土地・不動産 2018.08.24

土地の相続を巡って争いになりやすい状況とは?

相続で起こる争いのほぼすべては、相続人が自分の相続分について不公平さを感じることから始まります。相続で争いを起こさないためには、すべての相続人に対して、いかに公平な仕方で財産を分割するかがポイントになります。

土地は、相続財産に占める割合が建物よりも多くなりがちなため、様々な争いの火種となり得ます。今回は、土地の相続に関係して争いになりやすい状況をご紹介します。

記事ライター:棚田行政書士

相続対象の土地が一つしかないための争い

土地に関して、しばしば争いになる状況として、相続財産と呼べるものは土地ひとつなのに、相続人は複数人いるという状況があります。

そのままでは各相続人に分割することはできませんから、土地を売却して現金に換える「換価分割」か、土地を相続するひとりの相続人が、代償金の支払いという債務を負う「代償分割」、もしくは相続人全員で土地の共同名義人となる「共有分割」のいずれかを選ばなければなりません。

いずれの分割方法を取るにせよ、相続人が全員合意しなければ実行はできません。各相続人の希望が異なる場合、争いにせず、穏便に話をまとめるには時間と努力が必要です。

 

土地を独占しようとする相続人がいるための争い

被相続人の跡を継ぐのは自分だから、家も土地も全部自分のものだ、などと主張する相続人がいる場合は争いが激化しやすく、長期的な争いともなるでしょう。

ひとりの相続人が財産を独占しており、他に相続できそうな財産がないとすれば、独占している相続人に対し「遺留分減殺請求」をすることになります。遺留分とは、法定相続人が最低限受け取れることになっている相続分です。

土地を独占する相続人が遺留分の請求に素直に応じてくれればまだ良い方ですが、そもそも財産を独占しようとして争いを引き起こしている相続人が、おとなしく遺留分を返してくれることはあまり期待できません。

遺留分減殺請求に応じてもらえない場合は、争いの場を家庭裁判所に移すこととなります。まずは「調停」で争い、それでも応じてもらえない場合には「訴訟」を起こして争うことになるでしょう。

 

代償分割で土地を相続した相続人が支払う「代償金」についての争い

代償分割とは、ひとりの相続人が土地を相続する代わりに、土地を相続しない相続人へ「代償金」を支払うという分割方法です。土地の代償金を巡っても、しばしば争いが起きています。

土地や建物などの不動産には、価値を評価するための価格基準が複数あります。

土地だけについて考えても、実勢価格(売買市場における実際の取引価格)の他に公的価格という価格基準があります。公的価格はさらに4種類の価格基準に分岐しており、指標とする情報や価格水準もそれぞれ違います。

代償分割で土地を相続した相続人は、当然ながら他の相続人へ支払う代償金の額を少しでも抑えたいと思うはずです。

他方、土地を相続できなかった他の相続人としては、土地の相続について譲歩してやったのだから、できるだけたくさんの代償金を請求しようと考えるでしょう。

ここで、土地の評価における複数の価格基準が争いの火種になります。複数の不動産業者に査定させた場合は、価格基準の違いから百万単位の差が生まれることも珍しくありません。

そうなると、代償金を支払う相続人としては、できるだけ安い評価額を提示したくなります。逆に、代償金を請求する相続人はできるだけ高い評価を引き合いに出したがることでしょう。

このような両者の思惑の相違から、土地の評価額を巡って出口の見えない争いになることがあります。

 

土地の代償金が支払われないための争い

前の項目で取り上げた土地の代償金に関係した争いです。代償金の額についてようやく折り合いがついてホッとしても、今度は「代償金が約束通り支払われない!」という事態になることがあります。

代償金については、遺産分割協議書に記載しているはずです。そのため、代償金を支払わないことは、債務不履行に相当します。

しかし、このような争いを理由に、遺産分割協議を無効にすることはできません。無効にしてやり直したいのであれば、代償金を支払わない相続人を含め、全員の合意を得なければなりません。

代償金の未払いを巡る争いが生じ、何とかして代償金を支払わせようとする場合は、訴訟を起こすことになります。ただし、その前に、弁護士に助力を求めてみることは有効です。

たいていの場合、相続人同士は家族のため、お互いに対する甘えや油断も生じやすくなります。弁護士が第三者として自分たちの相続に関与していることが相手に分かれば、襟を正して支払いに応じてくれるかもしれません。

 

まとめ

評価額が高額になりやすい土地を巡る争いは、熾烈かつ長期間に渡る場合があります。当事者だけで争いをおさめることが難しいと感じたなら、できるだけ速やかに弁護士に相談し、争いの仲裁をしてもらうようにしましょう。

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