土地・不動産 2018.08.17
不動産を活用して相続税の納税対策をする方法
相続に対する備えには、大きく分けて3種類があります。「相続税の節税対策」「遺産分割対策」、そして「相続税の納税対策」です。
納税対策は、節税対策と比べるとあまり注目を浴びない対策ではありますが、円滑な相続を行うためには、おろそかにすべきでない対策です。ここでは、相続税の納税対策のために不動産を活用してできることを2つご紹介します。
不動産を処分し、現金を用意する
相続税の納税は、原則として金銭で、一括での納付が要求されています。財産が不動産ばかりという人の場合、現金での財産はあまり持っていない可能性があります。
相続が開始してから不動産を売却して現金にすることも可能ですが、不動産は売りたいタイミングで売れるとは限りません。なかなか売れないと、相続人は納税資金のことで長期間不安を抱えるかもしれません。
不要な不動産や、値下がりが予想される不動産は売却してしまい、現金の形で手元に置いておくことは、不動産を賢く活用した納税資金対策です。
しかし、不動産を活用して現金を作る前に、まずは自分の相続においてかかる可能性のある相続税額を調べることが必要です。
相続税は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される基礎控除額を超えた分にのみ課されます。
生前に不動産などの評価額を調べ、相続税の課税対象価格を知っておきましょう。評価額の調査方法が不明の場合は、相続問題に詳しい税理士へ調査を依頼してみると良いでしょう。
思いのほか財産の評価額が低く、相続税がかからないことが分かるかもしれません。逆に、予想以上に相続税が高額になり、現状では納税も厳しいということが判明することもあります。
そんな時には、不動産を活用した納税ができないか、検討しておくことができます。
納税資金が不安なら、生前に不動産を活用した物納準備を
不動産は持っていても、贈与や処分、売却ができる状態ではない上、相続税の納税資金に不安がある場合には、不動産を活用した「物納」の準備をしておくことも必要です。
物納とは、現金ではなく財産の現物を活用することで納税する方法です。不動産を活用して物納するための要件は、次の4点です。
1. 延納制度を活用しても現金での納付が難しいこと
2. 活用する財産が一定の種類および順位の財産であること
3. 活用する財産が、管理処分不適格財産に該当しないこと
4. 納期限までに、活用したい財産について物納申請書を提出すること
第一要件として、相続税の延納(分割して納付すること)をもってしても納税が困難なことが挙げられています。
また、物納のために活用できる財産には規定があります。納税義務者の相続税課税価格の計算基礎となった相続財産のうち、日本国内にある次のような財産のみが活用できます。
1. 国債、地方債、不動産、船舶
2. 社債、株式、証券投資信託または貸付信託の受益証券
3. 動産
1から3と番号を付けて記載しましたが、物納候補として活用できる財産の順位も上記の通りになります。不動産は、最優先の物納候補となっています。
先順位の財産の中に、活用できそうなものがない場合や特別の事情がある場合に限り、後順位の財産を活用して物納候補とすることができます。
注意したい点として、物納候補として活用できる財産であっても、税務署が管理や処分に難があると見なした「管理処分不適格財産」は、物納財産として活用することができません。
活用できない不動産とは、以下のようなものです。
複数人の共有状態の不動産(共有者全員が持分のすべてを物納する場合は除く)
耐用年数を経過した建物(通常の使用ができるものは除く)
抵当権が設定されている不動産
境界が不明な不動産
権利の帰属について争っている不動産
不動産を活用した物納を希望する人は、相続税の納期限までに税務署へ「物納申請書」その他の必要書類を提出します。その後、税務署は調査を行い、申請期限から3か月以内に物納の許可または却下を判断します。
不動産を活用した物納を考える場合には、生前から準備をしておくことをお勧めします。なぜなら不動産の物納には、隣接地との境界線の確定や、測量を伴う地積更正登記、借地権者への底地売却など、費用が関係する様々な手続きが必要だからです。
相続開始後にこれらの手続きを行うと、要した費用も相続税の課税対象と見なされてしまいますし、手続きはすべて相続人が手配することになります。したがって、不動産を活用した物納準備はぜひとも生前に行っておくべきです。
まとめ
不動産は、売却して現金に換えたり、物納財産という形で活用したりすることができます。財産が不動産ばかりで現金が無さ過ぎることは、納税対策だけでなく遺産分割という面でも問題になります。何らかの対処が必要なことが分かったなら、迅速に準備しましょう。
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