も対策をとらないと遺産はすべて疎遠の兄弟のものになってしまいます。
そこで次のような対策を提案しました。
連れ子と養子縁組をする
連れ子と養子縁組をすることで、たとえ血のつながりがなくても法律上の親子関係が成立するため相続が発生した時も相続人となることが可能です。
再婚相手の方は、自分と養子縁組することで実の両親の財産が相続できなくなることを懸念されていましたが、一般的に利用されている普通養子縁組であれば、たとえ養子縁組したとしても実親との親子関係は継続しますので心配ありません。
つまり、養子縁組をした連れ子は実親と養親それぞれの相続人になれるのです。
連れ子と養子縁組する場合、苗字はどうなる?
さて、ここまでは相続に関連する知識について解説してきましたが、ここからは少し現実的な問題についてお話したいと思います。
法律上は養子縁組をすれば解決しますが、現実問題として養子縁組をするとなると「苗字」の問題を解決しなければなりません。
連れ子が実親の苗字を名乗っている場合、養子縁組をすると養親の苗字を名乗らなければならなくなるため、いろいろと支障が出てくることがあります。
養子縁組をしても苗字が変わらない裏技
あまり知られていませんが、養子縁組したとしても連れ子がすでに婚姻していて嫁ぎ先の苗字を名乗っている場合については、養子縁組したとしても苗字を変える必要がありません。
民法にも次のように規定されています。
民法第810条
「養子は、養親の氏を称する。ただし、婚姻によって氏を改めた者については、婚姻の際に定めた氏を称すべき間は、この限りでない」
つまり、連れ子が結婚して嫁いでいて嫁ぎ先の苗字を名乗っている場合や、連れ子が結婚して婿養子になっているような場合については、養子縁組しても苗字はそのままなのでこの制度を利用すれば苗字の問題は解決できるでしょう。
遺言書で遺贈する場合の問題点
養子縁組に抵抗がある人の中には「遺言書を書きたい」、という人もいますが遺言書と養子縁組では相続において扱いが大きく異なります。
遺言書で連れ子に遺贈する場合、連れ子は相続上他人と同じ立場なので相続税の2割増しの対象者となり、養子縁組をして相続する場合と比べて2割高い相続税を納税しなければなりません。
また、今回ご紹介した事例のように再婚相手に法定相続人がいる場合はたとえ遺言書があったとしてももめる可能性が出てきます。
相続関連のサイトでは遺言書によって相続のトラブルが防止できるとよく書かれていますが、現実的には遺言書によってもめているケースの方が多いです。
相続が発生した際に実子と同じ取り扱いをするためには、遺言書ではなく養子縁組をすることを強くおすすめします。
まとめ
連れ子がいる方、連れ子がいる方と再婚した方、両親が再婚している方については、相続において事前に対策が必要であることがお分かりいただけたでしょうか。
今回の相談事例のように、相続が発生する前に専門家に相談すれば残される家族に負担をかけずに済みますので、ぜひ早めに対策をとっておくことをおすすめします。
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