土地・不動産 2018.09.04
相続した土地を共有することのメリット・デメリット
相続において、遺産分割は多くの時間を要する手続きです。相続人全員の意見をまとめなければならないため、皆が納得する仕方で遺産分割をするにはどうしたら良いのかと頭を悩ませることもあるでしょう。
特に、文字通りの分割ができない土地などの不動産が相続財産に含まれる場合は、遺産分割は長期化する可能性があります。土地を分割する際の一時的な対応策としては、相続財産の「共有」の検討が挙げられます。
そこで今回は、これから土地を相続する可能性がある方に向けて、遺産分割における「共有」について、詳しく解説したいと思います。
相続した土地の共有とは
まず、土地を共有するとはどういうことかを確認しておきしょう。
民法249条では共有について、「複数人でひとつのものを所有すること」と定めています。土地を共有するとは、ひとつの土地を複数の相続人で一緒に所有することを意味します。
土地の共有者それぞれが共有物に対して持つ権利や割合のことは「共有持分」と言います。共有者のうち、誰か一人が共有持分を放棄したり、共有状態のまま死亡したが相続人がいなかったりするという場合には、その人の共有持分は他の共有者に割り振られることとなります。
土地の共有者は、共有持分について、自由に処分する権利を持っています。自分の共有持分を独断で売却するということも可能です。
土地の共有者には、共有状態の解消を求める権利も与えられています。共有者のうちの誰かが「共有物分割請求」の手続きを起こせば、遺産分割はやり直しとなります。共有物分割請求が行われた相続財産は、現物分割または換価分割、代償分割によって分割されます。
相続した土地を共有するメリット
相続において土地を共有にした場合、どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。
1.どんな土地でも公平に分割可能
ひと塊の現物である土地は、公平な分割が非常に難しい相続財産ですが、どこにある土地でも、どんな形の土地でも、共有にすることで相続人全員に公平な分割が可能です。相続した土地の場合、共有することで各自の相続分に応じた共有持分が与えられます。
2.分割の手続きが楽
土地を含めた相続財産の分割方法には、共有分割を含めて4つの方法があります。現物分割、換価分割、代償分割、共有分割の4つです。
共有分割以外の方法を選択する場合には、相続財産の現物を実際に分割して分配することや、相続財産を売却するための段取り、代償金の準備など、手間を要する様々な手続きが必要です。
土地を共有分割する場合は、土地の登記を共有者全員の共同名義とするだけで手続きを完了できます。他の方法よりも圧倒的にスムーズに分割できるのが、共有のメリットでしょう。
相続した土地を共有するデメリット
土地を共有した場合は一定のメリットがありますが、一方で、デメリットにはどのようなことが挙げられるかを見ていきましょう。
1.権利関係の複雑化
ひとまず、土地の共有者となった相続人も、自分自身の相続が発生したらどうなるかを考えなくてはなりません。
土地を共有している自分が死亡すれば、相続人は共有持分についても遺産分割をしなくてはならないことになります。
たたでさえ、複数人で共有されている土地の一部が、次の相続で分割されるという事態になれば、ひとつの土地について権利を持つ人の数がネズミ算式に増えていきます。
こうなると、土地の共有者同士が互いの顔を知らない、連絡先さえ分からないという状態になっても無理はありません。
権利者である共有者の数が多いほど関係は複雑になり、全員の意見をまとめることは困難になります。売却することはおろか、土地に関する簡単な手続きひとつを済ますのにも大変な苦労が伴うことでしょう。
2.処分の自由が著しく制限される
土地は、貸したり、建物を建てたり、売却したりすることで価値を発揮します。共有状態の土地は、こうした活用をする前に共有者全員の同意を得なければなりません。
共有者全員がまったく同じ意見を持っていることは極めてまれなため、何をするにも相当の時間と手間をかけて、話をまとめなければなりません。話がまとまるまでの間、土地は放置されるため、税金がかかるばかりで利益を生むことはありません。
先に述べた通り、自分の共有持分だけを独断で売却することも可能と言えば可能なのですが、共有者の中に「賃貸物件を建てたい」「用途を変更して活用したい」などと主張する人がいる場合は、そう簡単にはいきません。
共有者としての当然の権利とは言え、土地の一部を売却したことにより、その人の希望は実現不可能になるかもしれません。そうなれば、相手との関係は険悪になることが予測できます。
共有者全員の意見が一致しているとしても、リスクはあります。共有者の中に何らかの債務の返済を滞らせている人がいる場合、その共有者の持分は債権者に差し押さえられてしまう可能性もあります。
当然、一部が差し押さえられているような土地を活用することはできません。土地の一部の権利を持っているに過ぎない共有においては、自分の意思に沿う仕方で土地を活用できる可能性が非常に低いということが大きなデメリットになります。
まとめ
相続した土地の共有には、様々なリスクや制約がつきまといます。ごく限られたケースを除き、相続した土地の共有状態はできるだけ早く解消するべきでしょう。
なお、遺産分割協議が成立するまでの期間は、土地を含めたすべての遺産について自動的に相続人全員の共有とされることについても、知識として覚えておきましょう。
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