土地・不動産 2018.05.21

等価交換でマンションを建てる際の地権者との取引とは?

借地権が設定されている土地に等価交換によってマンションを建てようとするときの地権者との取引には2つの方法があります。

ひとつは、借地権者(以下地権者)とのみ等価交換取引を行って借地権付きマンションを建設するというもので、もうひとつは、土地所有者(地主)および地権者の二者を相手として等価交換取引を行い、土地所有権付のマンションを建設するというものです。

これら2つの等価交換取引の特徴を見てみましょう。

記事ライター:棚田行政書士

地権者とだけ行う等価交換マンションの取引

地権者とだけ等価交換取引を行う場合は、建設されるマンションは必ず借地権付きマンションとなります。

地権者はまず、等価交換するマンション業者へ借地権を譲渡することになります。借地権を譲渡する場合には地主の許可が必要になるので、地権者は地主の許可を取った後に譲渡します。

許可を得た場合、地権者は地主に対して「借地権譲渡承諾料」を支払うのが一般的です。承諾料の相場は、借地権の譲渡代金の約10%程度とされています。

借地権のほとんどは、建物の所有を目的とした土地賃貸借なので、地権者が譲渡や転貸を希望する場合は、地主の許可を得る必要があります。仮に、地権者が地主の許可を得ずに譲渡や転貸を行うと、地権者は借地権の解除をされる可能性があります。

地主の許可が得られない場合には、地権者は借地非訟事件という裁判手続きを申し立てることができます。裁判所は通常、地権者が一時金を納付することを条件として、地主の許可に代わる代諾許可を与えます。

もし、借地権が地上権になっている場合は、地権者が譲渡や転貸をする際に地主の許可は得なくても良いとされています。しかし実際には、借地権が地上権になっているケースはほとんどなく、地主の許可なくして地権者が譲渡や転貸をすることはほぼ無いでしょう。

等価交換前に、すでに土地に木造などの非堅固造建物が建っており、この建物を鉄筋コンクリート造などの堅固造マンションに建て替えたい場合にも、地権者は地主の許可を得なければなりません。

建てる建物の種類を変える場合にはその対価として、地権者または等価交換を行うマンション業者から地主へ「借地条件変更承諾料」を支払うことになります。

借地条件変更承諾料は、当該土地の譲渡および条件変更によって地権者が取得する利益の一部を地主にも還元するべきであるという考えで設けられた対価です。借地条件変更承諾料の相場は、土地の更地価額の約10%前後となっています。

なお、元々建っていた建物が堅固造の場合でも、等価交換マンションを建てるためにはやはり地主の許可が必要です。この時に地権者またはマンション業者が負担する費用は、「増改築承諾料」です。

増改築承諾料は、増改築前後の規模の増加の程度によって異なります。通常は、等価交換マンションに建て替えた後の建物の規模(床面積)の増加による借地権の価値向上分を基準として定められます。

増改築承諾料の授受と同時に、建て替え後の等価交換マンションの地代に対応した地代への改定も行われます。

等価交換マンションを建てる際に地権者は、土地の譲渡に先立って様々な許可を得る必要があります。許可を得られた場合には、承諾料の支払いも必要です。

最初に紹介した借地権譲渡承諾料は地権者の負担となるのが普通ですが、借地条件変更承諾料や増改築承諾料については、等価交換マンションを建てるマンション業者が負担してくれることもあるようです。

 

借地権付き等価交換マンションの完成後譲渡の許可

借地権付きの等価交換マンションが完成した後の譲渡についても、地権者が地主の許可を得なければならない場面はあります。

等価交換マンションを分譲マンションとして販売する場合には、建物と一緒に敷地の借地権の準共有持分も同時に譲渡することになるので、事前に地主の許可を得ておく必要があります。この場合は普通、承諾料などは発生しないとされています。

 

地主も参加して等価交換マンションを建てる場合

地権者だけでなく地主も等価交換取引に加わって、所有権付きの等価交換マンションが建つケースもあります。

ここまでご紹介してきたような許可のやり取りは不要になるので、地権者のみが取引する場合よりも、スピーディな等価交換が可能になるでしょう。

地権者と地主が等価交換マンションを建てる場合の持分設定は、更地価額と借地権割合を基にして借地権の価額と底地価額を算出し、これと等価になるように建物と敷地の持分が算定されます。

 

まとめ

地権者のみで等価交換マンションを建てようとする場合は、地主の許可を取る手間がかかったり、承諾料の支払いなどが必要になったりします。

スムーズな等価交換取引のためには、地権者だけでなく地主も参加することが望ましいでしょう。

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