土地・不動産 2018.04.18

土地を遺産分割する際の注意点

被相続人が所有していたすべての財産は、遺産相続の際に相続人へ分配されます。遺産の分割方法を巡っては、相続人同士での争いが起きやすいため、相続人全員が納得する形で遺産分割を行うことがとても重要です。
しかし遺産の中には、建物や土地など、公平な仕方で分割することが困難なものもあります。ここでは、遺産の中に土地があった場合の遺産分割の注意点や方法に関して解説します。

記事ライター:棚田行政書士

遺産分割までは、相続人の共有財産となる

遺産分割対象の遺産すべては、遺産分割協議で分割方法が決まるまで、相続人の共有財産となります。土地も例外ではなく、遺産分割が成立するまでは相続人の法定相続分に従って共有された状態となります。

共有状態は、遺産分割協議が成立し、各相続人の具体的な相続財産が確定するまで継続します。土地も、遺産分割協議後までは売却したり、自分名義に勝手に名義変更したりすることはできません。

 

土地の価額を評価する

遺産分割で土地を分割するためには、その土地の価額を把握する必要があります。

土地の価額を評価する基準には、国土交通省が定める「公示価格」や、市区町村によって異なる「固定資産評価額」、不動産鑑定士によって算出される「鑑定評価額」など、様々な種類があります。

遺産相続で相続財産の価額を評価するための基準とされている、国税庁の「財産評価基本通達」では、相続した土地の価額を評価するための基準として「路線価」を規定しています。路線価による価額の計算は、路線価方式と呼ばれます。

路線価とは、道路ごとに設定されている価格のことです。1㎡あたりいくらと定められているので、その価格を土地の面積にかけることで土地の価額が分かります。その後、土地の形状や位置、道路との接し方などによって、加算や減算が行われます。

路線価は、国税庁がホームページで公表している「路線価図・評価倍率表」を確認すれば分かります。

市街地ではない土地、例えば郊外や農村部の土地には、路線価が付いていない場合があります。この場合は、その土地の固定資産税評価額に、国税局が定める評価倍率をかけて求められる価額で評価します。評価倍率を利用した計算方法は、倍率方式と呼ばれます。

 

土地の遺産分割の方法を選択する

土地の価額が分かったら、遺産分割協議で具体的な分割方法を決めます。遺産分割で土地を分けるには、次の4つの分割方法のうちのいずれかを選択することになります。

現物分割

個別分割とも呼ばれる遺産分割方法です。妻が土地を、長男が預貯金を、長女が有価証券をというように、相続人それぞれが取得する相続財産の種類を分けて分割するものです。

複雑な計算や評価が不要で分かりやすく、最も簡単な遺産分割の方法です。また、遺産の現物を失わずに済むというメリットもあります。

ただし、相続分の通りに分割することが難しく、不公平感が生まれやすい遺産分割の方法でもあります。各相続人に分配するための、土地以外の遺産も必要になります。

共有分割

相続財産を、複数の相続人で共有する遺産分割方法です。土地や建物などの不動産のように、相続分に応じた遺産分割がしづらい遺産の分割に用いられます。

どんな遺産でも各相続人に公平に分割できることや、遺産の現物を維持できるのが共有分割の良いところです。一方、自分の持ち分の範囲内でしか遺産を利用できないため、財産としての利用価値が著しく低いことが難点です。

共有分割で遺産を取得した相続人自身が亡くなり、その人の遺産相続が始まってしまうと、相続人は複数名義の遺産を分割しなくてはならず、非常にややこしいことになります。

換価分割

遺産分割対象の遺産を売却して金銭に換えることで、各相続人へ公平に遺産分割する方法です。土地を始めとする不動産でも、金銭に形を変えれば遺産分割は容易になり、相続人の不満もない公平な分割ができます。

その代わり、遺産を手放さなければならないこと、手放すと決めても売りたい時に売れない場合があることが難点です。

代償分割

土地などの分割しにくい遺産を一部の相続人が相続する代わりに、遺産を相続できない相続人に対して代償として金銭を支払う遺産分割方法です。

事業用の土地など、事業を相続する相続人が一緒に相続した方が良い遺産の場合は、代償分割が最善となる場合があります。遺産の現物を手放さずに済むことも利点です。

ただし、代償を支払う立場の相続人に金銭的余裕がなければ、実現が難しい遺産分割方法でもあります。代償を払ってもらう側も、代償が支払われるかどうかについてリスクがあることも難点です。

 

まとめ

現金や預貯金と違い、土地などの不動産は、きっちり綺麗に分けることがとても難しい遺産です。相続人の事情によって最適な遺産分割方法は異なります。相続人それぞれの不満をできるだけ抑えられる仕方で遺産分割をしましょう。

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