土地・不動産 2018.06.23
相続で土地と現金がある場合の分割方法
遺産相続では、現金だけでなく、自宅、土地、事業用資産などの分けにくい財産も分割しなくてはなりません。遺産のうちに現金が多くあればそれほど問題はないのですが、遺産の種類や現金の額が限られている場合の分割は難しくなります。
遺産の分け方には大きく分けて4種類があり、遺産の種類や相続人の状況に応じて最善の方法を選択する必要があります。ここでは、土地と現金の相続をする際に検討できる分割方法についてご紹介します。
土地と現金をそれぞれの相続人へ分ける「現物分割」
土地と現金という個々の財産を、それぞれの相続人へ分けるという分割方法です。現実的には難しいですが土地と現金がほぼ同じ価格であり、なおかつ相続人が2人の場合であれば、一方には土地、一方には現金という形で分割できるでしょう。
相続人が2人以上でも、土地と現金以外の財産があるなら現物分割を検討できます。現物分割は非常に分かりやすく、土地などの財産を現物のまま手元に残せることが最大のメリットです。
ただし、分割される財産が現金だけではない場合、各相続人の相続分の通りにきっちりと分割することは難しく、各相続人がある程度譲歩しない限り、実現は難しいでしょう。
土地を売却して現金を分配する「換価分割」
土地と現金が主な相続財産であるものの、現金がわずかな場合は、土地を売却してその売却益を現金の形で相続人に分配するという方法もあります。土地の価値を現金に換える、換価分割という方法です。
土地など、そのままでは分割することができない財産でも、換価分割なら現金にして公平に分配することができます。
ただし、すぐに売却先が見つかるかどうかは分からないこと、売却できたとしても得た現金には所得税と住民税が課税されるために納税用の現金が必要になること、土地を完全に手放す必要があることなどがデメリットになります。
一人の相続人が土地についての債務を負う「代償分割」
兄弟のうち誰か一人が土地を相続する代わりに、土地を相続できなかった他の兄弟たちに対して、相続分に応じた現金を支払うという債務を負うのが代償分割です。
兄弟のうちの誰かが被相続人の事業を継承しており、土地が事業継続のために必要な事業用地や農地などであった場合も、土地を失うことなく遺産分割ができます。
ただし、債務を負う相続人に代償金となる現金を支払う能力がなければ成り立たないこと、債務を負った相続人が支払いを履行するかどうかは不確かであることがデメリットでしょう。
万が一、代償金が支払われないとしても、遺産分割協議を無効にすることはできません。遺産分割協議をやり直すには、相続人全員の合意が必要になります。代償金に関する債務不履行に対しては、訴訟を起こすしか方法はありません。
土地を相続しない相続人にとっては、このようなリスクを負うことになるのが代償分割です。
各相続人が持分を決めて共有する「共有分割」
共有分割は、土地について各相続人の共有名義とする方法です。相続分に応じた持分相当の土地の所有権を得られるので、現金の場合と同様公平な分割が可能な方法です。そのため、土地を手放さずにいることもできます。
しかし、共有分割は遺産分割における最終手段とも言われています。ひとつの土地を共有するということは、様々なトラブルの元だからです。
共有状態にある土地は、共有者の誰も、勝手に建物を建てたり貸し出したりすることはできません。一部の所有権だけを売却して現金に換えることも難しいです。
何をするにも、他の共有者の同意が必要になります。自分の持分になった土地だけを小分けして、自分が住むわけにもいきません。誤解されがちな点ですが、共有となった土地の持分は土地の面積に対するものではなく、あくまでも所有権に対するものだからです。
さらに、共有関係を解消したくなっても簡単にはいきません。解消するには、共有物分割訴訟を起こす必要があります。
共有状態のまま共有者のうちの誰かが亡くなり、遺産相続が開始すると、その相続人は共有状態の土地も遺産分割対象の財産として扱わなければならず、大変な苦労をします。
このような理由から、共有分割は最終手段と言えるのです。
まとめ
相続で土地と現金を分ける際には、土地の公平な分け方がポイントとなります。土地よりも現金の方がはるかに多ければ良いのですが、被相続人が地主などの場合は、ほとんどの財産を土地の形で持っている場合もあります。
土地の分割方法は、できる限り現物・換価・代償分割のいずれかを選ぶようにしましょう。手軽さだけに魅力を感じて、安易に共有分割をするべきではありません。
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